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【JAZZ】寝占友梨絵 VALENTINE Special Jazz Live

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
寝占友梨絵 VALENTINE Special Jazz Live
寝占友梨絵 VALENTINE Special Jazz Live

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、ヴォーカリストの寝占友梨絵のホール・コンサート。

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寝占友梨絵(ねじめ・ゆりえ)は2012年に国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器(ピアノ)専修を卒業した新進気鋭のヴォーカリスト。

あれ?

鍵盤楽器=ピアノの専修だったのに、ヴォーカリスト?

……という疑問をもった人も多いかもしれない。

ということで、本人にそのあたりを含めてFacebookのメッセージを使ったインタビューを試みた。

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ーーどうして国立音楽大学を進学先に選んだのですか?

具体的になにになりたかったと考えてのことではなかったと思います。ピアノは小さいころから習い始めましたが、途中でブランクの時期もありました。というか、音大受験を考えた高3までの7年間はレッスンを受けてなかったんです。そういう意味では、真面目に取り組まなかったピアノに対して、一度は向き合ってみようという想いが受験という行動になったんだと思います。音楽をやるうえでクラシックは基本ですし。でも、大学3年から歌、しかもジャズの道を選んでしまったので、結局はちゃんとクラシック・ピアノに取り組めなかったのかもしれないんですが……(笑)。

ーー音大受験はどの時期に決めたんですか?

決意したのが高2の冬でした。しかも音大一本ではなく、一般大学の受験も考えていました。なので、実質的に準備期間は1年ぐらいしかなかったと思います。音大受験をする方が聞いたら「信じられない!」って言われちゃうでしょうね(笑)。でも、おかげでその1年間は自分でも信じられないぐらいピアノの練習をしていたと思います。奇跡的に合格することができましたが、あまりにも基礎が不足していたので、入学してからがタイヘンでした。ただ、受験前から入学後の2年間、ピアノに集中できたことは貴重な経験になったし、真面目に取り組んだおかげでクラシックの楽しさを知ることができました。

ーーピアノのレッスンを受けていなかった7年間は、音楽にあまり興味をもっていなかった?

いえ、音楽自体はずっと好きでした。小学校ではトロンボーンと和太鼓、中学では1年間だけでしたけど吹奏楽でトロンボーン、高校に入るとオケでコントラバスを弾いてました。

ーージャズとの出逢いは?

母のお腹にいるときから聴いていたらしいんですが……(笑)。母の話では、赤ん坊の頃から私を抱えてジャズのライヴを聴きに行っていたらしいです。泣かないでちゃんと聴いていたそうですよ(笑)。

自分でジャズを意識したのは、おそらく小学校低学年ぐらいだったんじゃないかと思います。印象に残っているのは、母がよく私を連れて行っていたジャズ好きの集まりのことですね。そこに私が“ピアノのお兄ちゃん”と呼んでいたお医者さまがいて、その人が弾くジャズ・アレンジの「チューリップ」がいつも聴いていた同じ曲とは思えなくて、ジャズを意識するようになったんじゃないかと思っています。

ーーJポップなどは聴かなかったんですか?

同級生のあいだではSPEEDとかモーニング娘。が流行ってましたけど、私はついていけなくて……(笑)。小学校5年生のときに「好きなミュージシャンは?」と聞かれて、「サッチモ!」と答えていたような子でした。

ーー国立音楽大学のジャズ・コースを選んだ理由は?

入学直後にジャズ・コースの案内を見て、迷わずこれを選ぼうと決めていました。もともとクラシックのピアニストになろうと思って入学したわけではなかったので……。ほかに興味をもてるコースがなかったからジャズを選んだというのが正直なところです(笑)。

ーーとは言え、ジャズに魅力を感じていたことはたしかなんですよね?

“ピアノのお兄ちゃん”の演奏を聴いて、「チューリップ」のようなシンプルな曲でもまったく別の世界を表現できる、しかも即興でできるというのはすごいですよね。曲に隠れていた魅力をどんどん引き出したり、同じ曲でも演奏者によってぜんぜん違うというのもおもしろいなぁと思っていました。個性が出せる音楽なんだな、って。クラシックって、個性を出すのが難しいというか、出し過ぎると批判の対象になるから面倒くさそうというか(笑)。でも、ジャズは“個性を出してナンボ”ですよね。それから、演奏者同士、音で会話できるというのもジャズの大きな魅力のひとつだと思います。

ーー寝占友梨絵さんは弾き語りからジャズに入られたということですが、そのスタイルは自分にとって合っている、もしくは“武器になる”と思いましたか?

んー、難しい質問ですね……(笑)。実は、“ピアノを弾くこと”自体が、まだまだ私のなかでは苦手分野なんです。「ピアノ科を出ているのに、なぜ?」とよく聞かれるのですが、自分ではピアノが下手だという意識が強いので、歌だけ歌っているほうが自由になれて、気持ちよくて楽しいんです。ただ、ピアノを弾きながら歌を歌えるということが私の“武器”であることは、間違いないとは思っています。

ーー浅草ジャズコンテスト(第34回)に出場した際の講評で「楽器をしている人の歌い方」と指摘されていましたが、自分ではどのように意識していますか?

スキャットにそれがよく表われていると言われることがよくあります。そういうときには、ピアノをやっていてよかったなぁと思いますね(笑)。

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では、行ってきます!

●公演概要

2月11日(水・祝) 開場19:00/開演19:30

会場:渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール(渋谷)

出演:寝占友梨絵(ヴォーカル)、若井優也(ピアノ)、佐藤ハチ恭彦(ベース)、柵木雄斗(ドラム)

♪Donna Lee at Ebisu Bistrosso Musique

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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