推計約54.1万人、理由は「職場になじめなかった」など…ひきこもりの現状をさぐる(2019年公開版)
内閣府では2019年6月に「子供・若者白書」の最新版となる2019年版を、専用サイト上に公表した。その白書では、若年層を中心に各種公的調査の結果を取りまとめ、多方面から若年層の現状を分析・報告し、行政の各種施策なども紹介している。今回はその記述をきっかけとする形で、いわゆる「ひきこもり」について、その実態を確認していく。
次以降のグラフは内閣府が2015年に実施した「若者の生活に関する調査」(※)を一次データとするもの。白書で言及されていない部分は、その調査の最新データを反映させてまとめることにする。
「若者の生活に関する調査」によれば15~39歳を対象とした調査対象母集団において、狭義でのひきこもり認定者率は0.51%、広義では1.57%との結果となった。
単純に人口推計と合わせて換算すると、狭義ひきこもり数は約17.6万人・広義は約54.1万人となる。ただし「ひきこもり」の定義にはグラフにある通り「普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からもほとんど出ない」「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する(広義ひきこもり対象者)」などいくつかの段階区分があり、注意が必要となる。
さらに調査における非回答者には該当者が少なからずいるものと推定されるため、実態としてはもう少し上回ると考えた方がよい。
一方、グラフ中の注意書きにもあるが、心身的な病気によるもの、自宅就労者、家事手伝いなどをしている人などは今回の「ひきこもり」には該当しない。例えば花嫁修業中の人、SOHOスタイルで働いている人、妊娠している人は対象外となるので注意が必要。
ひきこもり状態に陥るのには何らかの原因があるはずだが、それを尋ねた結果が次のグラフ。3大理由は「職場になじめない」「病気」「就活失敗」である。なお今項目では現在「ひきこもり」状態にある人に加え、かつてその経験があった人にも尋ねた結果を併記する。
学校関連でのつまづきは不登校によるところが多く、受験の失敗は相対的ではあるが少なめ。過去の経験では不登校が最多なのは、現在では状況を脱しており、昔の経験を尋ねていることによるものだろう。一方で就業における問題や病気によるものの多さも目に留まる。
「その他」の事例が3割台を占めているのは、「ひきこもり」化する原因が一様では無く、人により多様なものであることがうかがえる。あるいは匿名による調査であっても他人には語ることが難しい理由や、具体的な言語化が難しい「もやもやとした心境」によるものもあるのだろう。
グラフ化などは略するが、今調査の詳細を大元の調査結果から確認する限り、個々の資質の積み重ねと、何らかの大きなきっかけが相互作用した結果、ひきこもり化したパターンが多いように見受けられる(例えば「ひきこもり」該当者はそれ以外の人と比べ、自分の感情を表に出すのが苦手な人が多い)。見方を変えれば、たとえ資質があったとしても、きっかけを乗り越えることができれば、ひきこもり化は避けられる可能性がある。
無論それには個々の該当者自身だけで無く、保護者をはじめとした周囲のサポートが必要なのは言うまでも無い。
余談ではあるが、2019年版の白書では2018年に実施された中高年を対象とした引きこもりに関する調査についても言及している。今精査対象の白書はあくまでも「子供・若者白書」であることから詳細は略するが、調査結果の概要としては次の通りとなる。
一部報道で「40~64歳の中高年ひきこもり数が61.3万人で、15~39歳の若年ひきこもりより多い」と騒がれたが、該当年齢階層全体に対する割合では少ないのが実情。さらに15~39歳対象の調査では「専業主婦・主夫、家事手伝いと回答した人」は広義のひきこもりから除外していたが、40~64歳対象の調査では含めてしまっている。同じ基準で再計算をすると、40~64歳のひきこもり推計人数は46.9万人、1.11%となる次第である。
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※若者の生活に関する調査
層化二段階無作為抽出法によって選ばれた、全国の市区町村に居住する満15歳から満39歳の5000人と同居する成人家族が対象。2015年12月11日から12月23日にかけて、調査員による訪問留置・訪問回収方式で実施されている。有効回答数は本人3115人、家族2897人。男女比は47.9%対52.1%、年齢階層比は15~19歳が18.5%・20~24歳が17.4%、25~29歳が17.6%、30~34歳が21.7%、35~39歳が24.8%。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
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