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【韓国】W杯ベスト16で選手ギャラはいくら? 大統領が協会に"恐怖の圧力" 「日本より多い」の声も

(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

"ワールドカップベスト16で選手は報奨金をいくらもらえる?

カタールW杯で12年ぶりのベスト16入りを果たした韓国では、これを巡ってちょっとした論争が起きている。この週末、24日にもあれこれと関連情報が報じられているのだ。

まずは12月8日と9日、大統領が連日、選手の報酬について言及する一幕があった。8日に当のカタールW代表杯代表チーム、翌9日には経済団体を旧大統領官邸・青瓦台に招いての晩餐会でこう発言したのだ。

「選手が頑張ったのになぜ、大韓サッカー協会がFIFAからの賞金を多く持っていくのか」

「スタービジネスの成功は何より正当な報奨から始まる」

権力者の発言恐ろし、といったところだ。

大韓サッカー協会は「W杯報奨金だけでは赤字補えず」

何について話しているのかというと、FIFAから受け取る賞金の分配についてだ。

大韓サッカー協会にはベスト16の賞金として約169億ウォン(約17億6000万円)が授与された。

大韓サッカー協会側はこれを「協会50:選手全体で50」に配分すると定めていた。昨年5月の協会理事会で決定した比率だった。

ここに噛みついたのが尹錫悦大統領だった。

「サッカー協会は広告協賛金のような積立金が多いのに、選手に入る報奨が少なすぎる」(同晩餐会にて)

協会側は約169億ウォンの50%である85億ウォンを「代表チーム運営費用」に充てる考えだった。

しかしだ…「週刊朝鮮」は大韓サッカー協会にとってこの金額はすでに「足りない」状態だと報じている。カタールW杯までの経費を考えると、赤字なのだ。

パンデミックによるFIFAからの借入金返済=16億ウォン(約1.7億円)。

カタールW杯アジア予選代表チーム運営費=46億ウォン(約4.7億円)。

W杯予選突破の選手への報奨金=33億ウォン(3.42億円)。

本大会代表チーム運営費=33億ウォン(同)。

合計128億ウォン(約13.3億円)。

単純計算でも43億ウォン(4.46億円)の赤字だ。

現在より行動規制が厳しかった時期のW杯予選にも多くの経費がかかかった
現在より行動規制が厳しかった時期のW杯予選にも多くの経費がかかかった写真:ロイター/アフロ

いっぽう、選手は一人あたりでいくらくらい受け取るのか。「週刊朝鮮」はFIFAの基準を基にこう算出している。

本大会最終エントリー入り=2000万ウォン(約207万円)

本大会で勝利=3000万ウォン(約310万円)

同引き分け=1000万ウォン(約103万円)

プラスその他報奨金 

小計 一人あたり=2億1000万ウォン(2190万円)

ただし、ここまではあくまで小計だ。

プレッシャーに対し協会会長の打った手は... 

尹大統領による追い打ちをかけるような発言は続いた。13日にも国会で

「我々は試合の結果についてのみ、会話を交わすが、その過程で選手が正当な補償を受け取れるようにシステムを点検する必要がある」

と発言。大韓サッカー協会側にプレッシャーをかけた。

するとこれに対し…大韓サッカー協会チョン・モンギュ会長がポケットマネー20億ウォン捻出を決めた。これにより選手一人あたりが受け取る金額がこう変わった。

合計 一人当あたり=2億8000万ウォン~3億4000万ウォン(約2900万円

3520万円

チョン・モンギュ会長。2016年当時
チョン・モンギュ会長。2016年当時写真:ロイター/アフロ

協会会長のポケットマネーというのは、チョン・モンギュ会長はかのHYUNDAI創業者の甥であり、系列のHYUNDAI産業開発(HDC/現在は厳密にはHYUNDAI系列外)会長まで務めた人物だからこそ可能なこと。

2018年の7月のパウロ・ベント監督招聘時には「外国人スタッフの雇用費用に使ってほしい」と私財40億ウォンを投じた前例もある。

「聯合ニュース」は、この「最大3520万円」について、17日に「日本やオーストラリアより高い水準」と報じた。「中央日報」はベスト16入りしたAFC加盟3国を比較し韓国を「決して少なくない金額」とも。同紙は日本の一人あたりの報酬を「50」と定め、これに対し韓国は「54.6」でオーストラリアは「43.1」であると算出した。

26日、これとは別にHYUNDAI自動車が運営する全北現代モータースが、大会に出場した所属6選手に「母体企業からの別途ボーナス支給」とも報じられた。その金額、一人当たり4000万ウォン(414万円)。キム・ジンス、チョ・キュソン、キム・ムヌァン、ペク・スンホ、ソン・ボムグン、ソン・ミンギュが受け取った。

サッカー協会は大統領に睨まれている!?

また、大韓サッカー協会は今大会の「背番号のない選手」の報奨金問題も片付けた。当時はナシとされたバックアップメンバー、FWオ・ヒョンギュ(水原三星)に対してのものだ。

185センチ、21歳のストライカーは「前線の万能型」と言われ、柔軟な技術と高い守備意識で評価される。大会前までの代表キャップは1で、2022シーズンはKリーグで36試合出場、13ゴールを記録した。大会前に顔面骨折の怪我を負ったソン・フンミンの「緊急時の代役」とも見られていた存在だ。

15日、出場機会のなかった彼に対しても「6000万ウォン(約620万円)の報奨金を払う」と発表した。

それでも…韓国で囁かれているのは、「大統領と協会側の不穏な空気」だ。

なんと8日のW杯メンバーの晩餐会にはチョン・モンギュ会長と政府の管轄部署である文化観光体育省の長官が招待されなかったのだ。

尹大統領は晩餐会でこうも発言したという。

「サッカー協会の状況はよく知っている」

24日、「中央日報」は一連の発言を「単純なハプニングではない」と報じた。晩餐会への「招待パス」は2023年のアジアカップ誘致失敗(カタールに決定/実際には2024年1月開催が有力視される)を「スポーツ外交の失敗」として尹大統領が快く思っていないとの説を唱えた。

なんでも昨年6月からこれが始まっているという。プレミアリーグ得点王のソン・フンミンに体育勲章を授与するために大統領がブラジルとの親善試合を訪れた(ソウルワールドカップスタジアム)。

そこで大韓サッカー協会側は大統領に「2023年アジアカップ誘致を行いたい」と相談。「ソン・フンミンがいるときにホームで63年ぶりの大会優勝にチャレンジしたいのです」と持ちかけた。大統領はこれを快諾。なぜなら任期中に国内でのメガスポーツイベントの開催予定がないからだ。

しかし…カタールの急浮上を読みきれず、10月7日、誘致決選投票で敗れた。のみならず、今年1月にチョン会長がトップを兼任したHDCのマンション建設工事現場が崩壊事故を起こした点も悪印象。こういった点からも「大統領の心象が悪い」との憶測を呼んでいる。

この先、大統領と協会側でひとヤマあるだろうか。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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