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2020年4月入社向け新卒採用市場はすでに佳境を迎えている?揺れる20就職活動は年明けからどう動く?

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
すでに内定獲得をしている学生も珍しくない20新卒採用(写真:アフロ)

2019年4月入社をターゲットにした19新卒採用はまだ採用活動を継続している企業はあるものの、大手・ブランド企業は内定式を終えてゆっくり年末年始を迎える。と思われがちだが、現実は全く違う。年明けはすでに2020年4月入社をターゲットにした20新卒採用がスタートしているだけではなく「商戦期」「佳境」という表現を使う企業は少なくない。2019年3月の就活ナビサイト解禁から就活が本格化すると表向きには理解されているが、実態はどうなっているのか。

20新卒採用の動きは全国的にとにかく早い

2015年の就活時期ルールの大幅変更に伴って企業の動きが早まり19新卒採用からは就活生の動きだしも前倒しになったのは事実。ところが20新卒採用は企業も就活生も大学も過去にないほど動き出しが前倒しになっている。

20新卒採用の動向をエリア別で見ていこう。

例年3月の就活ナビサイト解禁からいよいよ就活モードに切り替わる北海道エリアは、この年末までに就活イベントや大学開催の就活講座が増加している。さらには1年生向けのキャリア講座にチャレンジする大学も出てきた。

東京・大阪エリアは、夏のインターンシップから就活本番というここ数年のトレンドを継続していて、この年末で複数社の内定を獲得している学生も珍しくない。

一方で名古屋エリアは、就活イベントについては例年通りに開催されているものの、就活生が意識高く前倒ししている層とまだスタートすらしていない層に分かれている。地元・メーカー志望の学生が多いエリアの傾向とも言える。

九州エリアは、福岡については夏からのインターンシップの増加に伴い学生の動きが活発になり前倒し傾向。一方南下すると、大学の前倒し意識に学生が追い付いていない。大学と企業が連携したイベントを開催しても過去最低の出席率になることも珍しくない。先輩達が「

ゆっくり就活」で「大手内定」を獲得した現実を目の当たりにしていることが大きな要因と現地では理解されている。そこに大きな落とし穴があることに懸念を感じる就活生は少ない。

20新卒採用はすでに佳境を迎えている?

全国的に見て就活生や大学の動きに違いはあるものの、意識としては前倒し傾向と言える。一方で企業側はどうなっているのか?

ここ数年の市場の変化で大手・ブランド企業でも新卒採用に苦戦したこともあり、20新卒採用はどの企業も戦略を練り直し、夏のインターンシップから本格的に早期母集団を確保して内定圏内の学生を全国でリストアップしている。実際に年明けであるこのタイミングで内定出しどころか入社意思を獲得している、さらには実際にアルバイトやインターン生として勤務をさせている、という企業も珍しくない。

大手やブランド企業の人事担当者は口をそろえて「年明けからが最後の大勝負」だと言う。

つまり、夏からのインターンシップで出会った学生の中でいかに採用枠を固めるかが採用全体を考えると勝負になるということ。3月に解禁される就活ナビサイトからエントリーし採用に至るのは4月以降になる。となれば1月から3月に就活ナビサイト経由ではないルートで採用人数を確保するかが戦略上重要になっている。

実際に外資系コンサルティング企業、ITベンチャーなどは年末で採用枠を埋めて20新卒採用を終えるという話はよく耳にする。

4月には就活生が消える?

年が明けて就活市場は活発になるのは明確だが、4月には街からリクルートスーツが消えるかもしれない。

19新卒採用でもあった傾向だが、1月から3月の間に「入社してもよい」と思える企業の内定を獲得した学生は4月あたりから活動を休止する。6月から面接をスタートする大手やブランド企業を最後の就活と考えて休息を取るからだ。

多くの企業が3月までには内定出しをすることもあり、就活生は意中の企業の内定を持っている安心感もあって最後に難関の大手・ブランド企業で勝負をして終わろうと考える。そのため4月から5月にかけて市場で学生が動かなくなることが予想される。それほど、就活市場の前倒し、企業の内定出しの時期の変化が起きているということだ。

年始の過ごし方で勝負が決まる?

そんな就活市場を学生はどのように戦えばよいのか?

年始は企業の動きはないため、就活生も一旦お休みということになるが、そんな中でもおすすめしたいのは「情報の整理」だ。古い就活の主流であった自己分析や面接対策、業界研究、ES添削ではなく「未来志向」を軸に情報を整理したい。

今の就職活動、キャリアデザインは、過去にあった出来事、憧れ、性格などでは判断が出来なくなっている。大事なことはやはり「これからの市場の変化をいかに読み取るか」になってくる。労働人口の減少、AIなどのテクノロジーの進化、はたらく価値観の多様化などを踏まえて自分自身が50歳になった時のはたらく環境は?という視点を整理するだけでもファーストキャリアの選択軸は変わるはず。

「やりたいこと、いきたい業界」ではなく未来志向から紐解いた「やるべき」が見つかるはずだ。

「どこで何をするか」ではなく「どこで何を身に付けるか」という視点で考えられるように、年始の時間を使って「未来志向」を鍛えてみてはどうだろうか。

はたらくを楽しもう。

はたらクリエイティブディレクター

はたらクリエイティブディレクター パーソルホールディングス|グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクトCAMP|キャプテン、ベネッセi-キャリア|特任研究員、パーソル総合研究所|客員研究員、関西学院大学|フェロー、名城大学|「Bridge」スーパーバイザー、SVOLTA|代表取締役社長、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program|外部評価委員などを歴任。現在は成城大学|外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学|客員教授、デジタルハリウッド大学|客員教員などを務める。 ※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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