【落合博満の視点vol.48】開幕戦で劇的に散ったBIGBOSSが何より着手すべきこと
BIGBOSSの初陣は、福岡ソフトバンクを煙に巻いたものの、野球は9イニングスを戦い抜く勝負だということを、あらためて感じさせられる黒星だった。
開幕セレモニーで、ルパン三世のテーマにダミーを3名使って登場した指揮官は、始球式でも打席に立つと、女性アナウンサーの投球を捕手の甲斐拓也より前に出て素手で捕ってしまう。そうして、3年ぶりに福岡PayPayドームを埋め尽くした観客の目を奪うパフォーマンスを見せたあとは、真剣勝負でも流れを持っていった。
先発に抜擢した北山亘基は、先頭の三森大貴に中前安打を許すと、一死から柳田悠岐にレフト線に落とされて二、三塁のピンチ。だが、フルカウントから渾身のストレートでジュリスベル・グラシアルを見送り三振に仕留め、栗原陵矢は歩かせて中村 晃を二ゴロに打ち取る。
2回裏は二死から2四球を与えるも、今宮健太を右飛で切り抜け、2回を47球の無失点で二番手の加藤貴之にマウンドを譲る。やはり、北山はオープナーとして起用したのだ。
プロ野球開幕!! BIGBOSSがルーキー開幕投手の次に企てるサプライズはこれだ
一方の打線は3回まで千賀滉大にほぼ完璧に抑えられていたが、4回表の先頭・石井一成が3ボール1ストライクからやや甘く入ったストレートを右中間スタンドへ。このソロ本塁打で先制し、その裏は2年目で初登板の根本悠楓が2四死球も3奪三振で凌ぐ。
福岡ソフトバンクが押しているものの、スコアは1×0で北海道日本ハムのリード。5回から本来の開幕投手と言ってもいい伊藤大海がマウンドに登ると、福岡ソフトバンクの打線は勢いを失っていく。
7回裏には、五番手で堀 瑞輝が登板する。そう、26日の第2戦で予告先発として発表されている堀だ。2安打を許しながら堀も無失点で切り抜けたが、続く8回裏には杉浦稔大が一死満塁とされ、代わった西村天裕が新外国人のフレディ・ガルビスにグランドスラムを浴び、福岡ソフトバンクの底力を見せつけられた。
アマチュアのトーナメントや互いにデータの少ない国際大会では、この日のBIGBOSSのような選手起用や采配が勝利を呼び込むこともある。だが、プロのペナントレースを戦い抜くには確かなチーム力が不可欠だ。BIGBOSSがどんな手を打ち、チームを成熟させていくのか注目したい。
先発ローテーションの確立が急務か
BIGBOSSが監督に就任してからの言動、春季キャンプの進め方などを見ていると、キャラクターや手段はまったく違うが、2004年に中日で監督に就任した時の落合博満との共通点があると感じられる。落合もキャンプ初日に紅白戦を行なったり、3年も登板がなかった川崎憲次郎を開幕投手に起用するなど、予測ができない手を打ったが、すべてが奇策ではなく根拠があり、8年間で着々と黄金時代を築き上げた。
一方、「優勝を目指さない」というBIGBOSSの発言の真意はまだわからないが、どこか閉塞感に包まれていたチームを前進させているのは事実だろう。プロ野球の話題をさらいながら迎えた開幕戦でも独自のペースを貫き、白星まであと一歩に迫った。
では、長いペナントレースでチーム力をつけていくには、どんな戦い方をすればいいのか。
「プロの世界は、実はチームの実力差はほとんどなく、戦い方で差が生まれるもの。勝率5割前後で100試合あたりまでいけば、優勝だって十分に狙える。反対に、大型連勝などそうはできないのだから、3連戦で3連敗しなければいい。1勝2敗だったら、次は2勝1敗になるように戦えばチャンスはある」
そう考えた落合は、2004年のシーズンで同一カード3連敗、いわゆる3タテを食らったのは5月3日~5日のヤクルト戦と6月1日~3日の巨人戦だけ。連敗も必ず3で止めた。その土台となったのが先発投手のローテーションだ。落合監督はファームでも先発ローテーションを組み、不調や故障で一軍のローテーションに穴ができれば、すぐに埋めて計算の立つ戦いを目指した。
落合監督の時代から野球のスタイルには変化や進歩があるとはいえ、やはり安定した戦いを続けるには投手を中心としたディフェンス力が必要だろう。
開幕戦で劇的に散ったBIGBOSSは、26日の第2戦をどう戦うだろうか。