〈カムカムエヴリバディ〉錠一郎は20年間、何もしてないのか? 気になり過ぎてチーフPに聞いた
“朝ドラ”こと連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)が本格的にひなた(川栄李奈)編になった。ひなたが条映撮影所で働くことになり、時代劇の撮影現場を目の当たりにする。1983年の流行歌がかかり、ひなたと斬られ役俳優・伴虚無蔵(松重豊)や若手大部屋俳優・五十嵐文四郎(本郷奏多)やベテラン俳優・美咲すみれ(安達祐実)などの個性的な人物たちのやりとりが楽しい。
安子編、るい編と来て3代のなかでは最も愉快な展開になっている。このままほのぼのホームドラマ&お仕事ドラマになっていくのだろうか。一番気になるのは錠一郎(オダギリジョー)はこのまま何もしないのだろうかということ。制作統括の堀之内礼二郎さんと演出の橋爪紳一朗さんに聞いた。
――ひなた編は笑える内容とのことでしたが、第16週のノリがずっと続きますか。
堀之内礼二郎(以下 堀之内) 第16週は一番純粋に笑って楽しんで頂ける週になっていると思います。ボケもツッコミもノリツッコミもできるひなたの才能が遺憾なく発揮され、明るく笑えるパワーある週になりました。今後は伴虚無蔵のエピソードやひなたの恋のエピソードなどぐっとくる場面も描かれていきます。
――今後はテーマ性のあるものになっていきますか。
堀之内 第17、18週になると徐々にシリアス味を増していきながら、様々な登場人物たちのドラマが描かれていくので、第16週ではその前にひなたの明るさや役割を存分に味わってもらおうと考えました。
――第16週のひなたは相手の言葉を反復することが多かったです。「冒涜だ」「冒涜?」、「おれは五十嵐だ」「五十嵐?」、「ラス立ち」「ラス立ち?」など。安子編、るい編ではあまり感じなかったのですが、「えっ」などの反応も多く、会話にも時代性をもたせているとしたらすごいと感じました。
堀之内 反復が多くなっているのは気づきませんでしたが、ひなたは安子やるいに比べてよくしゃべりますよね。心のなかでも口に出してもしゃべっています。反復が多いとしたらそのテンポ感やリズム感を出すためではないかと思います。川栄李奈さんのお芝居も一本調子ではなく独自の解釈でその都度、ひなたらしさをうまく表現しながら返しているように感じています。
――確かにキョトンとした表情など巧みですね。第75回、ひなたがすり足で映画村を出ていくところも面白かったです。あれは台本に指示されているのでしょうか。
橋爪紳一朗(以下 橋爪) 台本には「心なしか侍のように」と書いてありました。直前に虚無蔵さんと「御意のままに」という侍言葉のようなやりとりがあってその流れで、時代劇で武士が廊下を歩く時のような動きを川栄さんと相談しつつ、あの形になりました。やり過ぎると、いくら時代劇が好きでも高3の女の子の動きとしてさすがにおかしいと思われてしまうので、侍の動きがかわいらしく見えるぎりぎりの塩梅を探りました。川栄さんがクランクインしたばかりの頃で、二番目に撮った場面です。
――同じ75回、条映の休憩所で『セーラー服と機関銃』がかかります。あの選曲はどなたがやっているのでしょうか。
橋爪 基本は台本どおりに撮影していますが、あの選曲は台本になく、スタッフと相談して決めました。『カムカム』はラジオの話が縦軸としてあり、ひなた編で時代劇が中心になってもラジオが忘れられることがないように、チャンスがあれば出すようにしています。
――第73回のアヴァンでラジオから流れる曲も橋爪さんが選んだものですか。
橋爪 あれも編集室で話しながら決めました。
――第15週のひなた(新津ちせ)がラップみたいに英語を話すシーンなどもあって橋爪さんは音楽を使った演出が得意なのでしょうか。
橋爪 僕も知らない時代なので、全然得意と言うことはありません。『想い出がいっぱい』も元々狙って入れたわけではなく(※取材時は別の曲が仮に入っていました)。第15週は、ひなたの妄想なので現実と区別をつける必要性があると言う点以外は撮影中は意識してなくて、これもスタッフと話しながらやっています。
――さて、錠一郎が第76回で「あれから20年経ったんや」としみじみしていましたが、あれから20年、何もしてないのでしょうか。
堀之内 錠一郎さんは表面的には何もせずのほほんと過ごしているように見えると思いますが、あまり言うとネタバレになってしまうので言えませんが、いつか彼の物語が描かれていきます。錠一郎のことのみならず、そのままになっている安子のことや算太のことなど、視聴者の皆さんが気になっているところはちゃんと回収していきますので、楽しみにしててくださいね。
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
毎週月曜~土曜 NHK総合 午前8時~(土曜は一週間の振り返り)
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史 二見大輔 泉並敬眞
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」