今だから耳を傾けたい『若手起業家・椎木里佳』の提言。夢を持てない若者と、それを育めなかった大人へ!

女子高生社長として話題となった若手起業家の椎木里佳さん(撮影:中川 淳)

世の中は過去に経験したことのない状況となり、日々学生だけではなく大人達からも不安の声が飛び交っている。本来であれば、不安と夢が渦巻く新卒シーズン。学生たちが社会に羽ばたく、人生における大きな分岐点。一般的には企業の新人研修がスタートしてキャリアの一歩を踏み出すのが4月である。

そんな世の中の『常識』とは異なる次元でキャリアを築いてきたのが、『元・女子高生社長』で知られる、株式会社AMF代表取締役社長の椎木里佳さん。若干22歳で社会人8年目。新時代のキャリアデザインを地でいく彼女をゲストに、次世代の人材育成や働き方を一緒に考えてみた。

女子高生社長として話題になるきっかけとなった書籍『女子高生社長、経営を学ぶ。【画像:ダイアモンド社』
女子高生社長として話題になるきっかけとなった書籍『女子高生社長、経営を学ぶ。【画像:ダイアモンド社』

夢を叶えるために起業という選択をした、元・女子高生社長の出発点とは

佐藤裕:まずは、卒業おめでとうございます。

椎木:ありがとうございます(笑)

佐藤裕:15歳で企業されて経営者として活躍しながらも、教育機関で学ぶことを続けてきた椎木さんだから、きっとキャリアデザインに対する独自の考えをお持ちなんだろうな、と。

椎木:確かに、まわりの同世代と比べると私は少し特殊な8年間を過ごしたかもしれません。

佐藤裕:当時、起業しようと思ったのは、どのようなことがきっかけだったんですか?

椎木:父が会社経営していたこともあり、起業というキャリアの選択があるのは小学校を卒業する頃には、なんとなく理解していました。それで、中学入学した頃には、将来は自分の会社を持とうと自然と考えるようになっていました。

佐藤裕:まだランドセルを下ろしたばかりの年齢で…。かなり早い時期での決断ですね。

椎木:その頃から、たくさんの夢があって。

佐藤裕:例えば、どのような? 聞かせて下さい。

椎木:映画監督になりたい、アプリ作りたい、芸能事務所を立ち上げるのも面白そうだなとか。それをひとつずつ実現するには、各分野で10年ほど修行する必要がありますよね。

佐藤裕:確かに、夢の実現には時間を有すケースが多いですからね。

椎木:修業後、独立して夢を実現するには、さらに10年は掛かりそうだぞ、と。そうしたら生涯でいくつの夢を叶えられるかと考えた時に、これは起業して自分の責任で挑戦するしかない!それも、早い方が良さそうだ、と思って。はっきりとした事業計画なしで、勢いで起業したんです。

佐藤裕:そこから椎木さんのキャリアデザインが始まったわけですね。今は、具体的にどのような事業を行なっているんですか?

椎木:主に、JC(女子中学生)、JK(女子高生)向けのマーケティングです。 「JCJK調査隊」と呼んでいる常時100人ほどのコミュニティを管理していて、調査隊と企業を繋げるなど、JCJKで流行っているものをフィードバックする活動をしています。事業の中核を担うコンテンツとしては、私の会社が主催する「JCJK流行語大賞」(年2回)があります。大人の手を加えずに、モノ、ヒト、コトバ、あとアプリの4部門の人気ランキングを発表しています。

佐藤裕:起業時、現役のJCだった椎木さんの強みを活かしたビジネスですね。その“JCJK調査隊”は、どのようにして集めているんですか?

椎木:はじめは、応募を募り、遠方の子はスカイプを活用して面接を行い調査隊を組みました。今は、口コミや、メンバーの妹や後輩といった広がり方でメンバーを入れ替えています。

佐藤裕:では、高校卒業すると調査隊の活動も卒業する?

