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【杉並区】ミシュランガイド東京・ビブグルマン獲得!函館愛に満ち溢れた『函館塩ラーメン 五稜郭』

酔街草エディター・ライター(東京都杉並区)

荻窪を”ラーメンの激戦区”と称するのは苦手である。

なぜなら荻窪には古くからの中華そばを基本とする老舗はもちろん、家系、二郎系、大勝軒系、進化系と多種多様なジャンルが渾然一体となっており、ラーメン好きにとっては”ラーメンの激戦区”よりも”ラーメンの桃源郷”と呼ぶほうが相応しいと思えるからだ。

そんな荻窪にあって、このたび北海道・函館の塩ラーメンの味を忠実に継承する店が、「ミシュランガイド東京2025」のビブグルマンに選出された。都内でも数少ない函館ラーメン専門店が荻窪の桃源郷に存在していたこと自体、誠に喜ばしいことではないか。

まずは、おめでとうございます。

(写真は『函館塩ラーメン 五稜郭』公式Xより)
(写真は『函館塩ラーメン 五稜郭』公式Xより)

今回、「ミシュランガイド東京2025」に初めて掲載されたラーメン店は、『RAMEN MATSUI』『塩そば 時空』『函館塩ラーメン 五稜郭』の3店だった。

ラーメン部門が創設されて、今年で10年となるが、最初の数年間は醤油や味噌ラーメンの受賞が目立ったものの、今回は塩味がフィーチャーされている感がある。

『 塩そば 時空』は下高井戸駅と荻窪駅との間の柳窪に店を構える同じ杉並区内で塩ラーメンがメイン、新宿御苑駅近くの『RAMEN MATSUI』の店主は、北海道北見市出身であり、塩系スープにも力を入れているとあって、この3店に共通する不思議な縁を感じるのは酔街草だけではないだろう。

函館市五稜郭町に生まれ育った店主。古くから地元で親しまれてきた塩ラーメンに情熱を注ぐ。塩ダレに使う昆布や干し貝柱、自家製麺の小麦は北海道から仕入れ、故郷の味を届ける。澄んだスープはあっさりした魚介風味。函館特産のがごめ昆布は人気のトッピング。昔ながらの製法を守る一杯は素朴な味わい。

「ミシュランガイド東京2025」より

ちなみに昨年度にビブグルマンを獲得した「There is ramen」は、2025年度も継続となった。

「There is ramen」の記事はこちら

JR荻窪駅の北口に出て青梅街道を渡り、「教会通り商店街」をしばらく進むと左手に緑の看板と暖簾を掲げた『函館塩ラーメン 五稜郭』が見えて来る。

明るく清潔感溢れる店内にはカウンター席が6席ほどの小ぢんまりした佇まい。壁には函館の市街や土方歳三のポスターなどが貼られ、函館愛が満ち溢れている。

店主の山本 大(まさる)さんは、五稜郭町に生まれ育った生粋の函館人。大学入学を機会に上京し、卒業後はバンド活動に没頭。アルバイトをしながら、なかなか芽の出ないミュージシャン生活を余儀なくされた苦労人だったそう。

たまたま、ラーメン店の経営者との出会いから、2013年に一念発起して八幡山でラーメン店を開業することになった山本さん。出身地である函館ラーメンの味を知ってもらいたいという思いから、函館ラーメン専門店として開店したものの、わずか5か月で閉店。

研鑽を重ね、2か月後にまた同じ場所で復活と紆余曲折を繰り返し、2015年からは荻窪へと移転している。

この頃には、既に”東京でも屈指の塩ラーメンの名店”と言われるまでになっており、行列の絶えない店として現在に至っている。

がごめ昆布に隠れているが、ラーメンの具としては珍しい「麩」も旨味を吸って旨い!
がごめ昆布に隠れているが、ラーメンの具としては珍しい「麩」も旨味を吸って旨い!

繁盛の決め手となったのは、故郷の味を忠実に守って食材に情熱を注いだ点であろう。

化学調味料不使用のいわゆる無化調スープとし、昆布の最上級である道南産真昆布や、高級料理店のシェフがわざわざ指定して買い付ける猿払村産帆立など北海道の最高級の食材が惜しげもなく使用されているのだ。

麺に至っては、最初は函館の製麺所から空輸していたそうだが、現在は北海道産小麦を使用して自家製麺を提供している。

豚のゲンコツを叩き上げ、昆布や貝柱を合わせて丁寧に炊き出したスープは、どこまでも澄み切った清廉感があり、滑らかな細麺によく絡んで旨い。

メニューを見ると、ラーメンは1種類のみと潔よく、酔街草の場合は「がごめ昆布」が必須のトッピング・アイテム。

函館近郊の鹿部町・噴火湾産のホタテを使った「ほたてご飯」も欠かせないサイドメニューだ。

ちなみに、以前は函館風のイカの炊き込みご飯が人気だったのだが、今年4月から「いか飯」が「ほたてご飯」に代わってしまった。スルメイカが不漁のため、しばらく休止せざるを得ないとのことで残念ではあるが、「ほたてご飯」もなかなかいけるので良しとしよう。

また、「その他」にも注目して欲しいのだが、ビールは「北海道限定サッポロクラシック」が季節に応じて入荷し、「ガラナ」も常備している点にも店主の北海道への強いこだわりを感じられるはず。

海苔がたっぷりかかった「ほたてご飯」(左)
海苔がたっぷりかかった「ほたてご飯」(左)

「函館が暑かったら、こんなラーメンが生まれたかも知れない」という山本さんのイメージだけで作り上げたという、夏限定の「冷やしラーメン」(時価)。

今年は猛暑続きで、様々な店で冷やし中華や冷やしラーメンを食べたが、この滋味たっぷりの夏野菜と清涼感を誘う麺やスープは別格に思えるほど旨かった。

店の公式Xには、受賞に対して「ありがとうございます。これからも精進してまいります!」とのシンプルなコメントを残していて、店主のどこまでも実直な性格が窺える。

しばらくはさらなる行列必至だと思われるが、寒さに耐えた後の至福の一丼を求め、覚悟を決めて並ぶとしよう。

さてさて、本日も大満足〜ご馳走様!

函館塩ラーメン 五稜郭

住所:東京都杉並区天沼3-28-7

営業日:水・木・金・土・日・祝日

定休日:月・火

アクセス: JR荻窪駅・ 東京メトロ丸ノ内線 荻窪駅 北口から徒歩約6分


営業時間:11:30 〜16:00(売り切れ次第、終了)

公式X 

エディター・ライター(東京都杉並区)

中央線沿線の街並みとお酒をこよなく愛する、元・雑誌編集者です。長年に渡って杉並区の荻窪に在住。居酒屋、グルメに関する話題・スポットをはじめ、季節のイベントなどを中心に、皆さんの役に立つ情報を発信して行きます。

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