井上尚弥VSドネア 天才ボクサー須佐勝明の予想「序盤で決まる」その真意とは
ロンドン五輪で、もっともメダルを期待された天才ボクサーがいる。元アマチュアボクシング日本代表の須佐勝明(35)だ。
須佐氏は福島県出身で、2012年ロンドン五輪フライ級代表として出場している。
当時の日本代表のチームメイトには3階級王者の井上尚弥(26=大橋)、ミドル級世界王者の村田諒太(33=帝拳)もいた。
井上尚弥VSドネアの試合予想
ーーー11月7日に行われるWBSS決勝戦で、元チームメイトの井上尚弥選手が、5階級王者のノニト・ドネア(フィリピン)と戦いますね。須佐さんの勝敗予想はどうですか?
須佐:序盤で決まると思います。
ーーー序盤ですか。
須佐:あくまで予想です。ドネアは36歳。もう若くないので慎重に試合を進めるでしょう。パンチ力も落ちているので、しっかりと要所要所で打ち込んでくると思います。
井上選手が、「右のパンチ」もしくは「左フック」で倒すのではないでしょうか。
ーーー「右のパンチ」「左のフック」どちらが強いですか?
須佐:どちらも強いです。利き手だったら左フックが素晴らしいですね。
ーーー前回の試合でも左フックで倒していました。
須佐:そうですね。体幹がしっかりしているから、強いパンチが打てるのだと思います。
強さの秘訣
ーーー井上選手とは日本代表チームの合宿で一緒だったと聞いています。様々なトレーニングを行ったと思いますが、彼の身体能力はどうでしたか?例えば走るのが速いとか筋力が強いとか。
須佐:普通でした。
ーーー意外ですね。普通ですか。
須佐:はい。フィジカルが非常に強い選手というわけではないです。
ーーーそうなると、やはり「ボクシングの才能」に恵まれているのでしょうか。
須佐:そうです。例えば、遠い距離から一気に強いパンチを打ち込む。これもボクシングならではの才能でしょう。
ーーーそうですね。
須佐:それに、小さい頃から何万回も打っているので、型が完璧にできています。
そういう点も井上選手の強みです。
ーーー弱点はありますか?例えば須佐選手が戦う場合どうしますか?
須佐:サイドですかね。正面だと勝てないと思います。
ーーーそうですね。
須佐:こちらがサイドに動いて、井上選手が攻撃したところでカウンターを打つしかないです。
ガードしてきたらシチュエーションに合わせて戦うしかありませんが、厳しいと思います。
村田諒太について
ーーー村田選手についてはどう思っていますか?
須佐:今回の試合(ブラント戦)もそうでしたが最高です。
ーーー同じ東洋大学ですよね。
須佐:はい。1つ下の後輩です。
ーーー村田選手の試合を観てどう思いましたか?
須佐:タイトルを取ったアッサン・エンダム(フランス)戦、ロブ・ブラント(アメリカ)戦の時も初戦は負けてしまいましたが、再戦でリベンジを成し遂げました。
その勝ち方が「ヒーロー」なのです。とても感動しました。
また、村田選手の力を最大限に引き出せるトレーナーもすごいです。
彼自身も、一回でしっかり修正できるというのは、才能があるからだと思います。
ーーーロンドン五輪、世界選手権も一緒だったんですよね。
須佐:はい、全部一緒です。
ーーー須佐選手から見て、村田選手が変わったと思うきっかけはありましたか?
須佐:そうですね。村田選手は北京五輪が終わった頃に、東洋大学の職員を務め、多くの経験を積みました。
そこから新しい考え方が生まれてきたのだと思います。
村田が覚醒した理由
ーーー村田選手は、ロンドン五輪の前年の世界選手権で銀メダルを取りましたね。
あの大会の結果が、ロンドン五輪金メダルにつながったように感じました。
須佐:北京五輪が終わって、ロンドン五輪の採点では「しっかり打つ事」が重視されるようになりました。
採点の傾向が変わり続ける中で、ルールにあったボクシングスタイルで戦う事ができたからだと思います。
また村田選手はしっかり基本もできていて、試合でのプレッシャーの掛け方や、ブレないガード、加えてパンチ力があります。
ーーー先輩としても、後輩の村田選手には頑張って欲しいですよね。
須佐:もちろんです。
ーーービッグマッチも期待したいです。
須佐:はい。ぜひ東京ドームでやってもらいたいです。
ーーーそうですね。では、最後にアマチュアボクシングの魅力を教えてください。
須佐:アマチュアの試合は、3分3ラウンドで勝敗が決まります。
短いラウンドなので、目の離せないスピーディーな戦いが見られると思います。
東京オリンピックでは、日本人選手もたくさん出場するので楽しみにしていてください。
須佐勝明(すさかつあき)
(1984年9月13日35才)
福島県会津若松市出身 現 会津若松市観光大使
東洋大学体育会ボクシング部OB会・会長
日本ボクシング連盟強化委員会・委員
アジアボクシング連盟コーチ委員会・委員
戦績 180戦155勝25敗
2006年、2010年アマチュアボクシング部門
最優秀選手賞
国際大会戦績
2006年タイキングスカップ バンタム級銅メダル
2006年ドーハアジア大会 フライ級 銅メダル
2010年広州アジア大会 フライ級 銅メダル
2010年インドネシア大統領杯フライ級金メダル
2011年カザフスタン大統領杯バンタム級金メダル
2012年アジア選手権 銅メダル
2012年ロンドンオリンピック フライ級出場