シニアが若者へ願う将来の社会への希望と、若者自身が望む社会への希望と(2022年版)
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/fuwaraizo/00280518/title-1643929583063.jpeg?exp=10800)
現状に不満を持つ人は将来それが解消されるような社会を望み、それを果たすために努力をすることになる。シニアは若年層にどのような社会を将来実現してほしいと考えているのか、若年層自身はどのような社会を実現したいと考えているのか。大和ネクスト銀行が2022年1月に発表した「『シニアが考える若年層イメージ』と『若年層の実態』に関する調査2022」(※)の内容から、その実情を確認する。
まずはシニアの考え方を確認したのが次のグラフ。なお見方を変えればこの回答は、現在社会における不満点をも意味する。現在その点において不満があるからこそ、将来は変えてほしい、なくしてほしいと考えるからだ。
![↑ 若年層に将来実現してもらいたいとシニアが考えている社会(複数回答、上位陣)(2021年)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/fuwaraizo/00280518/image-1643929609279.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
トップは「戦争のない社会」で61.2%。回答者に太平洋戦争経験者はさすがにいないだろうが、経験者から直接話を見聞きした人は多いだろう。また報道などで世界各国の戦争実情を見聞きすることもあるし、日本周辺でもきな臭い話は多々ある。それらに気をもむ、不安になるようなことがない社会を望むのは、強い影響を受けているであろうシニアには当然の話かもしれない。
次いで「いじめ・ハラスメントのない社会」が58.8%。中には当事者もいるかもしれないが、むしろ報道などで見聞きした事案に気をもみ、嫌悪を覚えた結果だろう。
そして「誰もが働きやすい社会」が52.2%、「貧困のない社会」と「出産や子育てがしやすい」が48.0%。回答者自身が苦痛を実経験済みかもしれないし、自分の周辺に苦しんでいる人がいるかもしれない。身近な苦悩を経験し、あるいは見聞きして、それがない社会を望むのは当たり前のこと。
一方で若年層自身の望みを見ると、「誰もが働きやすい社会」が39.4%とトップにつく形となった。
![↑ 若年層自身が将来実現させたいと考えている社会(複数回答、上位陣)(2021年)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/fuwaraizo/00280518/image-1643929629484.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
快適な労働環境の下で自分が望む仕事ができるような社会は、皆が望むものに違いない。特に就業に苦労しているであろう若年層には、自分が直接関係する話であり、切実なもの。多くの人が望んでいるのも納得できる。切実さの観点で、シニアが望んでいる以上の優先順位となるのも当然だ。
次いで「いじめ・ハラスメントのない社会」「出産や子育てがしやすい社会」が続くが、これも「誰もが働きやすい社会」同様、若年層の現状が望まれていない状況であるからこそ、将来実現させたいと考えているのだろう。つまり若年層は現状を、いじめやハラスメントが多々見受けられ、あるいは自分自身も体験しており、出産や子育てがしにくいと認識しているわけである。
シニアと若年層の回答を比較すると、「いじめ・ハラスメントのない社会」「誰もが働きやすい社会」「出産や子育てがしやすい社会」のような、社会全体の問題として見聞きすることが多いものはともに上位にあり、認識が一致しているのが確認できる。ただし序列としてはシニアと若年層との間に違いがあり、本人への関与度合いでウエイトが変わってくるようだ。
他方「戦争のない社会」はシニアと若年層との間に大きな違いがある。どれだけ現実味があるか、本人の認識が差を生み出しているのだろう。
目指す将来社会へのイメージに違いがあれば、例えば国の予算の配分や研究投資といった今後の社会を作り上げていく上で必要となる決定のような、関連する話において意見の行き違いがシニアと若年層との間で生じることになる。悩ましい話には違いない。
■関連記事:
【「これから優先的にお金を使いたい」シニアが想う対象は?(2015年)(最新)】
※「シニアが考える若年層イメージ」と「若年層の実態」に関する調査2022
2021年12月3日から5日にかけて20~29歳の男女(学生除く、若年層)と60~79歳の男女(シニア層)に対しインターネット経由で行われたもの。有効回答数は若年層、シニアそれぞれで500件ずつで、個々の層における男女比は1対1。調査協力会社はネットエイジア。
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