【NISA、相続税・贈与税、インボイス、車、所得税…】令和5年度税制改正、暮らしの税金どう変わる?
2022年12月16日に発表された、令和5年度税制改正大綱。
今回はその税制改正大綱が、私たちの暮らしやお金にどう影響するのかについて身近な視点でまとめていきたいと思います。
■そもそも「税制改正大綱」とは?
「税制改正大綱」とは、各省庁から提出された税金についてもっとこうしてほしいという要望を、与党の税制調査会を中心にまとめ、翌年以降の税金にまつわる制度の改正を決定したもの。
毎年12月中旬頃に内閣で決定され、発表されます。
その後、その後通常国会によって審議され、可決されると改正法案が成立し改正法に定められた日から施行されることとなります。
■今回のポイントは?
令和5年度税制改正大綱の身近な視点でのポイントとしては、
- NISA・つみたてNISA制度の変更・拡充
- 贈与税・相続税の見直し
- インボイス制度の負担軽減措置
- 自動車のエコカー減税・グリーン化特例の延長
- 復興特別所得税の期間延長
などがあげられます。
ひとつずつ解説していきます。
■NISA・つみたてNISA制度の変更・拡充
まず大きな変更点としては、今まで、株式投資などがメインとなる一般NISAと投資信託の積み立て購入がメインとなるつみたてNISAは併用できませんでしたが、このふたつが併用できるようになることです。
一般NISA自体は「成長投資枠」に名称も変更となります。
また、一般NISAは2028年まで、つみたてNISAは2042年までと、制度自体に投資期限がありましたが、この期限もなくなり、恒久化します。
そして一般NISA・つみたて制度の大きなメリットである通常投資などで得た利益にかかる税金がかからない、つまり非課税の恩恵を受けられる非課税期間も無期限となります。
気になる年間の投資額ですが、つみたて部分が年間120万円、株式投資などの「成長投資枠」となる部分が年間240万円と、合計年間360万円まで非課税で運用できることに。
ただし、非課税限度額については生涯で1,800万円となり、株式投資など成長投資枠はこのうち1,200万円以内となります。
こちらの制度は、2024年(令和6年)からのスタートです。
■贈与税・相続税の見直し
①教育資金の一括贈与の非課税制度の延長
30歳未満の人が祖父母や親から学校の入学金・授業料、学習塾代などの教育目的で当てるための教育資金として一括で贈与を受ける場合、1,500万円を上限に非課税となる制度が、2023年3月末の期限から2026年(令和8年)3月31日まで3年間延長となります。
この制度は、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります
②結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の延長
20歳以上50歳未満の人が祖父母や親から結婚式の費用・新居費用のような結婚資金、妊娠・不妊治療・出産・子供の医療費・幼稚園などの保育料にかかる費用についてなど子育て資金に充てるための費用として一括で贈与を受ける場合、1,000万円を上限に非課税となる制度が、2023年3月末の期限から2025年(令和7年)3月31日まで2年間延長となります。
この制度は金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります
③相続開始前贈与の相続財産合算が3年から7年に
贈与税は、毎年110万円まではかかりません。
そのため、生前贈与という形で存命のうちに資産を贈与することで、非課税で贈与が出来ました。
ただし、贈与をする側が死亡して相続を開始する3年以内の贈与については、相続財産として相続税を課税するという仕組みとなっていました。
この3年以内というのが、7年間に拡大されます。
すぐに始まるわけではなく、2027年(令和9年)1月以降から段階的に期間を延ばし、2031年(令和13年)1月に7年となります。
また、「相続時精算課税」のルールが見直され、年110万円までの贈与であれば、相続時に申告が不要に。
■インボイス制度の負担軽減措置
来年10月から導入されるインボイス制度は、今まで課税事業者でなかった事業者も、インボイスを発行するための登録で「課税事業者」として消費税を納付することとなるような仕組み。
今回の税制改正で、これまで免税事業者(売上が1,000万以下の事業者)だった事業者がインボイス発行事業者になった場合は、3年間納める税額を2割に軽減するという軽減措置が導入されることになりました。
また、1万円未満の取引についてはインボイスの発行が不要とする措置も実施されます。
そして、インボイスを発行する課税事業者として登録する手続きについても、原則として来年3月末までに申請書を提出するよう求められており、それ以降となる場合は「困難な事情」を記載することとなっていましたが、その記載がなくとも登録ができるようになります。
■自動車のエコカー減税の延長・グリーン化特例の延長
車に関しては主に2つ。
自動車の燃費や排ガス性能に応じて自動車重量税を軽減するエコカー減税ですが、2023年4月末であった期限が今の制度のまま2023年(令和5年)12月末まで据え置きとなります。
そして、基準を段階的に引き上げながら、2026年(令和8年)4月末まで制度が延長となります。
また、電気自動車やハイブリッド車などを対象とし、自動車税と軽自動車税が軽減される仕組みであるグリーン化特例は、2023年(令和5年)12月までの期限が3年間延長となります。
■復興特別所得税の期間延長
東日本大震災の復興財源として所得税に上乗せされている「復興特別所得税」の税率を1%引き下げて、課税期間が延長となります。
そして、所得税には税率1%の新たな付加税が課されることとなります。詳細な開始時期は未定です。
■その他
・富裕層の課税
1億円の所得を超えると税の負担率が下がる「1億円の壁」の問題を解消するために、1年間の所得が30億円を超える富裕層に対する課税が2025年分から強化されます。
・たばこ税
段階的に1本あたり3円相当引き上げられます。詳細な開始時期は未定です。
私たちの生活にとても密接な、「税金」の制度の改正。
今回は「資産所得倍増プラン」や「貯蓄から投資へ」の流れも踏まえ、大きなトピックとしてNISA制度の拡充という資産を増やしていくための制度の変更もありました。
投資をするためのリテラシーをきちんと身につける「金融教育」の重要性もますます高まります。
制度自体が変わる時期はそれぞれ異なりますが、自分たちのお金にダイレクトに関係のある制度の変更については、ぜひあらかじめチェックしておきましょう。