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(逃げ恥、IQ246、カインとアベル etc)新作テレビドラマ第一話レビュー(後編)

成馬零一ライター、ドラマ評論家

2016年 秋ドラマのみどころを簡潔に紹介。

見る際の参考にしてください。

前編はこちら→(べっぴんさん、校閲ガール、黒い十人の女 etc)新作ドラマ第一話レビュー(前編)

NHK

スニッファー 嗅覚捜査官

土曜 22:00~

http://www.nhk.or.jp/dodra/sniffer/

阿部寛が演じる嗅覚が異常発達したコンサルトが主人公の事件モノで、ウクライナで制作されたドラマのリメイク。

チーフ演出の堀切園健太郎は『ロング・グッドバイ』という探偵ドラマを手掛けていたが、映像の重厚感はそのままに『ロング・グッドバイ』をよりライトにした作りとなっていてとても見やすい。

今期は一話完結の事件モノが多いのだが、ちょっと別格という感じ。

阿部寛の相方となる刑事を演じるのが香川照之なのだが、二人の掛け合いが見られるだけで楽しい。

こんな人におススメ→阿部寛と香川照之の掛け合いが見たい人。

TBS系

IQ246~華麗なる事件簿~

日曜 21:00~

http://www.tbs.co.jp/IQ246/

コンスタントにヒット作を生み出している日曜劇場のミステリー系ドラマ。

細かい小ネタ(第一話なら織田裕二と石黒賢が共演した『振り返れば奴がいる』など)の見せ方は、『99.9』や『ATARU』などで繰り返されてきた小ネタ消費の戦略で、細部の見せ方は手堅い作りではないかと思う。

ディーン・フジオカと土屋太鳳は旬の俳優だけあって、見ているだけで楽しく起用方法も完璧。

織田裕二の演技に対しては今のところ馴染めない。

こんな人におススメ→ごった煮のミステリーを見たい人

火曜 22:00~

逃げるは恥だが役に立つ(第2話まで放送)

http://www.tbs.co.jp/NIGEHAJI_tbs/

新垣結衣(ガッキ-)がひたすらかわいいドラマ。

ガッキ-、星野源に『重版出来!』の野木亜紀子(脚本という座組みがうまく合っている。

原作にあるとはいえ、情熱大陸やプロフェッショナルのインタビューネタはやり尽くされてるので、ちょっと恥ずかしかったが、それ以外は気にならない。

エンドロールのダンスもあざといと言えばあざといが、本編のふわふわした幸福感とがリンクしているので違和感はない。

原作漫画にある饒舌な社会批評のようなものを、どれくらい盛り込めるかで作品の評価は変わっていくのではないかと思う。

今期一番の注目作。

こんな人におススメ→かわいいガッキーと星野源が見たい人

砂の塔~知り過ぎた隣人~(第2話まで放送)

金曜 22:00~

http://www.tbs.co.jp/sunanotou/

同枠の『家族狩り』や『夜行観覧車』の流れを汲む嫌ミス系ドラマ。

タワーマンションで暮らす主婦たちの住んでいる階に応じて生まれる格差の問題と、子どもを狙った殺人事件の問題がリンクしていき、そこに松嶋菜々子が演じるマンションの怪しい住人が絡むという展開はオリジナルドラマでありながら、どこかで見たような設定の寄せ集めで、桐野夏生と湊かなえのパロディみたいなお話となっている。

これに一定の需要があるのはわかるけど、見ていて鬱々としてくる。

余談だが第一話放送時に裏の金曜ロードSHOWで放送されていたのは宮崎駿のアニメ映画『ルパン三世 カリオストロの城』。

この枠が辛いのは裏の金曜ロードショーがジブリ映画を筆頭とする人気映画やアニメをガンガンぶつけてくるからで、そこと差別化しないと生き残れない。かつては良識的な名作を生み出していた金曜ドラマが、こういったゴシップ志向となったのは、金曜ロードSHOWとの戦いがあるかではないかと思う。

こんな人におススメ→富裕層のいがみ合いが見たい人

フジテレビ系

キャリア〜掟破りの警察署長〜(第2話まで放送)

日曜 21:00~

http://www.fujitv.co.jp/career/

一言でいうと現代版・遠山の金さん。一話完結のプログラムピクチャーとしてはよく出来ている。

ただ、第一話の切れる10代の若者的な悪役の造形は少し恥ずかしい。

悪役の安直さが、泉ピン子が主演を務めた『天誅~闇の仕置人~』(フジテレビ系)を思い出すが、あそこまで吹っ切れていたら断固支持するのだが。

高嶋政宏が演じる強面の刑事と瀧本美織のスーツ姿がカッコいい。

個人的には裏で放送されている『IQ246』よりは、こちらの方が見やすい。

こんな人におススメ→現代を舞台にした時代劇が見たい人

カインとアベル

月曜 21:00~

http://www.fujitv.co.jp/CainandAbel/

旧約聖書にあるアベルとカインの物語を原案としたドラマ。

大企業の社長の息子で優秀な兄にコンプレックスを持つ弟を山田涼介が好演している。

物語としてはお仕事モノ+兄弟で一人の女を取りあう三角関係を描いたもの。

『マルモのおきて』等を手掛けた阿相クミコの脚本がしっかりしており、第一話は順当な滑り出し。クラシックを中心とした音楽の使い方が荘厳。山田涼介の表情やポーズがいちいちカッコよくPVのよう。