椎木:今は、JD(女子大生)調査隊もあるので、高校卒業後はそこに上がる仕組みです。関係性は、友達、姉妹みたいな感じ。協力してくれる彼女たちに対しては、バイトや思い出作りとしてだけでなく、早い時期から社会と接点を持つ良いきっかけになればと思い取り組んでいます。

新たな世代を理解できなければ、現代社会から取り残される

佐藤裕:同世代や、さらに下の世代との交流が多いと思いますが、どのようなことを感じますか?

椎木:私たち世代は、夢を抱かない現実主義者と言われているけど、生まれた頃からスマホがあった、さらに下の世代(現在の小中学生)は気軽に海外の情報に触れられて、視野を広げられることで、夢を持ちやすくなっているように感じます。

佐藤裕:もう情報のほとんどをウェブから入手する世代ですよね。ネット情報は信じます?

椎木:私たち世代って、良くも、悪くも、人や情報を疑わないピュアな人が多いんです。だから、ネット情報は正しいと思っちゃいますね。ただ、ビジネスにおいては慎重に物事を進めなければならないケースがあるので、ひとつのメディアや、いち個人の情報だけを鵜呑みにせず、複数の情報からファクトチェックするようにしています。

佐藤裕:情報だけでなく、人とのコミュニケーションもSNSをフル活用する世代ですよね。

椎木:そうですね。それこそ、高校時代は担任を含めたLINEグループがありました。

佐藤裕:衝撃!僕ら世代では考えられない。

椎木:提出物の連絡網を兼ねていて。今は、LINEが形式張った連絡手段で、InstagramのDM(ダイレクトメッセージ)が、より気軽なツールになっています。

佐藤裕:すでに LINE離れが始まっているんですね。

椎木:完全にLINEをやめているわけではないんですけど、LINEでの連絡はちょっと気が重いというか…。お互いにきちんと受け答えしなきゃいけないプレッシャーがある。その点、InstagramのDMなら気軽に連絡できて、返事がなくても、まぁ気にしない。だから、電話が鳴ると「えっ、何事…」と思っちゃう。

佐藤裕:ドキッとするわけですね、緊急事態かって。(交換した名刺を見て)ここにも電話番号が記されていませんね。

椎木:聞かれたら、答えるようにしています。

佐藤裕:その世代が、すでに社会に出ているわけだから、ミドル~シニア世代はもっと多様な人を受け入れる準備が必要ですね。

椎木:生意気と言われると思うんですが、プライベートでの人間関係を築く上で上下関係は残しつつも、仕事においては能力至上主義であってほしいと今の若い世代の多くが思っています。

若さという強みは勿論ながら、はたらく・キャリア・最近の若者まで幅広く語る中で感じる社会人8年経験の凄みが椎木里佳さんの魅力(撮影:中川 淳)
若さという強みは勿論ながら、はたらく・キャリア・最近の若者まで幅広く語る中で感じる社会人8年経験の凄みが椎木里佳さんの魅力(撮影:中川 淳)

意識高い系=自分の人生と向き合っている人、と考えるべき

佐藤裕:この先のご自身のキャリアをどのようにしていきたいと考えていますか?

椎木:直近で言うと、これまでのリサーチマーケティングのノウハウを活かした新規事業を台湾で4月にスタートさせようと思っています。これを機に、韓国や東南アジアなどのアジアに展開を広げて行きたい。

佐藤裕:事業計画としては、かなり先まで見据えているタイプのように感じますが…。

椎木:遠くの目標設定を立てて、それに向けて動くタイプなので、10年、20年後のプランは考えています。これをきっかけに、20代のうちにアジアを代表する女性になれたら良いな、と。

佐藤裕:起業の業績、認知度など、「アジアを代表する」の定義はあるんですか? 

