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松崎しげる 思い入れが強い3曲とは? 盟友・大橋純子の歌は「歌い継いでいく」――涙のセッション

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

松崎しげるが、3人のアレンジャーが紡いだ一夜限りのアレンジで、思い入れが強い3曲をスーパーバンドとセッション

アーティストが今歌いたい、歌うべき曲を、音楽シーンを代表するサウンドメーカーが紡ぐスペシャルアレンジで、一流のミュージシャンたちとセッションする音楽番組『Sound Inn S』(BS-TBS)。

『ウマ娘 プリティーダービー』夏の新CMソングが話題

8月17日(土)放送回には、来年55周年を迎える松崎しげるが登場。7月から始まった『ウマ娘 プリティーダービー』夏の新CMで、インパクトある歌声を響かせ話題を集めている。これまで様々なジャンルの音楽と向き合い、唯一無二の歌で魅了してきた松崎が、この日は自身の代表曲、そして大好きな曲、さらに亡き後輩への思いを込めた曲を披露。74歳となった今も衰えを知らない歌声で、感動を届ける。

名曲「愛のメモリー」は「美しいラブソングなのに絶叫できるところが俺らしくていい」

一曲目は「愛のメモリー」。1977年の発売以来、大切に歌い続けている代表曲をこの日は十川ともじのアレンジで披露。この曲について松崎は「自分の分身のような存在。20代の時も70歳を超えた今も、ずっとその時代のラブソングとして歌える曲」と語っている。アレンジを手がけた十川はこの曲をリアルタイムで聴いていたと言い「誰もが知るスタンダードナンバーをリアレンジするのは、すごくプレッシャーでした。半分俯瞰で向き合うようにしていましたが、ピアノを弾きながら松崎さんの歌に感動していました」と語り、抒情的で美しいアレンジを作り上げていた。松崎は「素晴らしいアレンジ」と絶賛し、繊細さと圧倒的な爆発力を感じさせてくれる歌をスタジオ中に響き渡らせる。「美しいラブソングなのに絶叫できるところが俺らしくていい」と、改めてこの曲の魅力を教えてくれた。

「大好きな」中尾ミエの「大好きな」曲、「ただそれだけ」

笹路正徳
笹路正徳

2曲目は松崎が「大ファン」と語る、中尾ミエの「ただそれだけ」(1967年)を笹路正徳のアレンジで歌った。大作曲家・服部克久作曲・編曲のこの曲は、松崎がこれまで自身のアルバムで何度もカバーしたほどのお気に入りの一曲で、オリジナルはボサノバの心地いいリズムと突き抜けるようなメロディ、上品なアレンジが印象的だ。松崎も「コード進行とヨーロッパ的なサウンドのハーモニーは服部さんならでは」と語り、この日も歌えることをとても楽しみにしていた。そんな松崎の気持ちに応えるように、笹路がクールかつ温もりのあるアレンジに仕立てた。笹路が「すごい展開の曲。コードは変えずに特にストリングスやホーンの部分をリアレンジして、新しい『Sound Inn S』バージョンができあがったと思います」と語ると松崎は「すごくフレッシュでした。引き込まれるようなアレンジで、こういうサウンドにまた出会うことができて嬉しい」と、興奮気味に語ってくれた。

松崎は1970年代に『Sound Inn S』の司会を務めた経験があり、この番組について「当時から歌手冥利に尽きる大変贅沢な番組でした。自分のレパートリーにない洋楽曲をたくさん歌わせていただき、松崎しげるを成長させてくれた番組です」と、教えてくれた。

「ジュンペイ(大橋純子さん)の歌は俺たちが歌い継いでいくと約束した」

最後は昨年11月に死去した、松崎の事務所の後輩であり盟友でもある大橋純子さんの名曲「愛は時を越えて」(1992年)を、坂本昌之のアレンジで披露。坂本はかつて大橋のサポートメンバーを務めていたことがあり、二人の大橋さんへの深いリスペクトと愛が溢れる名セッションになった。ストリングスとフルートが印象的に響く美しいアレンジに乗せ、松崎が「ジュンペイ(大橋さん)の歌は俺たちが歌い継いでいくと約束した」と本番前に語っていたように、ひと言ひと言を慈しむように歌っていた。<時を越えていつも心は あなたと生きてゆく>という歌詞が胸に迫る、この最高の戦友に贈る歌を歌い終わると、松崎は上を見上げ、天に向かって指を差し涙を流していた。そして「うまく歌おうなんてことを全く考えないで歌えた。ジュンペイに対する気持ちを曝け出した瞬間だったかもしれない。ずっとこういう気持ちが続いて欲しいと思った。切ないけどゆったりとした気持ちにさせてくれた」と感無量の様子だった。

「後輩に“あのオヤジすげぇな”って常に言われるように歌い続けていきたい」

松崎が主宰する「黒フェス」が、今年も9月6日(金)東京・豊洲PITで開催される。ジャンルと世代を超えたアーティストとの共演が、大きな刺激になっていると同時に、若手に刺激を与えたいと語ってくれた。

「自分が先輩の背中を見て歌ってきたように、後輩に“あのオヤジすげぇな”って常に言われるように歌い続けていきたい」と、来るべき55周年に向け気持ちを引き締めていた。

松崎しげるのパフォーマンスが楽しめる『Sound Inn S』は8月17 日(土)、BS-TBS(17時30分~18時)で放送される。またTVerでは未公開部分を追加した特別バージョンが見逃し配信される【配信期間8/18(日) 12:00~9/18(水) 11:59】。

BS-TBS『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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