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インターネット接続で変化する子どもの遊び

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授

冬休みも始まっていかがお過ごしでしょうか。クリスマスやお正月。たくさんのイベントがあるこの時期は毎日が慌ただしく過ぎていきますね。

さて、我が家の子どもたちは、クリスマスプレゼントにトミカのドクターイエローのプラレールを祖父母からもらいました。通常のプラレールと違うのは、このドクターイエローには運転席と車窓にカメラがついていて、インターネット接続でカメラの映像をスマートフォンやタブレットから見ることができるというもの。2016年10月発売の商品ですが今はAmazonで発売当初の半額にまでなっていたことがきっかけでした。

このドクターイエローがきてから、プラレールの線路の高さにまでうずくまりながら電車を走らせて遊ぶ従来の遊び方から、スマホを見ながらカメラ映像を楽しむといった遊びに変化したのでその様子を紹介しようと思います。

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ディスプレイを使って迫力映像。車窓からの眺めデザインに遊びが変化

最初は小さなスマホの画面に頭をくっつけて同じ画面をのぞき込んでいた子どもたち。ディスプレイにスマホを接続してあげると、自分たちの組み立てたプラレールを走る車窓や運転席の画面が大きな画面で表示され、大喜び。

線路だけでなく、横にぬいぐるみを並べてみては、「巨大すぎて映ってないよ!」と大はしゃぎ。低い位置にシルバニアファミリーを並べてみたり、置き方を工夫したりと、これまでは線路のルートづくりに興味を持っていたのが、車窓からの眺めのデザインに凝りだします。

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こんな風に並べると、運転席カメラからは…

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ズン!と見えてきます。いろいろ試行錯誤した結果、シルバニアファミリーの赤ちゃんたちがいいサイズ。

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ときどき巨大ぬいぐるみも映り、大爆笑が起こります。

メルちゃんの傘を相合傘にした、リカちゃんとハルトくん(リカちゃんのボーイフレンド)がいたりと、もうすべてのおもちゃがごちゃ混ぜ状態です(笑)

線路の経路推測ゲーム

そのうち、7歳の兄と4歳の妹がプラレールの線路を組み立て、そこに走らせたドクターイエローの運転席からの映像だけを見て、10歳の長兄が「弟妹がどんな線路を組み立てたかを推測して紙に経路を絵で描く」というゲームが始まりました。トンネルを潜り抜けた、線路を渡った、カーブを左に曲がった、などの情報からコースを推測して頭の中で組み立てていきます。単純な形だとすぐにわかってしまうので、弟妹は兄が頭をひねるよう、さらに頭をひねり、工夫します。

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このように、同じ『プラレール』という電車型のおもちゃであっても、インターネットにつながるかつながらないかで遊びの幅が異なってくるのを実感しました。

進むIoT化

IoT(Internet of Things)という言葉を聞いたことはありませんか。コンピュータやスマートフォンなどの情報通信メディアだけでなく、身の回りのあらゆるモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり、相互に通信したりする世の中がやってきました。これにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などが可能になります。私たちの家庭内にあるような身近なものでさえ、様々なモノがインターネットにつながり、スマートフォンやタブレットから操作可能になっています。

例えば、インターネットにつながったカーテン「めざましカーテンmornin’」では、自分の生活リズムに合わせてスマートフォンで設定した時間に自動でカーテンを開閉することができます。太陽の光を浴びて身体を起こすことができるのです。

また、スマートフォンから照明のオン・オフ、明るさや色の変更などができるLED電球「Philips Hue (フィリップス ヒュー)」も発売されています。ダイニングで子どもが勉強するときには明るい白色、夜子どもたちが寝た後で、夫婦でワインを飲むときにはムーディーな暖色といったように同じ電球で色を変更することができます。スマートフォンの位置情報と連動させることで、外出時の電気の消し忘れ防止や、家の近くまで帰ってきたら自動的に部屋を明るくしておくといったことまでできます。

スマホとつながる乾電池「MaBeee(マビー)」は見た目の形状やサイズは単3形乾電池と同じなのですが、インターネットにつながるようになっており、中に一回り小さい単4形乾電池を入れて使用するような電池です。スマートフォンから電池のオン・オフを制御したり、電池の電流を操作することで、市販の電池で動くおもちゃを違った遊びへと発展することができます。

新しい使い方を考え、提案していくのは子どもたち

身の回りのあらゆるものがインターネットにつながり、身の回りの生活や遊び、これまでの常識などが変わっていく時代がやってきています。そしてこれからの世代を支える子どもたち世代がこういったものの新しい使い方を考え、提案し、生活を変えていくのです。

普段の遊びの中から、ちょっとしたきっかけで、新たな遊びを発見する力を養っていけるような、そんなおもちゃや小道具を時々投入している我が家でした。

(この記事はEnfani からの転載です)

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

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