椎木:認知度に近いですけど、影響力ですね。そのためには、企業の業績も大切で、目標をクリアすれば、私の行動や発言に説得力が出てくると思っています。

佐藤裕:さらに、先のプランも考えていそうですね。

椎木:30代は、結婚、出産したい。起業したばかりの頃は、10代のうちに一部上場、結婚、出産したいと思っていたんですが、考えが変わって。

佐藤裕:「夢や目標が変わった」とカジュアルに言えるのは格好いいと思います。以外と自分が決めたことに縛られて自由を見失う人が多いから。

椎木:そりゃ、変わりますよ。まだ若いし、経験や新たな知識で自分の当たり前がくつがえることってたくさんあります。一部上場にしても、他にやりたいことができてもすぐに辞められなかったり、株主への責任を果す義務があったりということを考えると、自分の性に合っていないなと思って。諦めるのではなく前向きな意味で、目標設定を変えてきました。

佐藤裕:最近は意識高い系って思われたくないから、主体性を持たない若者が増えていますが、椎木さんは真逆な生き方ですね。

椎木:自分の人生に後悔はしたくないんです。意識が高いことは、自分の人生と向き合っているだけの話。

佐藤裕:椎木さんは、同世代から別格と思われているから意識高い系とはあまり言われないでしょ!

椎木:え、言われますよ(笑)

佐藤裕:言われる?

椎木:すごい言われます。意識高い系って言葉が流行った3年前は、その代表扱いされていました。

佐藤裕:それを嫌に感じなかった?

椎木:嫌な思いはしましたけど、「意識が高い=人生と向き合っている」と、気付くのが早いか、遅いかの違いと割り切って考えていました。

佐藤裕:そこに気付けない人がいるから、就活で失敗してしまう。「3年3割問題」と言われる離職率の高さに繋がって、社会課題にもなっていますね。だから私も、意識高い系推進なんですよ。

椎木:まだ社会に出る前の卵と自分を甘やかさず、夢や将来を考える時間、それに向かって予定を前倒するクセを付けることが大事だと思います。失敗しないように安全策を取る、教育システムにも問題がある。社会に出たら誰もが失敗を味わうのだから、その経験も前倒しした方がいいと感じます。

教育とコミュニケーションを変えれば、夢を持つ子供が育つ

佐藤裕:この問題に一石投じるとしたら、何が大事だと思いますか?

椎木:教育をテコ入れするのは難しいと思うので、親子のコミュニケーションですね。普段の会話から、父親の会社や、そこでやっていることをきちんと伝えることが、すごく大事なんじゃないでしょうか。子供って、仕事で疲れて家にいる親の様子しか見ていないから、「働くこと」に興味を持ちづらいし、憧れを抱かないじゃないかって思います。

佐藤裕:それは、すぐにできる良い取り組みですね。実は、椎木さんも学校教育のなかでキャリア教育を受けていたって知っています?

椎木:そうなんですか!ほぼ記憶にない。

佐藤裕:そうですよね。

椎木:中学生時代に、企業の社長が学校に来て講演をすることや、工場見学みたいな実習がありましたが、そのことですか?

佐藤裕:そうなんです。一応、文部科学省の考えるキャリア教育の定義において、約8割がカリキュラムに組み込まれているというのが、彼らの見解なんです。社会のニーズとズレていますよね。そんなこと、親も子も求めていないじゃないですか。

椎木:これを取り組んでいるとするなら、とてもショック!正直、キャリア教育に熱い思いを持った教師も少ないですからね。こんなこと言って良いか分からないけど、社会人経験なく教師になる人が大半じゃないですか。

佐藤裕:そうなんですよ。そこも問題で。

椎木:私が通っていた高校では、芸能活動が許されていたんですが、ある日、担任に呼び出されて、起業していることが問題になったことがあって。

佐藤裕:芸能活動と、会社経営は違うと。

椎木:そうなんです。なぜダメか聞くと「大きいお金を動かすから」と言われて。心の中では「先生より今の給与高いけどね」と思ってました(笑)

佐藤裕:子供の頃からお金や社会の仕組みを学ぶ実践的な教育が必要だということを理解していないんですよね。教育先進国のフィンランドでは、かなり実践的なカリキュラムが組まれていて、小学校6年生になると仮想の街を体験できる施設で勉強することを義務化しているんですよ。

椎木:キッザニアの実習版のような場所なんですか?

