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私たちは政治を変える「道具」を手に入れた!

加藤秀樹構想日本 代表

来週末、再び政府の事業仕分けが行われる。マスメディアは「仕分け」は終わったみたいに言うことが多いが、私は仕分けの成果はこれからが本番だと思っている。

そもそも仕分けの成果とは何なのか。

無駄な事業を削ったり「埋蔵金」を掘り起こしたり。これは実は仕分け当日の成果だ。そして多くのマスメディアは、ここしか報道しない。しかし本当の“お楽しみ”はその先なのだ。

3年前の第1回仕分け以来、政府の行政刷新会議は“仕分けのしかけ”を行政機構の中に埋め込むことに力を注いできた。その成果の一つの例が、トンデモ復興予算が多く見つかったことだ。

なぜあれが見つかったのか。

それは、仕分けの3大要素、つまり

(1)国の事業の説明のフォーマット化(A4数枚に事業内容を定型化して説明)

(2)現場に詳しい行政外部の人が、「仕分け人」として行政の事業をチェック

(3)1、2の全面公開

が政府の仕事の流れの中に組み込まれたからだ。

(1)は「レビューシート」と呼ばれ、現在、国の約5000の事業すべてについて公開されている(各府省のホームページ参照)。これを見れば復興予算に限らず、税金の使われ方、成果、支払い先などが全てわかるようになった。

そして(1)~(3)の“仕分けのしかけ”が、この3年間ですべての府省の中に「行政事業レビュー」として組み込まれたのだ。

では、その結果出てくる仕分けの成果とは何だろうか。

第一に、これまであまり機能しなかった行政に対する正規のチェック機関(会計検査院、国会の決算・行政監視委員会など)が動き始めたことだ。

例えば会計検査院が指摘した税金のムダ使いの金額は、2008年までの10年間の平均が約680億円。これが、仕分けが始まった後の2009年から3年間の平均で約9340億円と10倍以上になっている。また、復興予算の報道を受けて、国会でこの問題が審議されたのは多くの人の記憶に新しい。

実は、衆議院の決算行政監視委員会は、1年前に国の4事業について仕分けを行い、文科大臣など5人の大臣に事業の改善に関する決議を送付している。これは与野党が合意して国会が本来の働きをしたわけで、画期的なことだった。この時もマスメディアの報道は小さかったが、一般傍聴者は2日間の開催中常時立ち見が出るなど、決算審議としては異例の熱気に包まれた。

第二に、事業の背後にある組織や制度の変革だ。仕分けの議論を実際に聞いてみると、事業だけでなく、医療制度、科学技術研究組織のあり方、地方交付税制度など、事業の背後にあるものに議論が及ぶことが多い。審議会など「内部」の抽象的な議論ではなく、現場の実情をふまえた「外部」の目が入ることによって、組織や制度などの「本丸」にメスが入れられる。

最後に、日本の政治全体の大変革への期待だ。解散だ、第三極だと言っても、政界の中から本当の変革の動きは出てきそうにない。政治家も政党も次の選挙のことを考えた途端、身動きがとれなくなる。

しかし今や、日本は世界に先駆けて、国の事業の詳細が誰の目にも届くしくみを手にした。しかもブログ、ツイッターの時代だ。少しでも多くの人が「レビューシート」を見て、ツイッターで感想をつぶやいてみよう。政策や政治に対して、デモに参加するよりもはるかに大勢の人が細やかな意思表示ができるのだ。復興予算の時以上に政治家も官僚も動かざるをえなくなる。

今や国民全員が政治の当事者になれる時代に私たちは生きているのである。

歴史はいつも周辺から変わると言う。その大変化の入口に私たちはいる。

私たちが手にした政治と世の中を変える“道具”を使わない手はない。

構想日本 代表

大蔵省で、証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などに勤務した後、1997年4月、日本に真に必要な政策を「民」の立場から立案・提言、そして実現するため、非営利独立のシンクタンク構想日本を設立。事業仕分けによる行革、政党ガバナンスの確立、教育行政や、医療制度改革などを提言。その実現に向けて各分野の変革者やNPOと連携し、縦横無尽の射程から日本の変革をめざす。

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