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アップルのiPhoneが日本で発売されてから今日で10周年。iPhoneが日本を変えた3つのこと

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
iPhone 3G発売日のソフトバンクの孫正義社長(写真:ロイター/アフロ)

 今日2018年7月11日は、アップルのスマートフォン『iPhone(iPhone 3G)』が日本で発売(2008年7月11日)されてからちょうど10周年を迎える日です。

 この10年間で、iPhoneは私たち日本人の生活をどのように変えたのでしょうか?

 大きなこと、小さなこと、様々な変化がありましたが、筆者がとくに変わったと考えている3つの変化について解説します。

1.携帯はガラケーからスマホへ

 iPhoneは発売当時、「こんなものは日本では売れない」と予想されていました。筆者も自分自身は購入したものの「一般には売れない」と思っていました。

 しかし、実際はどうだったでしょうか? iPhoneは売れました。

 売れない理由とされていた、フィーチャーフォン(ガラケー)にあった様々な機能がiPhoneにないことは関係ありませんでした。売れた理由は「値下げだった」と、ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長が後に語っています。

松本氏は、iPhoneは発売当初、売れ行きが鈍かったが、「ソフトバンクが肉を切るようなギリギリの値下げをして人気が出た」と強調。

出典:asahi.com(朝日新聞社):iPhoneのSIMロック「解除せず」 ソフトバンク(現在は記事削除済み)

 その売れ行きから2011年にはauが、2013年にはドコモもiPhoneの取り扱いを開始し、アップルの厳しい販売ノルマを達成するため実質0円で販売されたのは記憶に新しいことでしょう。

 その結果、日本は世界と比較してiPhoneのシェアがAndroidよりも高い珍しい状態となりました。そして、このiPhoneの売れ行きがガラケーからスマートフォンへの乗り換えを加速させたのは想像に難くありません。

 ガラケーを主力としていた国内メーカーの日立、東芝、NEC、パナソニック、富士通は携帯電話事業から撤退し、いまやソニーモバイル、シャープ、京セラの3メーカーが残るばかりです。

2017年の国内携帯電話出荷台数。MM総研より
2017年の国内携帯電話出荷台数。MM総研より

 MM総研の調べによると、2017年の国内携帯電話出荷台数はアップルが41.7%と6年連続1位であり、2位のシャープ、3位のソニーモバイルを大きく引き離しています。

 人々が使う携帯電話はガラケーではなくiPhoneへと変化しました。

2.誰もが「カメラ」を持つ時代に

 もう1つiPhoneが――というよりはスマートフォンが――シェアを伸ばしたところがあります。それはコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)市場です。

 一般社団法人カメラ映像機器工業会が発表しているデジタルカメラ統計によると、コンデジの国内出荷台数は大きく減りつつあります。

コンデジの国内出荷台数推移。グラフは筆者作成
コンデジの国内出荷台数推移。グラフは筆者作成

 スマホのカメラ性能があがったこと。スマホを持ち歩いているためわざわざコンデジを買う必要がなくなったこと。インターネットを通じて家族や友人にシェアしやすいこと。インカメラによる自撮りが流行したことなど、コンデジが売れなくなった理由はいくつも挙げられます。

 ただ、そうした市場の変化よりも「誰もが手元にカメラを持つようになった」ことが一番の変化だと筆者は感じています。

 目の前の珍しい状況を撮るために危険をかえりみない人。公共の空間で迷惑行為をしている人を撮影してネットに晒す人。まだ判断力の低い子供たちが自撮りや他撮りにより事件に巻き込まれることなど、コンデジではほぼ起こり得なかったことがスマホのカメラにより引き起こされるようになりました。

 当たり前のように手元にカメラという記録媒体があることが、人々の行動を大きく変えていったのです。

3.スマホアプリによるゲーム人口の拡大

 最後はゲームの話です。iPhoneはいままであまりゲームを遊んでいなかった人たちに、「ゲームを遊ばせる」ことを成功させています。

 ファミ通ゲーム白書2017によると、国内の家庭用ハード、家庭用ソフトの売上が減少を続けているのに対し、スマホのアプリをふくむ「オンラインプラットフォーム」はいまや国内ゲーム市場全体の約75%を占めるほどになりました。

ファミ通ゲーム白書2017のリリースより
ファミ通ゲーム白書2017のリリースより

 ゲームアプリにかぎって見ても、前年比(2016年→2017年)で4.4%増の9,690億円という規模になっています。この数字は既存のゲームユーザーだけでは達成できなかったことでしょう。

 その証拠にカドカワ株式会社のユーザーリサーチシステム「eb-i」の調査では、アプリゲームのみをプレイするユーザーは2,024万人と国内ゲーム人口全体の約半数にのぼるそうです。

ファミ通ゲーム白書2017のリリースより
ファミ通ゲーム白書2017のリリースより

 この市場規模を支えている「ガチャ(ルートボックスも含む)」は、射幸心を煽ることから現在ではユーザーに嫌われ、行政からも規制されつつありますが、「ゲームなんて子供の遊ぶおもちゃ」から「大人も遊ぶもの」に変えたのは、iPhoneの登場が大きかったと言えます。

10年前の自分と比べて行動はどう変わった?

 繰り返しになりますが、今日は日本でiPhoneが発売されてから10周年です。

 この記事を読んでくださっているあなたは、おそらくiPhoneかAndroidの――どちらにせよスマートフォンを持っていることでしょう。

 もしよかったら10年前の自分と今の自分で、行動がどのように変わっているのか振り返ってみてください。便利になったと思うこともあれば、忘れている大事なことに気づけるかもしれませんよ。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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