歴史は繰り返す、原油価格高騰後のシェール増産
国際原油価格が値下がりしている。NYMEX原油先物相場は年初の1バレル=60.20ドルに対して1月25日には2014年12月以来の高値となる66.66ドルまで値上がりし、その後も60ドル台中盤の高値圏を維持する値動きになっていた。原油相場の70ドル説、80ドル説といった強気見通しも勢いを増し始めていたが、2月入りしてからは徐々に地合を悪化させ、2月9日の取引ではついに60ドルの大台も割り込んでいる。概ね年初からの上昇幅は完全に相殺し、いわゆる「往って来い」型の値動きになっている。
マーケットで注目を集めているのが、米国のシェールオイル生産動向である。すなわち、原油価格の急騰を受けてシェールオイルの生産活動が活発化する中、再び供給超過状態に後戻りしてしまうのではないかとの警戒感が、原油価格を下押ししている。
米国の産油動向を考える際の指標としては石油リグ稼働数(米ベーカー・ヒューズ社発表)があるが、その数値が急増しているのである。昨年11月3日時点の729基に対して、年末時点で既に747基まで増加していたが、直近の2月9日時点では791基に達している。約3ヵ月間で62基(8.5%)の急増であり、このまま原油高がシェールオイル産業を刺激し続けると、シェールオイルの生産量が一気に急増するリスクが警戒されている。
実際に米エネルギー情報局(EIA)は2月月報において、今年の米産油量見通しを日量1,059万バレルとして、前月から一気に32万バレル引き上げている。これでEIAが米産油量見通しを引き上げるのは5カ月連続になる。昨年8月時点では前年比で日量56万バレルの増産予想だったが、今や126万バレルの増産予想にまで見通しが大きく変わっている。
国際エネルギー機関(IEA)は今年の世界石油需要が前年比で日量140万バレル増加するとの見通しを示しており、好景気で良好な需要環境が続くことに自信を示している。しかし、今やシェールオイルの増産圧力は世界石油需要拡大圧力の全てを相殺しかねない状況であり、IEAは石油輸出国機構(OPEC)非加盟国全体であれば、需要拡大を上回る増産圧力が発生するとの見通しを、2月13日に公表した最新の月報で報告している。
2010年代の国際原油市況は、原油価格が高騰する度にシェールオイルの増産圧力が強まることで、その後に急反落する展開を繰り返している。昨年も1~2月に50ドル台に乗せた原油相場がシェールオイルの増産を加速させ、年央にかけて40ドル台前半まで急落している。今回も原油価格の高騰がシェールオイル生産活動の活発化を促す中、国際原油市場では「歴史は繰り返す」の格言を再び噛み締める必要性に迫られているようだ。
「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」との言葉もあるが、伝統的産油国とタイトオイル(シェールオイルなど)が共存できる新しい時代の原油価格、原油需給を実現する大きな課題を克服するためには、悲劇であろうと喜劇であろうと、同じような展開を繰り返していきながら、終着点を探る必要性がありそうだ。多くの時間を費やしながら、安定的な原油価格・需給環境を確立できる環境を模索していけば十分である。