佐藤:まさに、その通りで。その仮想の街には、飲食店もあるし、当然企業もある。ゴミ処理会社もあって、仮想中で代金のやり取りをして、収支の業績まで体験できる場所なんです。仮想の街での実践前後の学校でのインプットとリフレクション含めて時間をかけることで、幅広い業界から世の中やお金の流れが分かるという場所です。

椎木:子供を尊重してますよね。小学校6年生を、まだ幼いとバカにしてない。日本も、ちゃんと大人として、人間として教えてあげるべき。

佐藤裕:そうですね、座学ではなく実体験が人の興味を動かしますからね。こういった経験を幼い時にしておけば、就職活動前に、焦って夢を探すこともないのに…。

出来る限り早く社会に触れる必要性

今回椎木さんとお話させて頂いた感想はシンプルに「ピュアな人」。

これまでの経験や発信から少し尖ったスタンスで登場するかと構えていたが、22歳とは思えない落ち着いた丁寧な挨拶、時に普通の大学4年生のようなコミュニケーション、そして愛嬌。長らく社長業を出来ているのは彼女のピュアな人柄が大きいのだろう。

そして、幼少期から家族の影響を受けてビジネスに興味を前向きに持つという点は現代社会においては非常に重要なヒント。今や大学3年生の夏からインターンシップというレベルでは遅く、低学年時、理想は高校生と言われているが早期に社会・ビジネスに触れることが求められている。

ところが、学生の意識はそこにはなく「やらされている感」「意識高い系には思われたなくない感」が出ており本質的な学びにはならず、キャリアを考えることを遠ざける傾向はより強くなっている。

フィンランド教育に近いインプットを幼少期に受けた椎木さんが自分の未来やはたらくに夢を抱くのは難しいことではないことが今回良く分かった。若者は、とにかく近くてで「はたらくを楽しめている」ビジネスマンを捕まえて、はたらくのリアルを沢山教えてもらうことで自分がどこに興味を持つのか?今学生として出来る事は?という視点に変わっていきます。

意識高い系は自分と向き合っているだけ」自分の未来を早くから考える必要がある現代社会だからこそ、他人の声ではなく自分と向き合う時間をしっかり取って、素直な気持ちを大切にして欲しいです。そして一歩踏み出す勇気を持ちましょう、未来の自分のために。

はたらくを楽しもう。

株式会社AMF代表取締役社長 椎木里佳さん×はたらクリエイティブディレクター佐藤 裕 (撮影:中川 淳)
株式会社AMF代表取締役社長 椎木里佳さん×はたらクリエイティブディレクター佐藤 裕 (撮影:中川 淳)

椎木里佳

生年月日:1997/11/21

出身地:東京都

肩書:株式会社AMF代表取締役社長、YouTuber

2013年、中学3年生で株式会社AMFを設立。「女子高生社長」としてメディアに多数出演。女子中高生の流行マーケティングを主な事業とし、現役女子中高生からなる「JCJK調査隊」を運営。2016年、『フォーブス・アジア』による「フォーブスが選ぶ30歳未満の30人」を受賞。2017年より、「JC・JK流行語大賞」を毎年発表している。2019年よりYouTubeチャンネルを開設。慶應義塾大学で倫理学を専攻し、今年3月に同大学を卒業。著書に『女子高生社長、経営を学ぶ。』(2016年 ダイヤモンド社)『大人たちには任せておけない!政治のこと 18歳社長が斬る、政治の疑問』(2016年 マガジンハウス社)

佐藤裕

はたらクリエイティブディレクター

若者の“はたらく”に対するワクワクや期待を創造する活動を行う。これまで15万人以上の学生と接点を持ち、年間200本の講演・講義を実施。現在活動はアジア各国での外国人学生の日本就職支援にまで広がり、文部科学省の留学支援プログラム「CAMPUS Asia Program」の外部評価委員に選出され、グローバルでも多くの活動を行っている。2019年2月にはハーバード大学の特別講師を務めた経験を持つ。また、パーソルホールディングス株式会社ではグループ新卒採用統括責任者、パーソルキャリア株式会社 エバンジェリスト、株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、株式会社パーソル総合研究所客員研究員、関西学院大学フェロー、デジタルハリウッド大学の非常勤講としての肩書きも持つ。

新刊『新しい就活