夏と冬で違う低温注意報 週末に北日本を中心に強い寒気南下・南岸低気圧を挟んで来週は最強寒気が南下
夏季と冬季で考え方が違う低温注意報
気象庁では、低温によって災害が発生するおそれがある場合には、「低温注意報」を発表しています。
昭和63年(1988年)3月31日までは「異常低温注意報」という名称でした。
「異常低温」というほどではない低温でも災害が起きることなどを考慮したために現在の名称に変更されました。
低温注意報は、低温により災害が発生するおそれがある場合に発表するといっても、夏季と冬季では考え方が違います。
夏季は低温のため農作物などに著しい被害が発生するときに発表となりますので、発表の目安は主として平均気温になります。
冬季は低温によって水道管凍結や破裂による著しい被害が発生するときに発表となりますので、発表の目安は主として最低気温になります。
このため、低温注意報は、ほとんどの地方で夏季と冬季の2種類の基準がありますが、暖かい地方では、冬季のみの基準です。つまり、夏季は発表しません(表)。
気象庁のある東京・千代田区の低温注意報の基準は、異常低温注意報と称していた昭和57年(1982年)から使われていますが、夏季に比べ冬季は10倍くらい多く発表しています。
つまり、低温による被害は、冬季のほうが圧倒的に多いのです。
現在、低温注意報が西日本で発表となっています(図1)。
現在南下中の寒波は、2段階で強い寒気を日本付近に送り込むと考えられています。
まず北日本を中心とした強い寒気南下のあと、南岸低気圧を挟んで来週は最強寒気が南下してくるという2段階ですが、これによって低温注意報の範囲は大きく広がると考えられます。
北海道を襲う渦上の低気圧の雲
1月21日夜遅くには、日本海北部にはっきり渦をまいた発達中の低気圧に伴う雲と、その西側に寒気の南下を示す筋状の雲があります(図2)。
この低気圧が東進し、現在は北日本を通過中です。
このため、北日本では低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、上空約5000メートルには氷点下33度以下の寒気が流れ込むという2つのことで大気の状態が非常に不安定となっています。
北日本では日本海側を中心に雪を伴った非常に強い風が吹いていますので、交通障害、暴風、高波に厳重な警戒が必要です。
気象庁は5日先までの早期注情報や各種警報を発表する可能性を「高」「中」の2段階で発表しています。
これによると、低気圧が北日本を通過した1月21日朝から夜遅くは、大雪は札幌にある石狩地方、暴風は石狩地方から北海道南部までと、1月21日早朝までに比べれば、警報の可能性がある地域が狭まっています(図3)。
そして、低気圧通過後は西高東低の冬型の気圧配置となり、強い寒気が南下して厳しい寒さとなる見込みです。
ただ、週明けの1月23日は、東シナ海で発生した低気圧が南岸低気圧となって東進しますので、この強い寒気南下は一時的です(図4)。
一時的ですが、南岸低気圧は、日本の東海上から千島の東海上にかけて発達し、1月24日以降、西高東低の強い冬型の気圧配置となって今冬一番というより、10年に1度という強い寒気が南下してくる見込みです。
10年に1度の強い寒気が南下
気象予報士の間では、寒さの目安として、上空約1500メートルの気温が使われます。
上空約1500メートルで氷点下6度は、平均的にみると地上付近の気温が3度位となりますので、上空約1500メートルで氷点下6度という温度は、地上での雪と雨の境目の温度ということになります。
この氷点下6度線は、1月25日朝には八丈島の南海上から奄美大島近海まで大きく南下する予想となっています(図5)。
つまり、沖縄を除く全国で、降水現象があれば、雪としてふるというほど冷え込む予想です。
また、関東上空約1500メートルでは、氷点下15度位の寒気という予想になっていますが、関東で上空の気温を観測している茨城県つくばでの、この高さにおける気温の一番低い記録は、昭和35年(1960年)1月24日の氷点下14.0度です。
昭和32年(1957年)の観測開始以来の最低気温の記録となるかもしれません。
これほど強い寒気が南下してくるため、日本海側の地方を中心に大雪の恐れがあります。
気象庁の発表する早期注意情報でも、4日先、5日先の話ですが、すでに「中」が広い範囲で発表となっています(図6)。
非常に早い天気変化の一週間です。
各地とも、最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。
図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図2、図3、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。
図4の出典:気象庁ホームページ。
表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。