なぜ山形県の10代投票率は全国首位なのか?【衆議院議員選挙】
10月19日に公示され、10月31日に投開票が行われる衆議院議員選挙。
選挙のたびに、「若者の低投票率」が指摘され続けているが、一向に改善せず、むしろ低下を続けている。
ただ、都道府県別で見ると、その差は大きい。
前回2017年衆院選の10代投票率は40.49%だったが、首位の山形県は47.24%と、7ポイント平均を上回り、最下位の徳島県(31.59%)とトップの差は15.65ポイントとなっている。
ちなみに、山形県は、全世代でも64.07%と全国1位となっている(全体の平均は53.68%)。
なぜ、山形県の投票率は高いのか?
いくつかの特徴的な取り組みから分析を試みたい。
県の審議会に「若者枠」を設置
まず、政治参加の分野において、山形県が進んでいるのは、投票だけではない。
行政において具体的な施策を議論する全ての審議会等に若者委員(20-30代)を1名以上登用することを目標としており、積極的に若者の意見を行政に反映させている。
実際、その達成率は徐々に上がり、令和1年7月時点で100%に達している。
遊佐町「少年議会」で子ども代表を選出
次に取り上げたいのが、山形県遊佐町で行われている「少年議会」だ。
これまで18年間続いている「少年議会」は、遊佐町在住・在学の中学生と高校生で構成され、遊佐町の若者の代表として「中学生・高校生の政策」を議論し決めていく。
こうした「子ども議会」は全国で行われており、その存在自体は珍しくない。
ただ、遊佐町の「少年議会」は、大きく二つ他の地域の取り組みとは異なる。
一つ目が、実際の選挙を通して代表選出を行うというものだ。
一定期間、少年町長、少年議員の立候補を募集し、定数を超えた場合は、選挙を行う。
その有権者は中高生で、各学校で、実際に選挙で使用する投票箱を使用し、本番の投票さながらに投票を行う。
選挙を通して、自分たちの代表を選び、町の課題について議論し、実際に解決策を提示するところまで実施する。
こうして実際の選挙の有権者になる前から、民主主義を体験し、その意義や、政治の重要性を学んでいく。
子どもを「参画状態」に
二つ目が、実効性の伴った取り組みということだ。
他の地域で行われている「子ども議会」は、単なる見学や模擬的なものであることは珍しくない。
しかし遊佐町の「少年議会」は、実際に町の施策に反映され、自分たちの政策を実現するための独自の予算(45万円)も持っている。
同様に、山形県金山町では2年に1度、高校生による議会を招集し、選挙で選ばれた高校生議員と議長が実際の議場で町長以下、町幹部に質疑する取り組みを行なっている。
実際、通学時のバス料金の負担軽減を求めた際には助成金をすぐに予算化するなど「模擬」にとどまらない事業となっているという。
この根底には、平成18年に町が制定した「金山町自律のまちづくり基本条例」の考え方がある。
第12条には、「満20歳未満の青少年及び子どもは、それぞれの年齢に相応しい町づくりに参加する権利を有する」と規定してある。
なお、山形県の中でも金山町の投票率が最も高く、2017年衆院選の投票率(全世代)は78.44%になっている。
このように、山形県の取り組みは、「子どもの参画のはしご」でいう、「参画状態」になっており、投票率を上げるヒントになるのではないだろうか(逆に多くの自治体の取り組みは「非参画状態」となっている)。
関連記事:主権者として子どもが政策立案過程に参画する欧州の取り組み(子ども議会、子ども・青少年フォーラム)(室橋祐貴)
投票に行った18歳の8割は親も投票
また、山形県は、全世代でも最も高い投票率になっているのも大きい。
山形県選挙管理委員会の調査によると、「これまでのアンケートで投票に行った18歳の8割が親も投票しており、逆に親が行かなかった場合は投票率が5%以下だった」(永沢康弘書記長補佐)(引用元:河北新報)と、親世代も政治に関心を持ち、それが子どもにも引き継がれていることがわかる。
本記事で紹介した取り組み以外にも、山形県の選管に、高校生が「1日選挙管理高校生委員長」として啓発活動に参加してもらう取り組みを実施したりしているが、やはり重要なのは、そもそも政治や民主主義の重要性を肌で感じてもらう機会を増やすことだろう。
また周りの友人や大人もみんな投票に行っているという「当たり前」感をどう醸成できるかも重要だ。
毎回選挙前に報道やキャンペーンが盛り上がるが、やはり重要なのは、常日頃からの取り組みであり、各自治体でこうした取り組みが広がることを期待したい。