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湖国初の優勝へ、近江快進撃4強! 大阪桐蔭倒した実力を証明

森本栄浩毎日放送アナウンサー
近畿が4強を独占した夏の甲子園。中でも注目は大阪桐蔭を倒した近江だ(筆者撮影)

 近畿勢が4強を独占した夏の甲子園も、いよいよクライマックス。中でも注目は、大阪桐蔭神戸国際大付(兵庫)を倒した近江(滋賀)だ。一戦ごとに力をつけ、湖国勢の悲願である甲子園優勝まで一気に駆け上がるか。

春の近畿大会4強とほぼ同じ全国4強

 今大会の近畿勢の躍進は、ある程度予想していた。8/2の記事のとおりで、順延続きで遠来のチームが不利だったことは認めるが、順調に大会が進んでいても、結果は同じだったと思う。今春の近畿大会の4強は、大阪桐蔭、智弁学園(奈良)、智弁和歌山京都国際で、全国4強とほぼ同じ。ここに近江が割って入った一つだけ予想外だったのは、大阪桐蔭が近江に敗れたことだ。今大会の近畿勢は、ここまで敗れたチームの相手がいずれも近江で、最終的に、他地区に一度も負けることなく大会が終わる

近江の不振で滋賀勢のレベル低く

 今世代の滋賀勢は、例年よりもレベルが落ちるということはこれまでも述べてきた。近江の不振が原因である。秋は滋賀学園に県大会決勝で敗れ、春は立命館守山に3回戦で逆転負けした。一昨年の林優樹(西濃運輸)-有馬諒(関大)に象徴されるような強力バッテリーは同校の伝統でもあったが、秋からの弱点はなかなか改善されない。投手から捕手に転向して間がなかった島瀧悠真(3年)が、低めに鋭い変化球を投げる投手陣の球を捕りきれず、苦戦が続いていて、多賀章仁監督(62)も、センバツでゲスト出演した際、「捕手がなぁ」と嘆いていた。

春の敗退から3年生が変貌

 立命守山との試合後、多賀監督は、「お前らではもう無理。ユニフォームを脱いでくれ」と3年生を叱った。逆転されたあとの攻撃があまりに淡白で、「まだ終わってないのに、こいつら勝つ気あるんかな」と。そこから春山陽生主将ら、3年生が目の色を変えた。「死に物狂いで練習していた。3年生が変わった」と、多賀監督も夏の県大会での変貌ぶりを認める。島瀧は、日大東北(福島)との初戦で本塁打を含む3安打4打点の活躍。後輩のエース・山田陽翔(2年=タイトル写真)から、「大きく構えてくれるから投げやすい」と信頼され、多賀監督からも、「投手のいいところを引き出せた」と絶賛された。

主将はいくら打てなくても外さない

 主将の春山は、県大会から打撃が不振で、打順も中軸から下位に下がっていた。山田が降板したあと外野に入るので、誰かをベンチに下げることになるが、多賀監督は、いくら打てなくても春山を絶対に外さなかった。ナインの士気が下がることを考えての采配で、「ウチは春山のチーム」と信頼を寄せる多賀監督に、神戸国際戦でサヨナラ打を放って応えた。秋からこのチームを見ているが、ここまで急激に伸びた近江は初めて。特に3年生の成長ぶりには目を見張るものがある。

大阪桐蔭に勝った実力を証明

 しかし、今大会は何といっても大阪桐蔭との大一番に凝縮される。序盤の劣勢を徐々に挽回し、8回に決勝点を奪うという勝ち方は、相当な実力がないとできるものではない。天下の大阪桐蔭を相手に、である。多くのメディアが、「金星」と表現したが、秋から近畿の試合を見ていれば、それが大げさでないことはすぐにわかる。また、並みのチームなら、ある程度の達成感からあっさり次戦で敗れたりするのだが、近江はその実力が本物であることを証明した。

自信みなぎる戦いぶり

 盛岡大付(岩手)戦は、バッテリーが打者の弱点を徹底的に突いて、要所で三振を奪い、強力打線の分断に成功した。昨秋の近畿大会で敗れている神戸国際には、9回2死から追いつかれたが、山田が再登板して同点で食い止め、サヨナラにつなげた。大阪桐蔭を倒した自信がみなぎっているような戦いぶりで、これは勢いだけではない。今年の近江は強かったのだ。

チーム状態万全の智弁和歌山に挑む

 準決勝の相手は智弁和歌山で、ここまで戦ったイニングが、近江41回(ノーゲーム含む)に対し、智弁和歌山はわずか18回。最も力が出ると言われる3戦目となるチーム状態万全の相手に、どう挑むか。気がかりなのは、抑えで起用される岩佐直哉(3年)の体調だ。神戸国際戦では最後のアウトが取れず、山田の再登板を仰ぐことになったが、明らかに消耗している。今大会まだ登板のない3人の2年生左腕の起用も考えられるが、「やっぱり最後は3年生」と多賀監督が言うように、県大会2敗のチームを全国4強にまで押し上げた上級生に託すことになるだろう。終盤まで競り合って、大阪桐蔭戦で見せたような粘りで食い下がってほしい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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