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『不滅の恋人』のユン・シユンも!! 韓国時代劇でブレイクする若手俳優が多い理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
『不滅の恋人』公式サイトより。右がユン・シユン

毎週日曜夜にNHKで放送されている韓国時代劇『不滅の恋人』。

韓国では『TV朝鮮』というケーブルチャンネルでありながら話題を集めた作品だけに、日本でも毎週放送を楽しみにしている人は少なくないだろう。

今夜放送される第8話では、イ・フィが戦死したとの偽りの報告をソン・ジャヒョンが聞かされるが、イ・フィ役を務めている俳優ユン・シユンは、『製パン王キム・タック』で大ブレイクした俳優。近年、時代劇で再び存在感を示している俳優だということをご存知だろうか。

ユン・シユンは除隊後の2016年に『魔女宝鑑~ホジュン、若き日の恋~』で時代劇に初出演すると、『不滅の恋人』『緑豆の花』で熱演を繰り広げた。ユン・シユンを“時代劇職人”(『Newsen』)と表現する韓国メディアもあるほどだ。

実はユン・シユンのように、時代劇を通じて存在感を示した俳優は少なくない。

離婚が大きな話題になったあの俳優も…

例えば、最近は女優ソン・ヘギョとの離婚で話題を集めたソン・ジュンギだ。

(参考記事:「思い返すとあれが決定打だった」…関係者が目を疑ったソン・ヘギョの“ある行動”が再注目

彼は『トキメキ☆成均館スキャンダル』や『根の深い木』で、しっかりとした演技力を見せ、俳優としての地位を確固たるものにした。その後の活躍は『太陽の末裔』など、日本でも知られているところだろう。

また、歌手やバラエティ番組で活躍していたイ・スンギも、『九家の書』で時代劇デビューし、それが好評を得たことで俳優活動の幅が広がったといえる。そんな『九家の書』で共演した女優ペ・スジと、現在はドラマ『バガボンド』で共演しているのだからおもしろい。

『星から来たあなた』で知られるキム・スヒョンも、時代劇でその名を上げた最たる例だろう。

韓国で最高視聴率42.2%を叩き出した時代劇『太陽を抱く月』をきっかけに、存在感を大きく示した。前出の『星から来たあなた』はもちろん、韓流スターが一堂に会した映画『10人の泥棒たち』で主役級のキャラクターを務めるなど、成長著しかった。

こうした傾向は2019年に入っても続いており、『王になった男』のヨ・ジング、『新入史官ク・ヘリョン』のチャ・ウヌ、来る10月4日から放送予定の『私の国』ウ・ドファンなどがいる。

なぜ“時代劇”なのか

それにしても、なぜ彼らは時代劇の出演を選ぶのだろうか。

ひとつは、時代劇の制作費が関係しているだろう。

一般的に、韓国での平均的なドラマ制作費は3~6億円といわれている。対して時代劇は10億円を超えることも珍しくない。そのためテレビ局や制作会社、スポーンサーは時代劇の完成度に厳しい視線を向ける。逆にいえば、作品が成功した場合、それが俳優の評価に直結するというわけだ。

次に、時代劇には現代劇にはない難しさがある。

時代劇はセリフのトーンや表情などが現代劇とは大きく違うため、たしかな演技力がない俳優が演じると違和感が顕著で、視聴者からの容赦ない非難が殺到する。そのため時代劇に挑戦する俳優たちは、現代劇よりも多くの時間を作品に割くといわれている。

難しさがあるがゆえに、時代劇で存在感を示すことができた若手俳優は、一気にスターダムを上がることができるのだ。

そして韓国の時代劇は、幅広い層に見られるジャンルという点も影響しているかもしれない。

近年、時代劇の人気は年配層だけではなく、歴史を学ぶという観点や人気俳優が出演しているということから、学生をはじめとする若者にまで拡大した。俳優たちを品定めする視聴者の目が増えたことにより、幅広い支持を得られる可能性があるわけだ。

批判される可能性も高いが、得るものも大きい。時代劇は俳優にとって“ハイリスク・ハイリターン”な選択といえる。だからこそスターを目指す若手俳優や存在感を示したい俳優が、時代劇に挑戦するのだろう。

いずれにしても、ユン・シユンが時代劇を通じて、さらなる飛躍を果たしたことは間違いない。そんな彼が出演する『不滅の恋人』を楽しみたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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