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なぜ森保ジャパンのサッカーは嚙み合わなくなってしまったのか?【サウジアラビア戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

時計の針を戻せば問題の根源が見える

 W杯アジア最終予選の3戦目となったアウェイでのサウジアラビア戦。森保ジャパンは、後半71分に連係ミスから痛恨の先制点を許してしまい、結局、1-0で敗戦を喫した。

 試合後、キャプテンの吉田は「どっちに転んでもおかしくない試合だったが、ワンチャンスをものにしたサウジが勝ちに値した」と振り返ったが、初戦のオマーン戦で敗れた直後にも、吉田は「負けるべくして負けた」と語っていたことを思い出す。

 対戦相手からの評価を含め、客観的に戦力を比較すれば、グループBの最有力は誰の目から見ても日本だったはず。

 それが、3試合を終えた段階で1勝2敗。グループ4番手のオマーンと3番手のサウジアラビアに敗北を喫したという事実は、だからこそ事の深刻さを物語る。

 少なくとも、初戦のオマーン戦の敗戦が決してアクシデントではなく、単純に日本の選手のコンディションが悪かったために敗れたわけではなかったことが、今回の敗戦で改めて証明されたと受け止めるべきだろう。

 2018年W杯後に発足した森保ジャパンは、なぜここまで歯車が噛み合わなくなってしまったのか。今年に入って戦った国内開催の6度のAマッチでは相手を圧倒して華々しい勝利を続けていたにもかかわらず、なぜ急に得点も奪えないチームになってしまったのか。

 その答えを探るには、時計の針をコロナ禍前に戻す必要がある。

 2019年11月19日、森保ジャパンは大阪でベネズエラと親善試合を戦い、前半だけで相手に4ゴールを奪われ、最終的に1-4で大敗を喫した。当然ながら、試合後には森保監督に対する批判の声が上がり、進退を問う意見も飛び交った。

 実はあの敗戦も、突然生まれたものではなかった。

 2019年アジアカップ決勝で敗れて以降、森保ジャパンのサッカーは劣化の兆しを見せ始め、9月からスタートしたW杯アジア2次予選では、10月のタジキスタン戦、11月のキルギス戦と、いずれもアウェイの格下相手の試合で苦戦を強いられていた。

 以前は出来ていたはずの攻撃が繰り出せず、守備でも危ういシーンが頻繁に起こった。しかも、いつもと同じ主力メンバーで戦い続けるため、問題が何も解決されないまま時間が過ぎてしまい、ついに主力メンバー不在のベネズエラ戦で、個人の修正能力が効かずに大敗を喫する羽目になった。

 そして、年が明けてすぐの2月にCOVID-19が世界を混乱に陥れると、日本代表の活動も全面的に休止を強いられることとなった。それから約1年の空白期間は、ベネズエラ戦までの劣化の過程を忘れるには十分すぎた。

 さらに今年に入ってからのAマッチが、問題をより複雑にした。コロナ禍の中で行われたすべての試合は日本開催。日本には環境的なアドバンテージがあり、対戦相手には不利な材料が揃う中、森保ジャパンは格下相手に圧倒的な勝利を続けたからだ。

 その流れを踏まえてみれば、今回の苦戦ぶりも腑に落ちるはずだ。

 森保ジャパンは、コロナ禍前に起こっていた問題を解決できないまま、2次予選とは異なるレベルのチームと対戦するアジア最終予選を迎えてしまったのである。勝ったとはいえ、タジキスタンやキルギスに苦戦していたのだから、オマーンやサウジアラビアに負けるのも不思議ではない。

 だから、問題の根は想像以上に深い。

 2019年から引きずっていた問題の数々を、サウジアラビア戦から中4日で迎えるオーストラリア戦までに解決することは、ほぼ不可能だと見るのが妥当だろう。

 もちろん、勝負は蓋を開けて見なければ分からない。しかし、たとえオーストラリア戦で幸運が転がってきたとしても、本質的な部分で変化の兆しが見えない限り、日本がこれから連勝街道を歩むとは考えにくい。

