働き方について世界女性会議の代表にインタビュー 「女性やカワイイは批判されすぎ」
世界中の働く女性たちを応援するネットワーク組織WINの世界女性会議が、首都オスロで開催された。
互いの経験や悩みを共有し、インスパイアするこの機会は、毎年大きな人気を誇る。
創設者であるノルウェー人女性のクリスティン・エングヴィッグさんにインタビューをした。
エングヴィッグさんが運営する女性会議は、これまで日本でも複数回おこなわれた。
「日本語、少しだけなら……」と、インタビュー開始時には日本語も話そうとし、日本が大好きだとエングヴィッグさんは話す。
北欧の女性の社会進出の進み具合は、他国では話題にあがりやすい。国際的な仕事をしているエングヴィッグさんは、「ノルウェーではなぜ……」と、聞かれることが多いそうだ。
「日本とノルウェーにはまず共通点があります。ひとつは、両国とも自然を大事にしていること。そして、他者を敬う姿勢と、周囲との協同作業です。ノルウェー以上に、日本にいる人は自分のグループ内での協同を重要視しますね」。
「日本はテクノロジーも進んでおり、時間を守る。女性の身体のしぐさは、ひとつひとつが丁寧で、とても美しいと思いますよ」。
でも、ここで「おや?」という点がありますね、と話は進んだ。
「大きな疑問がでてきます。男女という点においては、大きな違いがあるようです。日本の女性たちは世界で最も高度な教育を受けているのに。その彼女たちは、どこにいるのでしょう?」。
女性が参加する「働き方講座」はもう十分では?
エングヴィッグさんは、日本では女性に関するレッスン、セミナーやトレーニングはたくさんあるが、それ以上はしなくてもよいのでは、と話す。
「いつまでたっても、『まだまだ十分じゃない』となる。彼女たちはもう十分に良い(Good enough!)ですよ。変えたほうがいいのは、社会構造やワーク・ライフ・バランスではないでしょうか。男女が24時間働いていたら、全体が機能しなくなってしまいます」。
「ずっと仕事をしたい気持ちは私もわかります。それでも、どこかで止める必要があるのです。18時になったら仕事を終え、家で夕食を作る。その後にまた少し仕事をしたくなるかもしれませんが、ダメだと自分に言い聞かせる必要があります。もっと他の趣味などに時間を使わなければ」。
家庭で男の子も家事をすることが、小さな変化につながる
男性の考え方にも変化を起こすためには、今の親たちの子どもへの接し方が重要だと、エングヴィッグさんは話す。
「一世代でも違いをつくることはできます。学校(男女が共に取り組む課題)や職場(平等な賃金)だけではなく、家庭での取り組みも重要です。テーブルを片付けるのであれば、男の子も女の子も、一緒に片付けるとよいのではないでしょうか」。
企業内保育のリスク
幼稚園・保育園については、エングヴィッグさんは、「公的」機関が最も個人的にはおすすめだと話す。
※「保護者が働いているか」などは関係がないノルウェーでは、日本的な「幼稚園」・「保育園」に該当する区別がなく、子どもを預ける場所は「私立」か「公立」かという議論が一般的。
「日本では企業内保育の動きがあるようですが、個人的には、身分など関係なく、多様な子どもたちを預かる公的な場所のほうがいいと思います。企業内保育では、選ばれた子どもたちが集まることになってしまいます。それに、もし親がその企業で職を失ったら、子どもも居場所をなくします。子どものためにも、社会全体のためにも、公立のほうがよいのでは。そのためには政治家が動く必要がありますね」。
自身も息子を育てながら、文化が異なる世界各地で仕事をしてきたエングヴィッグさん。小さい子どもを連れて働いていた時は、変な目で見られることもあったという。
日本は課題がありつつも、様々な取り組みが行われようとしており、きっと変化は起き始めると思うと話す。
メディアが働き方改革を伝え続ける重要性
「ノルウェーでは以前からメディアの報道も、男女平等の発展に大きな貢献を果たしてきました」。
「途切れることなく、メディアが伝え続けることは重要です。自分に合うロールモデルや、自分にもできそうなこと、インスピレーションを受けるものに、たくさんの情報の中で出合えるかもしれない。『金曜日の16時に帰宅しても、いいのだよ』、と伝え続ければ、そうしようと思い始める人もでてくるかもしれません」。
カワイイや女性を批判しすぎずに
他国では日本独特の女性の「カワイイ」文化が批判されることもあるが、エングヴィッグさんは「カワイイを批判しすぎなくともいいと思う」と語った。
「女性のこととなると、どうしても批判が多くなりがち。『ああするべきじゃない、そうであるべきじゃない』と。カワイイでも、いいと思います」とほほ笑んだ。
Photo&Text: Asaki Abumi