現在の世界情勢を日本が外国人材を受け入れるチャンスに活かそう
「未来を創る財団」が、 11月12日に外国人受け入れに関する「東京ラウンド」を開催した。
同財団は、財団の研究会「定住外国人政策研究会」が、「政策提言:定住外国人受け入れ」ビジョン-明るい未来を創るために-」を、昨年発表し、政府関係者に手交した。その要約版もある。
同財団は、この提言の公表を受けて、今年に入り、愛知県、静岡県浜松市、秋田県・大潟村及び仙北市、兵庫県豊岡市、東京都新宿区、長崎県大村市の6か所で外国人受け入れに関する地域意見交換会を開催し、そのまとめとして、今回の「東京ラウンド」を開催したものである。
同ラウンドには、山本幸三・内閣府特命担当大臣(地方創生・規制改革)、古谷一之・内閣官房副長官補、藤原豊・内閣府審議官、根岸功・法務省入国管理局企画室長、宮川昭・厚生労働省総括審議官ら外国人人材の問題に関わる政府関係者、高橋浩人・大潟市長、真野毅・豊岡市副市長、門脇光浩・仙北市市長、大槻隆・大村市市長公室長、石塚良明・浜松市国際課長ら各地域で政策対応をされている方々、さらに長崎洋二・ナガサキ工業社長、西村総一郎・西村屋社長、太田正之・浜松市立和田東小学校教諭、北川裕子・のしろ日本語学習会代表、小田垣栄司・ノヴィータ会長らの職場や現場で外国人の方々と日々接せられている方々や有識者・専門家が一堂に集まった。
そして、それらの方々からは、日本における現在取られようとしている外国人材に対する政策やその方向性および外国人材に関わる問題と課題が同じ土俵に出され、議論が行われた。
筆者の知る限りでは、この会合は、そのように政官産学が一堂に会して、外国人材の問題や課題を議論した、日本ではじめてあるいは数少ない機会の一つであったのではないかと思う。
同会合では、地域や職場の現場からは、「漁業は(外国人)実習生なしでは成り立たない」というように、人材不足の中、外国人人材の受け入れと活用の必要性が切々訴えられていた。また参加者の何人かが、「外国人を単に安い労働者として考えるだけではダメだ。生活者として考えることが必要である」という意見があったが、これに対して政府関係者から、「今回の議論を聞いて、外国人人材が必要な地域では、彼らを『生活者』として考えていることがわかってよかった」という興味深い指摘もあった。
このような議論を聞いていると、日本における「外国人人材の問題」の議論(特に政策において)はこの20年同じことを繰り返してきただけで、深まったり、ほとんど実現化してきていないという意見も出ていたが、日本におけるその実態は実は既に大きく変わってきているのだということを実感せざるを得ない。
日本の経済力が低下し、賃金水準も国際的にも相対的に下がってきており、外国人材にとって、日本の魅力は低下してきている。また少子高齢化により人口、特に生産年齢人口は今後急速にさらに低下し、そのために、現在のままでは日本の経済力等はさらに急速に縮小し、国力も下がり、日本社会の魅力がさらに下がることが危惧される。
このような状況であるが、2020年の東京オリンピック開催までは、日本は、様々な問題を抱えながらも、何とかその力や魅力は保持できることが予想される。その意味では、そのイベント開催までを、極端にいえば日本のラストチャンスと考えて、現在の日本が有するあらん限りのポテンシャルと可能性を活用し、日本のヴァージョンアップを図る必要がある。外国人人材の受け入れとその活用は、その際の有力な方策の一つとなるはずだ。
米国では、移民に厳しい対応をとることが予想されるドナルド・トランプ氏が次期大統領に就任することになった。また、ヨーロッパでは、難民や移民問題もその一つの大きな要因と考えられるイギリスのEU離脱問題である「ブリキジット(Briexit)」や外国人排斥を主張する右翼勢力が力を伸ばすなどの問題も起きてきている。
このような状況において、日本も同じような流れに乗るべきではない。むしろこの状況を活かして、日本に外国人材を引き付けられるように、この状況を日本にとって有効かつ有利な動きや流れをつくりだしていくチャンスにしていくべきではないだろうか。
「未来を創る財団」は、今後今回の「地域意見交換会」や「東京ラウンド」の成果を基に、政策提言やその実現に向けて活動をしていくそうである。
今後を期待して、協力していくと共に、注目していきたい。