ノルウェー法務大臣の同居人が逮捕 自作自演の放火か、自宅写真を演劇で公開され激怒していた
ノルウェーのトール・ミッケル・ヴァーラ法務・移民大臣の同居人が、自宅の車の放火と虚言の容疑で逮捕された。
ノルウェー国家公安警察(PST)とつながる法務省のトップの身内の逮捕は、異例の事態だ。
芸術家らと法務大臣カップルの衝突
全ては、ノルウェーの芸術家らが、法務大臣の自宅を撮影し、演劇で映像を使用したことから始まる。
法務大臣と同居するパートナー、ライラ・アニータ・ベルトゥーセン容疑者(54)は、プライバシーの侵害だとして、芸術家らを強く批判していた。
容疑者は、オスロ警察に芸術家らの行為を通報したが、一度は却下される。
同時に、昨年12月から、5回にわたり、法務大臣の自宅では、脅迫や放火などの事件が続く。
自宅の壁には、綴りが間違った「人種差別主義者」という赤色の文字が残されていた。
法務大臣の「進歩党」は、ノルウェーでは右翼ポピュリスト/極右とされており、移民や難民への厳しい発言は、一部の人々からは人種差別だと批判されている。
演目内容は、「ノルウェーをさらに人種差別主義的な国にするネットワーク」など、極右の動向を批判するものだった。
法務大臣宅で連続する事件は、作品が原因で、大臣の家族が被害にあっていると思わせた。
ノルウェー首相は作品を批判
事件の犯人がわからない状態が続く中で、大臣のプライバシーを演目に使用した芸術家らを、アーナ・ソールバルグ首相(保守党)は批判していた。
「政治家の周囲の人間を巻き込むことが、どれだけ政治家が政治家でいることを大変にさせているか、今一度考えてみるべきだ」と発言していた首相。製作側と政府関係者側との衝突が目立っていた。
与野党の政治家らは、自宅が狙われる法務大臣と家族を気に掛けるコメントを出していた。普段は政治的には対立する政治家らも、同情していた。
何か月も犯人を特定できない国家公安警察にも、批判が集まる。
法務大臣と同じ党のカール・ハーゲン氏は、「大臣の同居人が、芸術家たちを通報していたにも関わらず、警察が事件を放置したから事態が悪化した」と、警察を警察に通報していた。
法務大臣の同居人が自ら車に火を放った
騒動が収まらない中、14日、法務大臣の同居人が逮捕されるという展開は、関係者に衝撃を与える。
法務大臣が国会で演説中、同居人は大臣の自宅で、警察に逮捕される。警察はその後、首相官邸に逮捕を伝えた。
法務大臣は、同居人が逮捕されたことを首相から伝えられる。
大臣は精神的ショックを受け、休養の許可を得た。大臣職は、別の政治家が緊急で担当することに。
公に批判されていた芸術家側は、首相に謝罪を求めるが、首相は拒否。
政府関係者らは「ショックだ」と口を揃える。
ノルウェー首相は14日の記者会見で、「法務大臣と家族にとって、悲劇でしかない」とコメント。
法務大臣の家で起きた5回の事件は、複数の人物による行いであるかのように工作されていた。
大臣の同居人は、3月10日の車の放火事件の疑いでのみ逮捕されており、1年間の懲役を言い渡される可能性があるが、これまでの自宅での4回の事件にも関わりがあると国家公安警察はみている。
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国家公安警察と直接関係がある法務省のトップの身内が逮捕されるというスキャンダル。
政治批判をした芸術家らの姿勢と表現の自由、政治家の身内のプライバシー侵害の境界線。
首相は、車の放火事件の直後、犯人が分からない中、「これは民主社会への攻撃だ」とコメントしていた。
芸術家によって私生活を侵害されたと憤慨した女性が、届かない自分の怒りの声を主張するために、自宅の車を放火し、脅迫状を書く自作自演に追い込まれたのか?
両者の衝突が引き起こした逮捕事件は、「悲劇だ」、「信じられない」という驚きと落胆に包まれている。
Text: Asaki Abumi