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「一弱多弱小」の政治状況のなかで、年初に思うこと

鈴木崇弘政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー
日本はどこに向かうのか(写真:ロイター/アフロ)

最近の政界状況は、「一強多弱」といわれることが多い。だが、本当にそうだろうか?

筆者は、「一弱多弱小」なのではないかと考えている。それは、現在の政治や政党全体に力強さを感じないからである。

筆者は、1970年代中頃から、何らかの形で政治や政策に関心を持ったり、それに近い場所にいたりあるいはそれに関わる立場にあった。政治自身も、その頃以降から従来の政治や行政中心の政策形成では、社会の変化やニーズに即した対応ができにくくなり、その状況に対応していくために、政党再編、政治の変革、行政制度の改革など様々の試みを行ってきた。

その様々な改革や試みは、個々すべてがうまくいったわけではなかったが、当時はそれらの中から、日本の新しい政治や社会の動きが必ずや生まれてくるということへの大きな可能性と確信がもてた。だから、個々の試みがたとえうまくいかずとも、次にはいい方向に向かうのではないかという期待を持ち続けることができた。

これは、決して筆者だけの気持ちではなく、多くの日本国民の間で共通の気持ちだったのではないか。その期待への最大値は、2009年の総選挙で民主党が大勝し、戦後初の本格的な政権交代につながった。その時までの政治や政党は、全体としてみれば国民からすれば、強い対応すべき相手(別の言い方をすると、熱い支持と強い反発や不満を受けていた)であり、日本社会を変革できると期待できる(誤解か幻想だったかもしれないが)存在であったのだ。それは、肯定的にしろ、否定的にしろ、国民からの強い期待を受けていたことにほかならない。

ところが、その強い期待のもとに成立した政権が、政権運営で混迷・低迷し、失敗すると、国民からの同政権への期待は急速に低下し、政権の再交代が起きた。だが、その新しい政権や政治への期待は、2009年の政権交代以前とは大きく異なった。政治や政権への期待は冷めたまま。政治は何でもいいから、きちんと政策をやり、経済や生活をなんとかしてくれという、強い支持というよりも、冷めた期待というか冷えた思いだけの状態にあり、その状態が現在も続いているのである。

世論調査によれば、現安倍政権は、確かに成立後すでに4年が経過するが高い支持率を得た状況にある。だが、それは、国会には、与党を脅かす野党が存在せず、与党内にはポスト安倍になる対抗馬もいず、国民からすれば、生活もそれほど改善されているとはいえないが、悪くはない現状では、正に安倍政権や与党支持以外の選択肢が存在しないがゆえに、致し方なく消極的に支持しているに過ぎない状況、消極的なベターな存在であるにすぎないのだ。

つまり、与党も「強い政党」でなければ、安倍政権も「強い政権」では決してないのだ。要は、社会に起きつつある問題や課題(冷戦構造が終わり、グローバル経済の進展、大きな国際的変動、科学技術などの大きな変容などのなか、社会も時代も大きく変わりつつあり、新たなる問題や課題は山積つつある)に果敢に挑戦し、対応していく「強い政治」ではないということだ。そして、野党はその与党よりもさらに弱い。その意味からも、今の日本の政治は、正に「一弱多弱小」なのだ。

人類の歴史を見ても、熱狂の中での政治選択は必ずしもいい結果を生んではいないのが事実ではある。だが、民主主義社会においては、それなりの選択肢がいくつかあり、それらに対する議論や競争があり、選択されていくプロセスが生まれるべきだ。だが、残念なことに現在の日本の社会や政治はそのような状況にはない。現時点では、経済が当面は大きな問題なく(今後の社会を考えると、将来に備えて、今対処していくべき問題は日々生まれ、拡大しているのだが)回っているので、大きな問題は生じていないが、国際的なカオスや経済的混乱などが万一起きた時には、その社会的不満や歪みが日本社会を誤った方向にもっていく危険性もある。その意味で、相対的に政治が安定している今だからこそ、現在そしてこれからの日本が抱える大きな問題や課題に、安倍政権や政府自民党はぜひ取り組んでいただきたい。野党も多様な選択肢を提示し、さまざまな議論が生まれ状況をぜひ創り出していただきたい。そして、その中から新しい日本を創り出していってもらいたいものだ。

政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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