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SMAP解散。既婚者と独身者の間にある「広く深い溝」を埋めるものとは?

大宮冬洋フリーライター

「既婚の同期から、『私も前はそういう(不毛な)恋愛をしていたな』みたいな発言をされるとイラッと来ます。同い年なのに上から目線。結婚しただけでそんなにエラいんでしょうか?」

先日、32歳の女性会社員がこんな本音を聞かせてくれた。地元志向の同期たちは社内外のエリート男性と20代後半で結婚するのが「王道」らしい。ひと昔前と異なるのは、寿退社をする人は少数派で、結婚してからも働き続けることだ。同じ仕事をする仲間であり続けながらも、2人の間には広くて深い心理的な溝が生まれる。

結婚、出産、育児は生活と行動パターンを一変するほどのインパクトがある。仕事や趣味、交際だけに集中していた独身時代とは関心事も変わってくる。そうでなければ家庭生活を維持するのは難しい。先日、TOKIOの山口達也が離婚会見をした際、自分が仕事と趣味、交際を大事にし過ぎてしまい、家族を疎かにしたのが最大の離婚原因だと明かしていた。おそらく本当のことだろう。

週刊文春の報道によれば、解散を発表したSMAPはすでに15年前には「壊れていた」という。その主因は、2000年に工藤静香と「授かり婚」をした木村拓哉と他の独身メンバー4人の確執だと指摘されている。SMAPがジャニーズ事務所からの独立を模索していた際、「家族のために」と木村を引き止めたのは妻の工藤だったという。

筆者は関係者に取材をしているわけではないので、真相はわからない。しかし、報道内容が事実だと仮定して、仕事仲間などの緊密な人間関係における既婚者と独身者の関係性について考えることはできる。

まず必要なのは時間である。時間の経過とともに心理的距離は変化することを念頭におくべきだ。例えば新婚時代。恋愛感情は高まったままであり、両親などへの挨拶や結婚式、引っ越しなどが目まぐるしく続く。どんなに親しい間柄の友人や同僚とも疎遠になるのは仕方ない。木村と工藤のように出産・育児も同時並行の場合はなおさらだ。

しかし、燃えるような恋愛感情はいつまでも続かない。子どもも少しずつ手を離れていく。そのときに、かつての新婚夫婦は「家族ベッタリでは社会において幸せになれない」ことを痛感する。夫と妻でそれぞれ大事にする人間関係も必要だし、夫婦で一緒に親しくなれる人がいれば最高だ。しばらく連絡をとっていなかった旧友とも再会したくなるだろう。そのことを既婚者と独身者の双方が理解し、長い目でお互いの関係性を捉えなければならない。

次に重要なのは配偶者の性格と意向だ。夫もしくは妻に、自分たち家族だけを大事にするように仕向けていたら、やがては核家族だけで孤立してしまう。それを防ぐためには、「男には(女にも)自分の世界がある」(ルパン三世のテーマ曲より)ことを念頭に置き、相手が仕事や交友関係を伸び伸びと続けられるようにすることだ。無理に支援はしなくてもいい。最低でも邪魔をしないことが求められる。

このように書くと、「どんな仕事をして、何にお金と時間を使って、誰と仲良くするのかは配偶者である自分の意向に沿うべきだ」と感じる人がいるかもしれない。筆者はそうは思わない。恋人の仕事や趣味、交際などがどうしても気に入らないのであれば、そもそも結婚をしないほうがいい。相手は立派な成人である。自分の意のままにしようと考えるのはおこがましいことだし、実践してしまうと上述のように家族で孤立する不幸を招くだろう。

友人や同僚の側としても、既婚者との関係を大切にするならば、その配偶者も好きになる努力をしなければならない。報道によれば、木村と工藤の結婚にはSMAPの元マネージャーが大反対をしたという。他のメンバーはどうだったのだろうか。SMAPという仕事仲間としては反対だったとしても、友人としては2人の結婚を祝福し、工藤とも親しくなりたい気持ちを伝えただろうか。矛盾していてもかまわない。時間をかけてでも、気持ちを伝えるべきなのだ。そうすれば、既婚者と独身者の溝はきっと埋まる。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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