ビッグモーター不正請求 真の「被害者」は無事故で任意保険料を払い続けてきた優良ドライバーだ
7月20日、私は『ビッグモーター、CM中止 保険金不正横行、メディアに通知(共同通信) - Yahoo!ニュース』という記事に、以下のコメンテータ-コメントを投稿しました。
大変悪質な行為です。偽装事故を起こして保険金を不正に請求し、詐欺罪で検挙されたケースを何度か取材したことがありますが、それと同じではないでしょうか。
またこの問題は、傷をつけられた車の所有者だけが被害者なのではなく、広い意味で、自動車保険に加入しているすべてのユーザーに影響を与える可能性があります。
今回の不正請求が何年前から、どのくらいの規模で行われてきたのかは、現時点ではわかりませんが、保険金支払額のアップは、最終的には保険料の料率アップにつながります。
例えば車両保険の場合「車両料率クラス」というものが設けられており、車種ごとに料率が異なります。保険金の支払い額が高額な車や、事故率の高い車は、その成績に応じて料率クラスが見直され、保険料に反映されるのです。
この件については、改めて取材をしたいと思いますが、任意保険をかけているユーザーは我が事として、しっかりと注視していく必要があるでしょう。
つまり、この不正請求問題における「被害者」は、ビッグモーター社に修理や整備を依頼した自動車ユーザーだけではなく、任意の自動車保険をかけているすべての契約者である可能性が大だ、という見解です。
■保険金支払いが増えれば、任意保険料は上がる
車やバイクを所有する人の多くが、自賠責保険の上乗せとして加入している任意の自動車保険。保険料は、車種、運転者の年齢、運転者の範囲、保険金額や保険内容、等級(無事故割引)等によって細かく規定されています。
この自動車保険料の基礎となる数値を算出しているのが、損害保険料率算出団体に関する法律(料団法)に基づいて設立された非営利の民間法人「損害保険料率算出機構(損保料率機構)」です。
同機構では、会員である各損保会社から寄せられる大量の保険金支払いや契約のデータを基に、毎年「参考純率」を算出しています。
今回、ビッグモーターが過剰に請求したとされる修理代金は「車両保険」や「対物保険」から保険金として支払われたわけですが、その支払いデータは、損保各社から損保料率機構に送られ、そして、集められたデータは、翌年の参考純率算出の材料となってきたのです。
(参考)
自動車保険型式別料率クラスのしくみ~2022年1月1日以降~ (giroj.or.jp)
■これまで払ってきた任意保険料は適正だったのか?
損保会社は今、不正請求によって過剰な保険金を支払わされた「被害者」のような立場をとり、ビッグモーター社に対して損害賠償請求の準備をしているそうですが、「支払保険金がアップすればそれに応じて保険料も引き上げる」という構造の中、業界は守られています。
そんな中、視点を変えれば、無事故を続け、保険金を請求することなく、まじめに保険料を払い続けてきた多くの自動車保険契約者こそが、今回の問題において真の「被害者」なのではないでしょうか。
今回、損保会社は一部の車両事故において、ザルのような査定をしていた事実が明るみに出ました。
一方、人身事故では、ときとして被害者を苦しめる厳しい査定をしている現実がある……。
私はずっとその理不尽な業界の体質に問題意識を持ち、取材を続けてきました。
■損保料率機構が今後の対応について発表
8月4日、損害保険料率算出機構はこの問題について、以下のコメントを発表しています。
「ビッグモーター社の不適切な保険金請求に関する弊機構の対応について」
『今般、ビッグモーター社(株式会社ビッグモーター、株式会社ビーエムホールディングス、株式会社ビーエムハナテン)による不適切な保険金請求により、車両修理にかかる保険金が過大に支払われたケースが多数あった旨の報道がなされております。
弊機構は今後、ビッグモーター社および保険会社等による調査を通し不適切な請求が判明したケースについては保険会社にそれらの報告を求め、参考純率の算定に反映していきます。
なお、この件に関して、対人賠償のみを補償する自賠責保険の基準料率には影響ありません』
しかし、今回の件については、本当にビッグモーターだけの問題なのでしょうか?
自動車修理業界における工賃に、不透明な格差はないのか?
損保料率機構が「不適切な保険金請求」を認識した以上、本件をきっかけにこうした点についても改めて検証し、根本的に見直されるべきだと思います。
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<Yahoo!ニュースは以下>