これが月9でどのように受け入れられていくのか気になる。

こんな人におススメ→カッコいい山田涼介が見たい人

メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断(第2話まで放送)

火曜 21:00~

http://www.ktv.jp/ladydavinci/index.html

シリーズ化されて好調だった医療ミステリードラマ「チーム・バチスタ」シリーズの女性チーム版といった感じのオリジナル作品。

原因不明の病気を捜査医療ミステリーという馴染みにくい題材だが、基本的には吉岡里帆演じる新人の女医が事件を調査する使いっ走りのワトソンで、吉田羊が推理するベテラン女医が安楽椅子探偵のホームズだと思えば、わかりやすい。

連続テレビ小説『あさが来た』(NHK)以降、快進撃を続ける吉岡里帆の細かい仕草や少し硬い表情がかわいい。

他のチームのキャラが立って来れば、もっと面白くなるんじゃないかと思う。

こんな人におススメ→吉岡里帆が好きな人

グッドモーニング・コール(第2話まで放送)

水曜 深夜(関東ローカル)

http://www.goodmorning-call.com/index.html

Netflixで配信されていた少女漫画原作のラブコメドラマ。

偶然、イケメンと同居することになった女子高生の日常を描いた作品。

あらすじ自体には新味がないが、若手俳優がたくさん出演しているので学園ドラマとして楽しい。

“まいんちゃん”こと、福原遥がこたつに入っているシーンがかわいい。

こんな人におススメ→こたつに入ったまいんちゃんが見たい人

CHEF~三ツ星の給食~(第2話まで放送)

木曜 22:00~

http://www.fujitv.co.jp/Chef/index.html

天海祐希が演じる天才シェフが食中毒で仕事をクビになり、給食専門の仕事をすることになる話。

オーナーが自分勝手なシェフを追い出すために料理評論家とグルになって食中毒を偽装してそれを自ら本人にバラしてしまう展開には驚いた。

大人向けの高級料理と子ども向けの給食では味付けに対する考え方が違うということが今後の見どころとなってくるのだろうが、単に子どもたちがマズイと言うだけで、料理がまずかった理由の解説が一切されないまま、主人公の気持ちの話だけが延々と進んでいくので正直戸惑った。学校給食の話はちゃんと調べて作れば面白いので、今後に期待。

こんな人におススメ→給食が気になる人

タイムパトロールのOL(第2話まで放送)

フジテレビ系 25:35~(バラエティ番組『ハイポール』内で放送)

http://blog.fujitv.co.jp/hi_poul/E20161013001.html

OLたちのガールズトークが延々と続くショートコントと思ったら、実はタイムパトロールだったという導入部は面白い。

試みとしては『ラブラブエイリアン』(フジテレビ系)に近いが見せ方は全然違う。 

突然始まるので、何だ? と思って見入ってしまった。

戸田恵梨香に似てる人が出てると思ったら、本人だったので二度びっくり。

脚本・演出は劇団「五反田団」を主催し小説家としても活躍する前田司郎。

こんな人におススメ→変なものを偶然見たい人

日本テレビ系

レンタル救世主(第2話まで放送)

日曜 22:30~

http://www.ntv.co.jp/renkyu/

一言で言うとどんな無理難題でも解決する「何でも屋」の話。

主演の沢村一樹と藤井流星(ジャニーズWEST)の掛け合いが素晴らしいが

会話の味付けが若干濃すぎるので、好みはわかれるかも。

一話解決の事件モノが日曜日は三本そろっているのだが、それぞれのカラー(フジ、TBS、日本テレビ)が出たものとなっている。

動画サイトの使い方や、見せ場で志田未来の口調がラップになる場面が、個人的にはつらい。

そこがハマれる人なら楽しめるのではないかと思う。

こんな人におススメ→味付けの濃いエンタメが見たい人。

テレビ朝日

警視庁ナシゴレン課

月曜 24:15~

http://www.tv-asahi.co.jp/nashigorenka/

AKB48の島崎遥香(ぱるる)が主演を務める刑事ドラマ。

AKBのメンバー41人が主演を務めたオムニバスドラマ『AKBホラーナイト アドレナリンの夜』(テレビ朝日系)の投票企画で一位となったことでぱるるが主演に選ばれたのだが、連続ドラマというよりは一幕モノの舞台劇風コメディという感じ。

『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)の女子大生役がよかったので、女優としてのポテンシャルはあると思うが、クールな塩対応キャラだけで押すのはちょっと弱いので、もうひとひねり欲しい。

ただまぁ、そういう期待をかけること自体が間違っているのかもしれないので、気軽に見て楽しむのが吉かも。

こんな人におススメ→強気のぱるるが好きなら

相棒Season15(第2話まで放送)

