『ちょっと負けは大敗よりなぜか悔しい』浦和vsC大阪【浦和レッズ川柳な試合レビュー】
■テーマが見つけづらいC大阪戦
もうすぐ68歳。めっきり年を感じる一つに、自転車がある。道に出て、車と接触するのもこわいが、もっとこわいのが同じ自転車だ。車は事故が心配なので、ある程度徐行してくるが、自転車はけっこう全速力で来るから。こちらは超スローで走っているとしても、全速力をうまくよける瞬発力が年々衰えているのがわかる。
もう9月中旬ともなると、18時すぎると外は暗い。埼スタまでの道のりはできるだけ慎重な安全運転で行くしかない。帰りの暗いのは慣れてても、行きが暗いのはまだ慣れていないのだな。70くらいが限界かも。
古希までは ペダルを踏んで 南門
埼スタに到着したのは18時50分くらい。まだパラパラ状態だった南側に対して、北側はすでに応援で盛り上がってる。声出しあり席50%の制限でも、「熱量」は強烈だ。
正直なところ、私の予想でも、観客2万人はいかないだろうな、とは考えていた。この前の壮絶なるACL準決勝などと比較しても、ちょっと試合の「テーマ」が少ないから。
勝っても優勝争いもなく、負けても残留争いもなく、ACL出場権を獲得できるリーグ3位はまだまだ遠く、平日夜開催。
また前節のレイソルは関東同士でサポーターもいっぱい集まったし、土曜でファミリーも見かけた。きょうの南側の観客層は、なぜか仕事帰りのヤングサラリーマンぽい人は何人か見かけたものの、主流はやはり「ソロ活オジサン」。
ま、結果的に1万7千人ちょいというのは、十分にうなずける数字だ。
■ひと味足りない試合内容
それでも、こういったノリきれない気持ちを吹き飛ばすくらいの、スカッとする得点シーンを見せてくれれば、こちらとしては何の問題もないのだが・・・。
前半、まるで3月くらいに戻ってしまったようなもどかしい攻撃。ボールはそれなりにキープするのに、なかなかシュートまでいかない。「斬り込み戦士」の松尾や大久保も、あんまり目立たずに、パスしたらボールを取られるの繰り返し。レイソル戦とは全く違った展開になった。
斬り込みの 刀は鞘に さしたまま
それでモコモコ動いているうちに、カウンター一発くらって、まずは失点。セレッソは、これ、狙ってたのだろうか。攻めさせておいて、ゴールはしっかり固めてカウンター。だとしたら、あまりにレッズは安易にボールを回していたといわざるを得ない。
後半になって酒井、小泉、モーベルグが入って流れが変わるかな、と期待は持った。特にモ―ベルグは、いまやレッズナンバーワンの「斬り込み戦士」。少々の壁なら、平気でドリブルで突破してしまう。
ところが、メンバー変わっても、相変わらずなかなかシュートに行けない。行ってもGKの前にちょろちょろと転がるくらい。
塩コショウのかかってない目玉焼きというか、ワサビの効いてないまぐろ丼というか、ピリッとした味付けがなされないままに時間ばっかりがすぎていく。これはシンドい一夜になってしまったぞ、とガッカリ。レイソル戦に見た中秋の名月のような見どころもない。
結局、あのACL準決勝で十分に入場料の何倍も楽しんだんだから、何回かはあんまりおもしろくなくても我慢しなさい、ってことなのか。
とうとう試合は、何のドンデン返しもないまま終了。0-1の「ちょっと負け」。あんまり負けた気はしないのに、はっきり負けた。
完敗より 後味悪い ちょっと負け
セレッソとはこの次、ルヴァンカップの準決勝でやんないといけない。きょうの試合を見る限り、「レッズの長所をツブす」戦術が浸透しているみたいで、イヤな感じ。
自転車での帰り、また別の自転車とぶつかりそうになって、ヒヤッとした。夜は暗いね。
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後30年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。去年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2021』(飯塚書店)が好評発売中。代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、9月6日、お笑い系プロダクション「浅井企画」の元専務・川岸咨鴻氏の半生を追った『川岸咨鴻伝 コサキンを「3億年許さん」と叱責した男』をリリース。11月上旬には『タブレット純のローヤルレコード聖地純礼』も発売予定。また、今年末には『浦和レッズ川柳2022』も出す予定。