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羽生結弦が全幅の信頼を寄せるスケート研磨師は、東北のアイスホッケーチームで腕を振るう<その2>

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
羽生結弦(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

フィギュアスケート日本一の座を争う第85回全日本フィギュアスケート選手権大会が、今日開幕します。

大会4連覇中の羽生結弦は、残念ながら欠場となりましたが、羽生のスケートの研磨を担い続けているのが、吉田年伸(44歳)です。

ディズニーオンアイスに出演したり、トリノオリンピックで金メダルを獲得した荒川静香の振り付けを担当した阿部奈々美と結婚し、「仙台近郊ではスケート用品を手に取って、選ぶことができない」との思いから、2008年7月にアイスリンク仙台の近くに、スケートショップ「NICE」をオープン。

ところが東日本大震災に遭い大きな被害を被り、「閉店」や「廃業」も脳裏をよぎったと言います。

しかし思いとどまり、再びスケートショップを再開した吉田の人生に、転機をもたらせたのは、アイスホッケーをしていた長男の存在でした。

▼アイスホッケースクールの見学が転機に

「質の高い人の指導を受けさせてあげたい」

こんな吉田夫妻の想いから、アイスホッケーをしていた長男は、日本の4チームをはじめ、韓国、中国、ロシアのチームが参戦しているアジアリーグに加盟する東北フリーブレイズのアイスホッケースクールで、指導を受けていました。

2008年11月にチーム創設を発表したフリーブレイズは、「スポーツを通じて、次世代の育成と地域振興を図り、地域や市民との信頼関係を構築することによって、東北の誇りとなる “オンリーワンチーム” を目指す」との理念を掲げて船出。

その一環として、子供たちを対象にしたアイスホッケースクールを、仙台でも開催していました。

仙台のアイスホッケースクールは、月に2回ほど行われていましたが、「スケートショップが休業日の水曜日だった」ため、吉田も見学に行っていたそうです。

やがてインストラクターを務めていたフリーブレイズのコーチや選手たちとも、会話を交わすようになると、思いもしていなかった話を聞かされます。

スケートの研磨についての相談です。

▼選手に求められチームの一員に

当時のフリーブレイズで、スケートの研磨を担当していたのは、元々は私設応援団・ブルーファングスの一員だった男性で、研磨の経験こそあるものの、それを本業としていた人物ではありません。

研磨師不在のチームを救うために、一肌脱いだとは言え、25名前後のスケートを研磨し続けるのは、並大抵のことでないのは明らか。

一方、選手たちにとっても、スケートは大事な “商売道具” だけに妥協はできないとあって、やがてチームから「研磨のアドバイスをしてあげてください」との依頼が届いきました。

それを皮切りに、「遠征にも同行してもらえませんか?」という吉田を頼りにする声が高まり、ついには昨季からチームのスケート研磨師(イクイップメント マネージャー)として、フリーブレイズの一員になったのです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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