水曜 21:00~

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

警視庁にある特命係という架空の部署に勤める刑事・杉下右京(水谷豊)の活躍を描いた刑事ドラマ。

反町隆史が演じる冠城亘をどう見せるかという部分は、若干迷っているようにみえる。

一話関係のドラマなので、よくもわるくも脚本次第だが良くも悪くも安定期に入っている。仲間由紀恵は安定感バッチリ。

こんな人におススメ→完成度の高い刑事ドラマを見たい人

科捜研の女

木曜 20:00~

http://www.tv-asahi.co.jp/kasouken16/

沢口靖子が演じる法医研究員が主人公の科学捜査モノ。

第一話は巫女のアルバイトをしていて人気のある大学生がハッカー集団に人質にとられて動画サイトで身代金を要求されるという話。 『相棒』ともに毎年放送されている人気シリーズだが戸田山雅司の脚本がしっかりしていて見応えのあるものとなっている。

今後は脚本家の櫻井武晴も登板予定で、脚本家のレベルは『相棒』よりも高いものとなっている。

ドラマに安定感を求めるなら、実は一番手堅いドラマ。若手研究員の山本ひかるがかわいい。

こんな人におススメ→定番の面白さを求める人。

ドクターX~外科医・大門未知子~(第2話まで放送)

木曜 21:00~

http://www.tv-asahi.co.jp/doctor-x/

フリーランスの天才外科医・大門未知子が巨大病院で自分を貫き通して次々と難しい手術を成功させていく一話完結の医療ドラマ。

今回から新登場した泉ピン子と米倉涼子の掛け合いが面白い。

戯画化が進みすぎて、組織VS個人というドラマ構造が意味をなさなくなっている中で、どうやって面白い対立を作るのかが、今後の課題だろう。西田敏行が縮んでいるのが気になる。

こんな人におススメ→泉ピン子が好きな人

家政夫のミタゾノ

金曜 23:15~

http://www.tv-asahi.co.jp/mitazono/

松岡昌宏(TOKIO)が家政夫を演じる、男性版『家政婦は見た!』というよりは大ヒットした『家政婦のミタ』(日本テレビ系)の男性版という感じ。

正直、あんまり期待していなかったのだが、一発ネタかと思いきや物語のフォーマットがしっかりしているためか、思ったより楽しめたのは『半沢直樹』などで知られる八津弘幸の脚本がしっかりしていたからだろう。

ところどころ家政婦豆知識が入るB級の作りなのだが、しっかりした映像で撮っているので、バランスがいい。

松岡もいいがアシスタント的存在の清水富美加もいい。

こんな人におススメ→掃除や料理の豆知識が知りたい人

テレビ東京系

石川五右衛門

金曜 20:00~

http://www.tv-tokyo.co.jp/ishikawa_goemon/

市川海老蔵が石川五右衛門を演じる豪華絢爛時代劇。松竹制作のためか、画面の作りがしっかりしている。

お城の中の明るさがロウソクの灯りを基調とした少し暗い映像となっていたのがいい。音楽が川井憲次だというのも、ポップさに拍車をかけており、歌舞伎のケレン味を炸裂させている。

時代劇ということを抜きにしても他のドラマとまったく違うので見応えがある。

こんな人におススメ→派手な映像が見たい人

吉祥寺だけが住みたい街ですか?(第2話まで放送)

金曜 24:52~

http://www.tv-tokyo.co.jp/kichijoji/

吉祥寺にある重田不動産を仕切る双子・重田ツインズが狂言回しとなるドラマ。

淡々とした笑いの中に現代社会の生活に疲れた人々が物件探しで待ちをめぐることで癒されていくという不思議な作りの作品。主演の双子を演じる大島美幸と安藤なつの存在感に圧倒される。

サブカルと言うよりは東京ご当地ドラマとでも言うような作品で、同じテレビ東京の『東京センチメンタル』や『孤独のグルメ』のような、フィクションでありながら東京ガイド的な作りとなっているので街歩きする感覚で楽しめる。

こんな人におススメ→東京のかくれスポットが知りたい人。

総評

いわゆる大ヒット間違えなしという座組みはないのだが、どれも出演俳優や脚本家のネームバリューがこれからの成長株だったり、逆に北川悦吏子のような久々の人だったりという感じでいい意味で先が読めない。

こういう時は思いもよらないヒット作やスター俳優が登場するものだが、座組み面で今期一番楽しみなのは『逃げるは恥だが役に立つ』だろう。他にもバカリズム脚本の『黒い十人の女』が、最終的にどのような仕上がりとなるのか楽しみ。

ここ何クールか停滞感が漂っていただけに、そろそろ役者や脚本家の新しいスターが生まれてほしいところだ。

ライター、ドラマ評論家

1976年生まれ、ライター、ドラマ評論家。テレビドラマ評論を中心に、漫画、アニメ、映画、アイドルなどについて幅広く執筆。単著に「TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!」(宝島社新書)、「キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家」(河出書房新社)がある。サイゾーウーマン、リアルサウンド、LoGIRLなどのWEBサイトでドラマ評を連載中。

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