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アギーレの描く長編小説はまだ始まったばかり

杉山茂樹スポーツライター

札幌ドームで行われたウルグアイ戦。アギーレの選手登用、起用法を見て、僕は94年に日本代表監督に就任したファルカンを想起した。

その初戦(豪州戦)で、ファルカンも多くの新顔をデビューさせた。前園真聖、名塚善寛、浅野哲也、今藤幸冶、佐藤慶明、岩本輝雄がスタメンに名を連ね、小倉隆史も交代出場でデビューを飾った。ハンス・オフト時代と、メンバーは大きく入れ代わった。

ファン、メディアは、想像以上の変化に、戸惑いを隠せない様子だった。

「何をしてくれるんだ、この人は」といった感じで、過去を壊し、新人を多数登用するファルカンを、懐疑的な目で見つめる人は少なくなかった。

初戦から数えて4か月半後。ファルカンは、アジア大会(広島)に臨んだ。しかし、結果はベスト8。準々決勝で韓国に敗れると、あえなく解任の憂き目にあった。

ファルカンを招聘した、時の強化委員長、川淵さんは、前年、ドーハで行われたアメリカW杯最終予選で、本大会出場を逃した原因のひとつとして、オフトの経験不足を挙げた。そして「修羅場を経験したことがある人物」を求め、ファルカンを招いた。

オフトに足りなかったものをファルカンに期待したわけだが、そのファルカンをわずか数か月で見切りをつけた理由について、川淵さんは「言葉の壁」を挙げた。そして加茂周氏が次期監督に選ばれることになるのだが、その最大の原因は、ベスト8に終わったアジア大会の結果というより、代表チームに対する考え方の違いだった。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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