なぜバルサは強さを取り戻したのか?ガビ、ペドリ、トラオレ...若手と補強選手の融合。
バルセロナが、調子を取り戻している。
バルセロナはリーガエスパニョーラ第29節終了時点で3位に位置。リーガ第30節では、2位セビージャとの上位対決を控えている。
■シャビの就任
今季のバルセロナは低迷していた。シーズン途中に成績不振を理由にロナルド・クーマン前監督が解任され、一時はリーガでの順位を9位まで落とした。
再建に向け、ジョアン・ラポルタ会長が招聘したのはシャビ・エルナンデス監督だった。だが、思い返せば、2021年の会長戦でシャビを監督候補に挙げていたのはビクトル・フォント氏である。ラポルタ現会長ではない。しかしながら、運命がめぐり、レジェンドがクラブに帰還する運びとなった。
「我々には独自の民主的なモデルがある。私は最後の会長選で勝利するという幸運に恵まれた。決断は、ソシオと共に下される」とはラポルタ会長の弁である。
「バルセロナには、特有のプレースタイルがある。ボールを保持して、失った時には素早くプレスを掛ける。我々は常に向上を望んでいる。クレ(バルセロナファン)は決して満足しないからだ。ヨハン・クライフが提唱したスタイルというのは、議論の余地がないものだ。それを全てのカテゴリーで適用する」
そう、ラポルタ会長はクライフ信者だ。クライフイズム(クライフ主義)がチームに植え付けられていなければ、アイデンティティーが不足していると感じる。ゆえに、クーマン前監督とは最後まで折り合いがつかなかった。
■ポスト・メッシ時代
バルセロナは今夏、リオネル・メッシがパリ・サンジェルマンに移籍した。サラリーキャップの問題を抱えていたクラブは、長年にわたり得点源になっていた大エースを放出せざるを得なかった。
当然、「withメッシ」と「withoutメッシ」では、まったく別のチームになる。類稀な決定力を有するプレーヤーが抜け、逆説的にチームにまとまりが出てきた。
無論、これはメッシが悪いという話ではない。だが近年のバルセロナでは、内容が悪いゲームでも、メッシが個の力と創造力で試合を決定付けてしまうというのが常態化していた。メッシがいる限り、この問題を解決するのは難しかった。メッシの存在があると、どうしても彼に頼ってしまうからだ。
バルセロナが最後にチャンピオンズリーグで優勝したのは、2014−15シーズンだ。
マーク・アンドレ・テア・シュテーゲン、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケッツ。シャビ監督が呼び戻したダニ・アウベスを含めれば、あの時の主力は依然として残っている。
そのベテラン勢に、補強の新戦力とカンテラーノが加わった。
とりわけ、今冬の移籍市場で加入したフェラン・トーレス(前所属マンチェスター・シティ)、ピエール・エメリク・オーバメヤン(アーセナル)、アダマ・トラオレ(ウルヴァーハンプトン/レンタル)がチームの力になっている。突破力と決定力が担保されるようになった。
そして、忘れてはならないのはカンテラーノの成長だ。
ガビ、ニコ・ゴンサレス、ロナウド・アラウホらがシャビ監督の信頼を勝ち得ている。“出戻り組”のアダマやエリック・ガルシアを加えれば、エズ・アブデ、イリアス・アコマック、オスカル・ミンゲサ、アレハンドロ・バルデ、アルナウ・テナス、リキ・プッチ、フェラン・ジュグラと「メイド・イン・ラ・マシア」の才能が現在のバルセロナには揃っている。
バルセロナが、再び黄金時代を築けるかは分からない。だが黄金世代が、次の成功を見据えて待ち構えている。
今季、バルセロナは第一にラ・リーガでトップ4入りを果たさなければならないだろう。その目標には近づいており、ヨーロッパリーグでもベスト8まで勝ち残っている。美しく勝利せよーー。クライフの言葉を頭の片隅に置きながら、シャビ・バルサは前進している。