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「記者会見で説明責任果たして」 広河隆一氏の性暴力問題でデイズジャパンに損害賠償請求

小川たまかライター
(写真:ロイター/アフロ)

 フォトジャーナリストの広河隆一氏が、複数の女性スタッフに性交を強いる、裸の写真を撮影するなどの性暴力を行っていた問題。昨年末に検証委員会による最終検証報告書が発表され、広河氏による複数のセクハラやパワハラが認定された。(※記事末尾にこれまでの経緯まとめ)

 さらに今年に入り、被害者女性のひとりがデイズジャパン社に400万円の損害賠償請求を行ったことが明らかになった。

 損害賠償の請求先は、広河氏本人ではなくデイズジャパン社。請求を行った個人名が広河氏に知られることを避けるためという。この女性に、損害賠償請求の理由などについて話を聞いた。

記者会見で説明責任を果たしてほしい

――損害賠償の請求を決めたのは、最終検証報告書が発表されてからですか?

 最終報告書のほか、伊藤詩織さんの民事訴訟での勝訴も考えるきっかけになりました。会社が何も責任を取らずに幕を閉じた前例を作らないためです。

――広河氏やデイズジャパン社の対応に疑問を感じているところはありますか?

 被害者に対して金銭的な賠償をする姿勢が今のところないこと。性被害やパワハラは、長期にわたって心身に影響を及ぼし、生活を奪うものだと認識してほしい。また、検証報告が出された後も、デイズジャパン社が記者会見を開く予定もないことです。私としては記者会見を開いてほしいと思っています。

構造の中で起きる暴力の問題

――それは、著名なジャーナリストである広河氏だからこそ会見を開く責任があるという意味ですか?

 著名だからというよりも、こういった事件を起こしてしまったからには説明責任があると思っています。報告書では会社側が被害を見過ごしたり、深刻な事態を過小に評価したりしていた構造上の問題も指摘されていますが、これは他の組織や会社でも起こりうると思います。

 最終検証報告書を読んだ記者さんたちが問題点をあぶり出して質問し、それに答えることをしてほしい。(広河氏は雑誌で手記を公開しているが)一方通行の情報を出すのではなく、会見で答えてほしいと思います。

――最終検証報告書では、「セクハラという言葉で関係が語られたその瞬間に、それまでの男女の心の中に育ったはずの温かなものは、一切なかったように女たちは語り始める」など、広河氏が自身を被害者であるかのように語ることが指摘、批判されています。

 広河氏はパワハラの常習犯だったので、周囲はなるべく刺激しないようにしていました。「取材頑張ってくださいね」と声をかけるとか、女性たちが自己防衛のためにやっていたことを、自分だけに向けられた「温かなもの」と勘違いしたのではないかと思います。

問題提起のための賠償請求

――問題が発覚してから検証報告まで1年以上時間がかかりました。

 結果的に時間をおいたことや検証委員会が窓口を作ってくれたことで、(気持ちを整理する時間ができて)証言できた被害者もいたようです。

――400万円の額の理由は?

 これまでの類似の事件の場合、150~200万円ほどの額が多いと聞きました。昨年末に伊藤詩織さんが民事訴訟で勝訴した際にも、認められた額は330万円。それでも、被害者が失ったものからすれば到底足りません。「足りない」という問題提起のために、これまで以上のこの額にしました。

――請求先を広河氏本人にしない理由は、個人情報の漏洩を避けるため?

 大きな理由のひとつはそれです。私の場合は裸の写真を広河氏に撮影されていることもあり報復が怖いということがあります。ただ、デイズジャパン側には損害賠償を請求することで個人名を伝えなければなりません。個人情報を漏洩しない約束ですが、氏名を伝えるハードルが高くて賠償請求できない被害者もいると思います。

 検証で示されたデイズジャパンへの「宿題」は、説明責任を果たすことと、できれば被害者の救済に当たることだと思います。次に同様の事件が起きてしまったときにつながるアクションを、真摯に考えてほしいと思っています。

これまでの経緯

【2018年】

  • 9月29日  臨時株主総会決議で、会社解散と「DAYS JAPAN」の休刊が決定。
  • 11月20日  「DAYS JAPAN」が売り上げ不振のため休刊することが各紙で報道される。
  • 12月26日  同日発売号の週刊文春が広河氏による複数女性への性暴力を報道。この後、デイズジャパン社はホームページに謝罪コメントを掲載。25日付で広河氏が代表取締役を解任されていたことも発表される。報道を受けて、各地で広河氏の写真展が中止に。

【2019年】

  • 1月20日  最終号となる同年3月号(2月発売)を、広河氏による性暴力問題の検証号とすることが発表される。
  • 1月31日  同日発売号の週刊文春で、新たな被害女性の証言が掲載される。
  • 2月15日  最終号の発売が3月20日に延期されることが発表される。
  • 3月20日  「DAYS JAPAN」最終号が発売。
  • 3月24日  検証記事の内容を踏まえたシンポジウムが都内で開催される。
  • 12月27日  検証委員会の最終報告書をウェブ上で公開。長期間にわたり多数のセクハラやパワハラがあったことを認定。報告書を受けデイズジャパン社はホームページで謝罪。相談窓口を設置したことを告知。

【2020年】

  • 1月8日  被害女性の1人がデイズジャパン社に損害賠償請求を行ったことが報道される。

【関連記事】

「声をあげられない人に伝えたい」 性被害を受けた女性が、デイズジャパンに損害賠償を請求(小林明子・BuzzFeed/2020年1月9日)

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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