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【アジアカップ】韓国 マレーシアと引き分けに批難集中砲火 「日本とは違う時計の針を合わせている」

写真はグループリーグ第2戦 ヨルダン戦時のもの(写真:ロイター/アフロ)

衝撃的なドローだった。1月25日に行われたカタールアジアカップグループリーグE組の最終節。韓国はFIFAランキングで107下回るマレーシアにまさかのドロー。グループ2位で決勝トーナメントに進出することとなり、1回戦での日韓戦は実現しなかった。

この結果に対し、韓国メディアは怒りの集中砲火だ。

「決勝トーナメント進出は果たしたが…韓国、歴代グループリーグ最多失点の屈辱」(「ノーカットニュース」)

日本のグループリーグでの計5失点もなかなかだが、韓国は計6失点を喫した。初戦のバーレーン戦で1、ヨルダンで2、マレーシアに3。マレーシア戦は被シュート数7で3失点。「打率」に換算すると.428だった。

「『64年ぶりのアジア頂点への挑戦』という言葉が恥ずかしい 韓国サッカー、これ以上『ゴールデンタイム』は続かない」(「スポーツ朝鮮」)

韓国では今大会のメンバーが『自国史上最強』との声がある。前線にソン・フンミン、中盤にイ・ガンイン、守備にキム・ミンジェの「ビッグクラブライン」。さらに前線にはファン・ヒチャンも。この「良いメンバー」の時代に、何をもたついているの? という怒りだ。

「グループ1位目指した? クリンスマンの最悪の判断... ソン・フンミン+イ・ガンイン' 3試合フルタイム→体力管理失敗+イエローカードも8名」(4-4-2)
「日本、グループリーグで大きな負傷なく、体力も備蓄…トーナメントにコンディションの時計を合わせた クリンスマンとは違う』(「スポーツソウル」)

ユルゲン・クリンスマン監督のチームマネジメント・手腕・態度にも批判が集まっている。まずはチームマネジメントについて。グループリーグ3戦を戦うにあたり、「4-4-2」が指摘するようなリスクを回避できなかった。全力でやって、結果も伴わずという評価だ。すでにイエローカードをもらい、累積欠場に「リーチ」となっている8人は以下の通り。主力級も多い。

ソン・フンミン、チョ・ギュソン、ファン・インボム、キム・ミンジェ、オ・ヒョンギュ、パク・ヨンウ、イ・キジェ、イ・ジェソン。※準々決勝終了時点で警告累積の換算はゼロに戻る。

韓国はグループリーグを全力で戦った結果、恥をかいた。いっぽう「スポーツソウル」は日本が「決勝トーナメントからアクセルを踏む」という戦略を取っていると見なしているようだ。

深刻さを自覚してない? クリンスマン 笑いながら記者会見「ポジティブな部分が多かった」(「インターフットボール」)
批難に口を開いたソン・フンミン「選手である前に人間…動揺しないでほしい」(「朝鮮日報」)
「クリンスマン 無戦術で選手たちは各自奮闘…韓国サッカーの惨状」(「OSEN」)

試合後クリンスマンは開口一番で「6ゴールが決まる迫力のある試合だった」と語り、余裕を見せた。さらに「ポジティブな部分」としたのが…前出の「4-4-2」が批判した「イエローカード」についての点だった。

「試合前にすでに7人が警告を受けていたが、これらの選手がこの試合で警告を受けなかった。トーナメントでの出場停止を回避できたのはポジティブな点」

そして、やはり出てきたのは日本も絡めての批判だ。

「ライバルのイラン・日本は向上しているのに…韓国、繰り返される拙劣な試合で恥辱」(「ニュース1」)
「韓国は日本を恐れているのか? 渋い試合の後にクリンスマンのチームに向けられた気骨ある冗談」(同)

後者は、現地取材している同メディアの記者が試合後にイラン記者と交わした言葉を引用したもの。「日本を恐れて引き分けたんでしょ?」という冗談をぶつけられたという。

最後にやはり、この点を忘れてはならない。マレーシアを称える内容だ。

「確実なカラーで韓国にプレスをかけたキム・パンゴン vs. 戦術不在-個人の力に依存クリンスマン 両監督の力量の差は歴然としていた」「スポータルコリア」

試合中継をご覧になったファンもお気づきだっただろう…マレーシアの監督は韓国人だった。キム・パンゴン氏は選手時代の00年代前半に香港で活躍。2018年W杯後には大韓サッカー協会の副会長および新監督選委員長の立場から、パウロ・ベント(ポルトガル/現UAE代表監督)の招聘を行った。当時は第5~6候補といったところだったが、結局は元ポルトガル代表監督でもある同監督の「韓国で名を挙げ、欧州のメインストリームに復帰」「批判に耐えポゼッションサッカーを貫く」という姿勢が成功。カタールW杯後、キム・パンゴン氏も国内での評価も高まっていた。ただし、当の本人は2021年1月にマレーシア代表監督に就任。コツコツと自分のカラーをチームに植え付け、この日母国を相手に「価値あるドロー」を披露してみせたのだった。

筆者から一言だけ見解を言っておくと、問題はクリンスマン監督自体にもありそうだが、その根本は大韓サッカー協会がはっきりと「カタールW杯後にどういうサッカーを志向するのか」を宣言しないことだ。

同大会では韓国サッカー史上初めて「ポゼッション(韓国では『ビルドアップ』と言う)」を掲げたパウロ・ベント監督の下でベスト16入りを果たした。既存の強さ・速さなどで勝負するスタイルとは違うものだった。数十年にわたり取り組んできたことを変換するのは大きな

これを継続するのかしないのか。ユルゲン・クリンスマン監督を選定した際にはその考えは明らかにされず、また同監督も2023年6月の会見で「攻撃的サッカーを好む」「少し時間がかかる」という話をしたくらいで、どんなサッカーをしようとしているのかが分からない。どこに行こうとしているのか、現在地はどのへんなのかも分からないから、混乱に陥っているのだ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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