 今回の最終予選は、その間に親善試合さえも組めない日程の中で連戦が続く。まずは、この悪い流れを断ち切るために何が必要なのか。

 明るい希望を失った状態のいま、JFA会長の動向に注目が集まる。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=5.5点

長友のラフなバックパスを慌てずにタッチに蹴り出したシーンや後半50分のビッグセーブを含め、チームを救うプレーをした。ただ、失点場面では股下を抜かれて得点を許した。

【右SB】酒井宏樹=5.0点

オフサイドになった大迫への高速クロスはあったが、全体的に守備に追われて攻撃面で存在感を示すことができなかった。特に後半は1本もクロスボールを入れられなかった。

【右CB】吉田麻也=5.0点

個人としては失点直後のパス以外に目立ったミスはなかったが、フィードなど攻撃の起点となるプレーでは物足りなさを感じさせた。主将としてまだやるべきことは残されている。

【左CB】冨安健洋=6.0点

自陣ボックス内での冷静な対応と、空中戦を含めた対人の強さで圧倒的な存在感を見せた。守備対応で忙しく、いつもより攻撃面での貢献は少なかったが、及第点のパフォーマンス。

【左SB】長友佑都(90+1分途中交代)=5.0点

守備面では身体を張って大きなミスもなかったが、前半は攻撃参加をしてクロスを供給するシーンがなく、後半もクロスは2本のみ。最後は力尽きて、試合終盤に中山と交代した。

【右ボランチ】柴崎岳(73分途中交代)=4.5点

これまで森保ジャパンの絶対的な存在として出場を続けてきたが、敗戦を決定づける大きなミスを犯してしまった。ロストも多く、この試合ではほとんど良いところがなかった。

【左ボランチ】遠藤航=5.0点

何度かボール奪取で存在感を示したが、柴崎同様、この試合ではボールを失うシーンが目立ち、らしくないパフォーマンスだった。ピッチ全体を見渡すような余裕もほしかった。

【右ウイング】浅野拓磨(59分途中交代)=5.0点

前半に右サイドから3本のクロスを供給するなど一定の効果は示したが、イージーミスを含めて周囲との連動に多くの課題を残した。持ち前のスピードを生かせなかったのも課題。

【左ウイング】南野拓実(59分途中交代)=5.0点

献身的な守備で貢献した部分はあったが、ハーフスペースにポジションをとっても受けられず、左サイドを打開することもできず。シュートも1本と、物足りない内容に終わった。

【トップ下】鎌田大地(73分途中交代)=4.5点

29分にスルーパスでビッグチャンスを演出したが、それ以外に攻撃面で目立った活躍はできず。特に緩慢な動きで守備ブロックに何度も穴を空けてしまったのはいただけない。

【CF】大迫勇也=5.0点

少ないチャンスをものにできるかが勝敗を決める試合で、GKと1対1の場面を逃してしまった点はFWとしては痛すぎる。得意のポストプレーも影を潜め、乏しい内容に終始した。

【MF】古橋亨梧(59分途中出場)=5.5点

南野に代わって後半途中から左ウイングでプレー。周囲と連動した攻撃に2度絡むなど一定のパフォーマンスを示した。88分に原口のクロスに対して果敢に飛び込むも、届かず。

【MF】原口元気(59分途中出場)=5.5点

浅野に代わって後半途中から右ウイングでプレー。失点に直結した柴崎のミスの前に、ラフなパスを送ってしまったのは大きな反省点。攻撃面では88分に絶妙なクロスを入れた。

【MF】守田英正(73分途中出場)=5.5点

柴崎に代わって後半途中からボランチでプレー。最初のプレーでボールを失ったが、それ以降は縦パスを入れて連動した攻撃の起点となった。次戦は先発出場の可能性も十分。

【FW】オナイウ阿道(73分途中出場)=5.5点

鎌田に代わって後半途中から1トップ下でプレー。左サイドに流れて相手ボックス内に進入する場面もあったがトラップミス。ただ、周囲との連携面では以前より確実に高まった。

【DF】中山雄太(90+1分途中出場)=採点なし

長友に代わって後半途中から左SBでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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