日米共同開発の極超音速兵器迎撃ミサイルGPI、米ノースロップが明言「日米のワークシェアは五分五分」
米防衛大手ノースロップ・グラマンは5月23日、内外のメディアやシンクタンク関係者向けに都内で「技術協力シンポジウム」を開いた。そして、北朝鮮や中国、ロシアが開発・実戦配備を進めている極超音速兵器を迎撃する新型ミサイル「滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)」の日米共同開発について、同社担当者が説明し、「日米企業のワークシェア(作業分担比率)はフィフティーフィフティー(五分五分)になる」と明言した。
日米両政府は5月15日に両国間の作業範囲や意思決定体制などを定める文書に署名したばかり。米国がミサイルの目に相当する探知センサーや誘導・通信設備を担当する。一方、日本はロケットモーター(1段目)と弾頭部分のキルビークル(2段目)の推進装置を担当する。両国は2030年代の開発完了を目指している。
米政府は今、ノースロップとレイセオンの2社と契約の上、両社を競合させてコンセプト検討などを実施中で、高性能で低コストのGPIを開発することを目指している。開発段階でその2つのコンセプトから1つを決定する。その決定を行うのが2030年ごろと言われている。
●GPI日米共同開発の総額は4700億円超
共同通信は3日、米国防総省ミサイル防衛局の情報として、GPIの共同開発にかかる総費用が30億ドル(約4700億円)を超えるとの日米の推計を報じた。このうち、日本は10億ドルを拠出するという。岸田政権は既に2024年度予算に757億円の開発費を計上した。
極超音速兵器は、音速の5倍(マッハ5)以上で低空を変則軌道で飛行するため、通常の弾道ミサイルと比べて探知や迎撃が難しいとされる。岸田首相とバイデン米大統領が2023年8月の首脳会談でGPIの共同開発で合意していた。
ノースロップは22日、極超音速ミサイルに対する防衛能力を構築する日米GPI共同開発協定をサポートするとの声明を発表した。
ノースロップと三菱電機は今年2月、日本の陸上設置型システムのための統合防空ミサイル防衛(IAMD)能力について協力するための協業契約に署名した。ノースロップ担当者は23日開催の技術協力シンポジウムの中で、三菱電機のほかに三菱重工業の名前を協業パートナーとして挙げていた。
防衛省は15日に行ったGPIの日米共同開発に関する記者ブリーフィングで、GPIの日本側開発担当となる日本企業と今年度中に契約を締結する計画を明らかにした。
防衛省が15日に発表したプレスリリースによると、艦載型のGPIは日本の統合防空ミサイル防衛能力と日米同盟の抑止・対応能力を向上させることが目的となっている。GPIは海上自衛隊の将来のイージス・システム搭載艦(ASEV)への搭載が予定されている。
GPIは、これからの日本にとって甚大な脅威となる極超音速ミサイルに対処するもので、日本防衛の鍵となりうる新技術といえる。
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