トランプ前大統領の「ハイチ移民がペットを食べている」発言にみるネット社会の政治 #専門家のまとめ
9月10日の米国大統領選挙のテレビ討論会で、共和党の大統領候補トランプ氏が発言した“移民がペットを食べている”という根拠ない情報は、日本で考えられている以上に、米国社会で拡散されている。同情報は討論会の前からトランプ氏に近い政治家やインフルエンサーが拡散していたようだが、討論会以降は反トランプ陣営の間でも皮肉や批判を込めた動画等で情報が拡散されている。この件は、ネット社会の政治を考える上での重要な実例を示している。
ココがポイント
The Kiffness - Eating the Cats ft. Donald Trump (Debate Remix)
The Last Dog in Springfield (Donald Trump "they're eating the dogs" song parody)
エキスパートの補足・見解
この件における米国社会で起きている現象は、非常に興味深い。特にSNSやDX化が進行するなかで起きた事象であるということができる。
まず同現象は、米国らしく政治に対する皮肉やユーモアたっぷりで、日本などの社会とは異なる広がりを見せている。日本の政治もこのような遊び心がもっとあっても良いように感じる。
また本件は、トランプ前大統領の不規則というか軽率な発言ということができるが、副大統領候補のバンス上院議員は、この発言を、移民問題を鮮明にするための説明としての発言だとも指摘していて、確信犯として使用している可能性が高い。つまり、発言者の意図などに、発言者本人も国民・有権者も留意する必要があることを示している。
そして真偽はともかく(本件の発言は根拠はないようだが)、SNS社会では、このような発言に関する情報が短期間で、広範囲に拡散し、政治状況にも影響を及ぼし、社会的な議論の対象となり、国民・有権者からの評価に影響することがありうるということである。
以上のことからもわかるように、SNS時代における政治において、政治家も国民・有権者も、発言や情報に対する意味や影響力の理解およびリテラシー等を的確に持ち、対応していかないと、思わぬ影響や結果になることを自覚する必要があることを、本件は示しているといえよう。