Yahoo!ニュース

新型コロナウィルス感染拡大防止のために、ソーシャル・ディスタンシングを意識した生活のススメ

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授
(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウィルス感染拡大防止のために、様々な対策が取られている中、日本ではまだあまり聞かない言葉に、「ソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing:社会距離戦略)」という手法がある。

 この動画にあるように、オーストラリアでは、会話をする時や列に並ぶ時に、人と人との距離を1.5メートル以上取るよう推奨している。

Social distancing for coronavirus (COVID-19)

Keep your distance

One way to slow the spread of viruses is social distancing (also called physical distancing).

The more space between you and others, the harder it is for the virus to spread.

出典:Australian Government

 米国でも、ソーシャル・ディスタンシングの強化がニュースになっており、他人との距離を6フィート(およそ1.8メートル)以上とるようにと呼びかけられている。

A new beat for police across US: Enforcing social distance 

Police departments are taking a lead role in enforcing social distancing guidelines that health officials say are critical to containing COVID-19. Along with park rangers, fire inspectors and other public servants, officers more accustomed to chasing suspects and solving crimes are spending these troubled days cajoling people to stay at least 6 feet apart.

出典:March 27, 2020 (Mainichi Japan)

 ロイターの「Social distancing to prevent coronavirus spread」( 2020年 03月 27日 21:05 JST) の記事では、食料品店での待ち行列で間隔をあけて並んでいる様子や、レストランの座席が間隔をあけて設置されている様子がわかりやすい写真で示されている。

ロイター (『Social distancing to prevent coronavirus spread』) より
ロイター (『Social distancing to prevent coronavirus spread』) より

 Japan Timesの記事でも、「ソーシャル・ディスタンシング(社会距離戦略)」は感染を防ぐ重要な手段であり海外では広く意識されているのに、日本ではまだあまり知られていない、と危機意識が示されている。

Japan needs to get serious about social distancing

The term “social distancing” has spread through English conversation as fast as the new coronavirus has, but among Japanese friends it’s still a pretty foreign concept. That’s unfortunate, since it’s touted as one of the key weapons in our counter-COVID arsenal.

出典:the japan times ( Mar 27, 2020 )

人と離れて立ち、人から離れた席に座る「離立離席」の意識を

 日本でもスーパーでのトイレットペーパーや米などの食料品の買占めなどが話題になっているが、こういった「ソーシャル・ディスタンシング(社会距離戦略)」を意識した行列を私はまだ見たことがない。行列の間隔を少し広くするだけで、かなり感染の危険を下げることができるのではなないだろうか。また、首相官邸における記者会見や会議の様子をみても、席を離す配慮がなされているようには見えない。椅子を並べるときには十分間隔をあけることを日本中で徹底するべきであろう。

 4月からの新年度、小中学校や高校・大学、そして会社などの企業がどのような形で始まるのかわからないが、こういった「ソーシャル・ディスタンシング(社会距離戦略)」を少し意識するだけで危険を減らすことができるであろう。

 周りの人から少し離れて立ち、少し離れた席に座る「離立離席」。これを一人一人が意識して徹底するだけなら、今すぐにでもできる。

 小さな子どもたちには、お互いが両手を広げて手が届く範囲にはなるべく近づかないよう、意識させるといいだろう。子どもたちが「おててフリフリ運動」をしながら歩くだけで、子どもたちへの拡散を減らすことができるかもしれない。

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

五十嵐悠紀の最近の記事