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豊島竜王、羽生九段ともに長考続きスローペースの中盤戦に 竜王戦七番勝負第5局1日目終了

松本博文将棋ライター
(写真:アフロ)

 12月5日。神奈川県箱根町・ホテル花月園において第33期竜王戦七番勝負第5局▲羽生善治九段(50歳)-△豊島将之竜王(30歳)戦、1日目の対局がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 羽生九段が攻めの銀を出て3筋から先攻したのに対して、豊島竜王は8筋から継ぎ歩攻めで反撃。1日目午前中から緊迫の展開となりました。

 昼食休憩のあとは、一転してスローペース。一手一手の意味が重い中盤戦となりました。

 本局の対局場は箱根。羽生九段は何度もこの地で対局を重ねています。

 豊島竜王は2011年、20歳六段のとき、王将戦七番勝負で初めて箱根対局を経験しています。

 16時53分頃。豊島竜王は1時間33分の長考の末、44手目、△8五飛と五段目に浮きました。飛の横筋を遠く逆サイドに利かせる、ということなのでしょう。しかし漠然としていて、すぐには狙いがわかりづらい。多くの人にとっては、なかなか予想できない一手だったと思われます。

 今度は羽生九段が考える番です。難解な局面ですので、このまま封じ手にするのが得策なのかもしれません。

 タイトル獲得通算99期の羽生九段。若き王者・豊島竜王を前にしてここまで1勝3敗と追い込まれました。羽生ファンにとっては、あと1期がなんとも遠く感じられるかもしれません。

 一方で豊島ファンもかつては、最初のタイトル1期獲得までが遠く感じられたことでしょう。豊島挑戦者の戴冠を阻み続けていた大きな壁といえば、他ならぬ羽生九段です。

 17時48分頃。羽生九段は記録係に図面を書いてくれるように指示を出しました。

 18時。

「それでは定刻となりましたので、次の一手を封じてください」

 立会人の中村修九段がそう告げました。そこから1分と少し。

「封じます」

 羽生九段が45手目を封じ手をする意思を示し、立ち上がりました。45手目の消費時間は1時間8分でした。

 封じ手を記入する際に、あらかじめ設けられている別室に移動するのが現代流です。

 昭和の中頃には、対局室で背を向けたり、縁側に移動したり、あるいはちょっと廊下に出たりして、封じ手をすませていた例もあったようです。

 少し時間をおいて、羽生九段が2通の封筒を持ち、対局室に戻ってきます。豊島竜王がサインをし、羽生九段が封筒を中村九段に預けて、1日目の対局が終わりました。

 明日2日目は朝9時、封じ手を開封して始まります。

 筆者手元のソフト「水匠2」は▲6六銀と守りの銀を中段に上がる手を本命と読んでいます。

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 また明日はNHK杯・渡辺明名人-羽生九段戦も放映されます。将棋ファンにとっては、忙しい一日となりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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