謎のコスタリカ? 9月に対戦した韓国の記者は見た「基本、守備ラインはめっちゃ低いです」
W杯の大会前、コスタリカの親善試合が中止になったのだという。なんでもイラクアウェーで対戦する際にパスポートの問題が発生した。イラク滞在のスタンプが押されると、米国に入国しにくくなるという事情だという…。
日本はグループEにあって、多くがドイツ・スペインを見ている。当たり前だ。特にドイツに関しては1968年のメキシコ五輪時代から「日本がサッカーを教わった国」。70年代後半からは奥寺康彦が活躍し、90年代にはJリーグのロールモデルとなり、2000年代以降は多くの日本選手が活躍…。ドイツの対戦は現時点で保証されている「今大会の意義」だったりもする。
しかしだ。冷静に見てグループリーグ突破のための”必須条件”が忘れられがちだ。
コスタリカ戦に勝つこと。
そこを前提にドイツやスペインとの話もある。逆に11月27日19時開始のこの試合で勝ち点3を取れなければ、次への挑戦権もない、とすら言える。
なのに、直前の親善試合の情報が取れなくなったのだという。
W杯に向け、ベテランと若手の融合を模索
そこでコスタリカ関連情報を。
同国は9月23日にソウル郊外の高陽市で韓国と戦っていたのだ。結果は2-2のドローだった。
韓国の猛攻を凌ぎつつ、しぶとく2ゴールを挙げドローに持ち込むという展開だった。
28分、右サイドの攻撃から韓国に先制を許す。続く猛攻を凌いで迎えた41分、右サイドから左足でゴールに向かうクロスを韓国DF陣がクリアしきれず。ファーサイドに流れたボールをジェウィソン・ベネット(サンダーランド/イングランド)が押し込んだ。
63分には勝ち越しにも成功した。中盤でボールを奪ったジョエル・キャンベル(クラブ・レオン/メキシコ)がそのまま持ち上がって左に展開。浮き球を一度は韓国GKに阻止されるも、ゴール前にこぼれたボールをベネットが再び押し込み、リードを奪った。その後も再び韓国の猛攻を受ける中、80分にボックス外でGKがハンド。退場処分となったうえにソン・フンミンにFKを決められ、ドローとなった。
「試合前の会見で、当然の如くルイス・フェルナンド・スエレス監督には『日本戦の準備でしょ?』という質問が多く飛んでいました。しかし本人は前日会見でこう言い切ったのです。『韓国は日本とサッカースタイルが違う』」(韓国のサッカー専門誌「ベストイレブン」のキム・テソク記者)
韓国はパウロ・ベント監督の下、「ビルドアップ」にとにかくご腐心。日本は状況に応じてポゼッションとカウンターを使い分けるスタイルだ。余談だが「日韓は違う」という話、6月に日本と対戦したガーナのオットー・アッド監督も言っていた。ガーナはW杯本大会で韓国と対戦する。
また、韓国を訪れた自国メディアから「韓国戦のメンバーをどう考えているのか?」と聞かれ、こうも。
「W杯に向けて若い選手をテストしている、ベテランの多いチームに刺激を与えるためだ」
大会3ヶ月前にして、まだまだメンバーを固める、といったことはない。そういった意味だった。大会直前まで変化を与えながら、チーム力を育んでいくということでもある。
韓国戦先発メンバーは「全員最終エントリー入り」
かくして9月の韓国戦先発メンバーと、11月現在のW杯最終エントリーリストを比較してみた。
11人すべてがエントリー入りしている。ただし韓国戦ではGKのケイラー・ナバス(パリ・サンジェルマン/フランス)は欠場。遠征自体に参加しなかった。
「試合ではサブGKのエステバン・アルバラド(エレディアノ/コスタリカ)の稚拙な守備もあって韓国から2失点。このGKは日本戦には出てこないでしょう。日本にとっては参考にならない点ですね」(前出のキム記者)
とはいえ、11人中10人が最終エントリー入りした、というメンバー構成だった。
「堅いブロック」が見せた一瞬のスキ
試合は上記の通り「ずっと韓国がコスタリカを攻める」という展開になった。
「コスタリカは基本的にかなりラインが低いですよ。韓国戦ではFWはプレスをかけてこかなかった。じゃあどう戦うのかというと『最終ラインとボランチの間をかなりコンパクトにして、そこでボールを刈り取る』んです」(キム記者)
確かにこの日、韓国はソン・フンミンを中心とした攻撃で幾度もペナルティエリアにボールを持ち込んだが、ボランチとCBの「密集」に捕まった。
「日本もまた、守備ラインを引っ張り出す、という動きが必要でしょう。ミドルシュートを入れていく、といったことです」(同)
この日の韓国の先制点には”大いなるヒント”がある。
右サイドバックのユ・ジョンギュが右足で内側に切れ込むドリブル。マイナス気味のボールを入れた時…一瞬コスタリカのボランチのラインでの対応が遅れた。スキを突いて中央からファン・ヒチャンが左足でミドルシュート。これが決まった(上記動画2分44秒)。
まあコスタリカとてここは韓国戦の教訓も活かし「徹底的に締めてくる」か。
「別のことをやってくる」点も要警戒
いっぽう、コスタリカは攻撃に転じると「左サイドが全般的に速い選手がいた」。そしてある戦略を相手国メディアにも感じさせたのだった。
「左右どちらかに弱点を見つけ、そこを徹底的に突いてくるという戦いぶりでした。この日の韓国代表は、右サイドバックがA代表初キャップの選手でした。コスタリカはカウンターからそこを突いてきたんです」(同)
確かに41分と63分のゴールはサイドチェンジを織り交ぜつつ、右サイドを経由させてのものだった。
「こぼれ球から2ゴールを挙げたジェウソン・ベネット(サンダーランド)については…じつはちょっと特徴が分かりにくかったです。一方長年チームの看板選手であり続けているジョエル・キャンベル(クラブ・レオン/メキシコ)は、スピードは落ちているものの、老練。韓国戦でもゴールの起点となるプレーを見せていました」(同)
コスタリカ侮るなかれ。キム記者は「韓国もまた『第2戦の中堅国』との対戦で痛い目に遭ってきた」からだという。
「コスタリカだって『日本には勝てる』と思って挑んでくるんじゃないでしょうか? 韓国も2014年ブラジルW杯の第2戦、アルジェリア戦で痛い目に遭っています。相手が分析とまったく逆のことをしてきたのです。当時の相手の監督は…かのハリルホジッチでした。コスタリカも奇襲的に高いラインを取って攻撃を仕掛けけてくることもありうるのでは? そう見ています」
日本代表の森保一監督は就任当初から「ロシアW杯での攻撃的スタイルに、速攻を織り交ぜた臨機応変なスタイルを加える」と公言してきた。コスタリカ戦こそ腕の見せどころ、となりそうだ。