アップル、今度は“スマートホーム”に進出、「iPhone」を利用するホームセキュリティシステムなど
英フィナンシャル・タイムズの報道によると、米アップルは“スマートホーム”あるいは“スマートハウス”などと呼ばれるホームオートメーションシステムを開発しているという。
アップルは6月2〜6日に米サンフランシスコで世界開発者会議(WWDC)を開催する。これには同社の基本ソフト(OS)やハードウエアと連携するアプリ、サービス、機器などを手がける外部開発者が多数参加する。
アップルはその会場で、ホームオートメーションシステムのソフトウエア基盤とその仕組みを発表する計画だという。
これが実現すれば、アイフォーン(iPhone)やアイパッド(iPad)などを使って操作、制御できる照明システムやホームセキュリティシステムが登場するという。
ソフトウエア基盤、外部企業も利用可能に
とは言ってもアップルが外部企業と照明システムなどを共同開発するわけではないようだ。同社が提供するのはあくまでもソフトウエア基盤。
それを採用するメーカー各社が、それぞれアイフォーンなどに対応する機器を開発、販売する。そうした仕組みをアップルは作りたい考えだとフィナンシャル・タイムズは伝えている。
アップルにはこれと似た実例がある。アイフォーンと連携する車載システム「カープレイ(CarPlay)」と、近距離無線通信機能「アイビーコン(iBeacon)」だ。
前者では、大手自動車メーカーが今年発売する新モデルで、アイフォーンをコネクターでつなぐと、ハンドル上のボタンを押して音声アシスタントの「シリ(Siri)」を起動させたり、ダッシュボードのスクリーンをタッチしてアイフォーンのアプリを利用したりできるようになる。
アップルによるとこのカープレイを採用する自動車メーカーには、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、三菱自動車、富士重工業、スズキがある。
海外メーカーでは、ドイツのメルセデス・ベンツとBMWグループ、米フォード・モーター、米ゼネラル・モーターズ(GM)、スウェーデンのボルボ、英ジャガー・ランドローバー、フランスのプジョーシトロエングループ、韓国の現代自動車も採用を決めている。
後者のアイビーコンは、屋内商業施設向けのサービスとして、まずアップルが自社の店舗「アップルストア」に導入した。例えば顧客が店舗に入ると、地図などの店内情報や、割り引きクーポンなどをアイフォーンで受け取れる。またある商品に近づくと、その商品の写真、動画、価格、評価、ソーシャルメディアの情報などを表示する。
店側がセンサー端末をあちらこちらに設置しておけば、細かな商品情報や特典を顧客に提供できるほか、店内の顧客の行動パターンを把握でき、マーケティングに利用できる。アップルはこのサービスを米国254カ所のアップルストアで展開している。米百貨店大手のメーシーズやJ.C.ペニーでもこの技術を使ったサービスの実験を行っている。
認定マーク制度、スマートホームにも
アップルは同社製品に対応し、同社が定める性能基準を満たす電子アクセサリー製品に「Made for iPhone」といった認定マークを付与している。
フィナンシャル・タイムズによると、同社が新たに展開するスマートホーム基盤にも同様の認定マーク制度を導入する。そうした関連製品は、アップル直営の実店舗やオンラインストアで販売されると同紙は伝えている。
サムスンとは異なるアプローチ
こうして見ると、アップルの狙いは、自社のハードウエアやOSを取り巻くエコシステム(生態系)の拡大と言えそうだ。米IDCが公表した今年のスマートフォン年間出荷台数予測は、前年比19.3%増の約12億台で、39.2%増と高い伸びで推移した昨年に比べて鈍化する見通し。
そうした中、自社の技術と連携する機器やシステムを外部企業に開発してもらい、iOSプラットフォームの利用拡大を図る。アップルはそんなアプローチを考えているようだ。
これは、冷蔵庫や洗濯機などのスマートホーム家電を自ら手がける韓国サムスン電子とは異なる手法だ。
(JBpress:2014年5月28日号に掲載)