日本代表とも戦った“北のヨン様”がサッカー北朝鮮代表監督!東アジア選手権出場逃すもアジア杯に向け邁進
またもやサッカー北朝鮮代表は、表舞台への切符を逃してしまった。
今月、各国で国際親善試合が行われるなか、朝鮮民主主義人民共和国代表(以下、北朝鮮代表)が姿を現したのが「EAFF E-1サッカー選手権(=東アジア選手権)2019の予選第2ラウンド」。
同大会は11月11~16日まで台北で開催され、北朝鮮代表、香港代表、チャイニーズ・タイペイ代表、モンゴル代表の4チームによる総当たりのリーグ戦で行われた。
来年、韓国で開催される決勝大会(韓国、日本、中国の3カ国は決定)へ進出するためには1位通過しなければならないのだが、最後まで争ったのは香港と北朝鮮の2チームだった。
実力的には北朝鮮が有利とされていたが、実は難敵だったのが香港。両チームともに初戦に勝利を収め、第2戦は直接対決で0-0のドロー。この時点でそれぞれ勝ち点4で並んだが、得失点差では北朝鮮が2点リードして迎え、本大会への切符は最終戦にもつれこんだ。
帰化選手主力の香港に苦戦
ちなみに北朝鮮と香港の試合が拮抗したのは、香港が近年、帰化選手をチームの主力にして強化を図っていることもその理由の一つ。
メンバーにはブラジル出身のFWアレサンドロ・フェレイラ・レオナルド、イングランド出身のFWジェイムス・アンソニー・マッキー、ナイジェリア出身のフェストス・ベイスなど、サブを含めて7人ほど帰化選手をメンバー入りさせており、フィジカル面で多少、押されていた感は否めない。
実際に試合の映像を見たが、体格に恵まれた帰化選手の当たりは強く、かなりやりにくさがあると感じた。総合的な技術や組織力では北朝鮮のほうが一枚上手だったが、何度も得点チャンスを演出しながらも、勝ちきれなかったことが響いた。
最終節では、先に試合を行った香港がモンゴルに5-1で勝利。北朝鮮はチャイニーズ・タイペイに2-0の勝利を収めて、得失点差で並んだが、総得点で1点上回った香港が1位となり、決勝大会進出を決めた。
2017年12月に日本で行われたEAFF E-1サッカー選手権で、北朝鮮は日本、韓国、中国と対戦し、在日コリアン選手のMF李栄直(リ・ヨンジ/東京ヴェルディ)の奮闘もあって注目を浴びたが、来年日本や韓国との直接対決の場を失ってしまったのは残念だ。
柔軟な指導でアジアカップに向け強化
一方で、北朝鮮代表は2022年カタールW杯出場に向け、チーム強化の最中でもある。EAFF E-1サッカー選手権2019の予選で、北朝鮮代表を指揮していたのは、とても見覚えのある人物だった。
元ノルウェー代表のヨルン・アンデルセン監督(現・仁川ユナイテッド監督)が北朝鮮代表の指揮官から退いたのが今年の3月。それから新たにチームの指揮を任されているのが、弱冠35歳のキム・ヨンジュン監督。
さすがにこれには驚いた。
かつて2006年ドイツW杯のアジア最終予選などの国際試合で、在日コリアンの安英学(アン・ヨンハ)や李漢宰(リ・ハンジェ/町田ゼルビア)、鄭大世(チョン・テセ/清水エスパルス)などと共に戦っており、2001年から2011年まで北朝鮮代表として59試合に出場し、7得点を記録した。
2005年の東アジア選手権では、ジーコ監督率いる日本代表を相手にゴールを決めて、1-0で勝利に貢献。中国リーグでもプレーした経歴を持つ。
ちょうど2006年ドイツW杯アジア予選のときは、“冬ソナ”ブームで人気を博したペ・ヨンジュンこと“ヨン様”をもじって、日本のメディアがキム・ヨンジュン監督のことを“北のヨン様”と称していたのを今でも記憶している。
それに、球際やフィジカルの強さが特徴でもある北朝鮮代表選手には珍しく、柔らかなボールタッチと広い視野でゲームに緩急をつけられる選手で、中盤には欠かせない存在だった。
東京Vの李栄直「招集されるためにもJ1昇格を」
現役時代の実績や年齢も若いことから、選手とのコミュニケーションもスムーズにできるだろうし、国内選手だけでなく、海外組への注目も含め、様々な面で柔軟な対応ができるだろうと想像できる。
現在、セリエAでプレーするFWハン・グァンソン(ペルージャ)やオーストリアリーグのFWパク・クァンリョン(SKNザンクトペルテン)なども招集したいと考えているはずだ。
そして、キム・ヨンジュン監督は長らく、安英学や李漢宰ら在日選手と共に代表でプレーしただけに、Jリーグの在日選手にも一目置いているに違いない。これは東京ヴェルディの李栄直にとっても朗報だろう。
来年のEAFF E-1サッカー選手権決勝大会への切符は逃してしまったが、来年1月のアジアカップを控え、北朝鮮代表は強化を進めている。
東京ヴェルディの李栄直も「来年のアジアカップで代表に招集されるように、まずはJ1昇格に向けてプレーオフをしっかりと戦い抜きたい」と意気込んでいる。