社会が求める女性らしさに疑問 ロッシ・デ・パルマのフェミニスト舞台
「私はコールド・クリーム。私の仕事は大変なのよ。30歳の女性を20歳に見えるように、40歳の女性を30歳に見えるようにしないといけないんだから」。
白黒映画のスクリーンで、フェイスクリームが私たちにそう語りかける。
フェミニストだと思わせるメッセージが詰まったショートフィルムの上映中、ノルウェーの観客の爆笑で会場は溢れかえった。
スペイン出身の女優ロッシ・デ・パルマ(Rossy de Palma)氏が、ノルウェーの首都オスロで記憶に残る「コンサート」を披露した。
パルマ氏は10月31日~11月5日にオスロで開催された音楽祭「オスロ・ワールド」の注目プログラムとしてノルウェーを訪問。
ペドロ・アルモドバル監督の映画作品の常連であり、ファッションモデルとしても活躍する。
「彼女は普通ではない、複雑な女性。個性的な顔立ちで、パフォーマンスアーティストでもあり歌手でもある」と音楽祭のプログラムには記されている。
「コンサートへようこそ。とはいっても、コンサートとは言い難いのですが」と音楽祭のリーダーは冒頭で語った。ロッシ・デ・パルマの舞台は、確かに「コンサート」とは一言では片づけられず、映画でもありアートでもあった。
白黒のショートフィルムが終わると、黒いドレスに身を包んだ歌手ロッシ・デ・パルマ氏がやっと登場。彼女が歌っている最中は、舞台に立つ別のアーティストが筆で描く絵が後ろのスクリーンに映し出され、アートと音楽が合流していた。ギタリストはHernan Romero。
「愛、旅、反発」がテーマだったため、スペイン語での演出の中、「愛」という言葉を突如ノルウェー語で叫ぶ。「シャーリヘート!」(kjaerlighet)と叫んだ瞬間、ノルウェーの観客は喜んで拍手喝采した。
Jessica Mitrani監督によるフィルム『旅する婦人』(Traveling Lady)では、ロッシ・デ・パルマ氏が、「女性なのに」世界を旅した実在したジャーナリスト、ネリー・ブライを演じる。社会が求める「女性らしさ」に疑問を投げかける作品は、見ていてどこか清々しい気分にさえさせた。
女性らしさや美しさのステレオタイプに疑問を投げかける舞台。キッチンに立つ女性。食べることをやめる女性。いつもの道を歩く女性。働く女性。家の中にいる女性。ヘアスタイルを整えることに必死な女性。世界を旅する女性。女性が好きだと気づく女性。舞台にはたくさんの女性が登場する。
今はノルウェーでも、セクハラ被害を告発する「私も」(#metoo #MeToo)騒動が広がっている。「女性として生きる」ことを考えさせる出来事は、現実世界でも舞台でも同時進行中だ。ロッシ・デ・パルマのパフォーマンスは小さな元気をくれ、「また見てみたい」と思わせる舞台だった。
Photo&Text: Asaki Abumi