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禁煙で乾癬と掌蹠膿疱症リスクが大幅低下!皮膚科医が解説する最新研究

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【禁煙が乾癬のリスクを下げる!韓国の大規模調査で判明】

乾癬は、皮膚に赤みを帯びた発疹や鱗屑(りんせつ:皮膚の表面がポロポロと剥がれ落ちること)が現れる慢性の炎症性皮膚疾患です。遺伝的な要因に加え、喫煙などの生活習慣が発症に関与していると考えられています。

この度、韓国で実施された大規模な調査により、禁煙が乾癬のリスクを大幅に下げることが明らかになりました。国民健康保険サービスのデータベースを用いて、約580万人を対象に、2004年から2021年までの長期にわたる追跡調査が行われました。

その結果、喫煙を続けた人と比べて、禁煙した人は乾癬全体のリスクが9%低下し、特に尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん:最も一般的な乾癬のタイプ)は8%、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう:手のひらや足の裏に膿疱ができる皮膚疾患)は29%のリスク低下が認められました。さらに、禁煙状態を長期間維持した人では、乾癬全体で23%、尋常性乾癬で24%、掌蹠膿疱症で44%、汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん:全身に膿疱が広がる重症型の乾癬)で36%のリスク低下が観察されました。

【喫煙が乾癬のリスクを高める仕組み】

喫煙が乾癬のリスクを高める仕組みとして、以下のような点が考えられています。

1. 喫煙による酸化ストレスの増加:タバコの煙に含まれる有害物質が体内で活性酸素を過剰に生成し、細胞にダメージを与えます。

2. 免疫細胞の活性化:喫煙により、炎症性サイトカインと呼ばれる物質の産生が促進され、慢性的な炎症状態を引き起こします。

3. 遺伝的な相互作用:喫煙が特定の遺伝子の発現に影響を与え、乾癬の発症につながる可能性があります。

特に掌蹠膿疱症では、タバコに含まれるニコチンが汗腺のアセチルコリン受容体を刺激し、好中球や好酸球といった炎症細胞の集積を招くことが指摘されています。

【禁煙による乾癬リスク低減の意義と課題】

今回の研究結果は、禁煙が乾癬の予防に有効であることを示唆しており、喫煙者に対する禁煙指導の重要性を裏付けるものです。一方で、乾癬の発症には遺伝的な要因も大きく関与しているため、禁煙だけでリスクをゼロにすることは難しいかもしれません。また、ストレスや食生活など、他の生活習慣の影響についても考慮する必要があります。

とはいえ、禁煙は乾癬の予防だけでなく、心血管疾患やがんなど、様々な病気のリスクを下げることができる有効な手段です。喫煙者の方は、ぜひ禁煙にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。禁煙外来やニコチン代替療法など、様々なサポート体制が整っています。皮膚の健康だけでなく、全身の健康のためにも、禁煙は大きな一歩になるはずです。

参考文献:

Kim, S. R., Choi, Y. G., & Jo, S. J. (2024). Effect of smoking cessation on psoriasis vulgaris, palmoplantar pustulosis and generalized pustular psoriasis. British Journal of Dermatology, 00, 1-8. https://doi.org/10.1093/bjd/ljae130

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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