北朝鮮ミサイル発射 「意図的に遠くに飛ばした理由」 韓国の専門記者の目
4日朝の北によるミサイル発射。
韓国の専門記者はどう見ているのか。
元中央日報記者として北での100回以上の取材歴があり、現在は(社)韓国国家戦略研究院北韓研究センター長および「ニュースピム」の統一問題専門記者として活動するイ・ヨンジョン氏(高麗大学博士)に話を聞いた。
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射程距離も高度も5年前よりアップ
今朝の日本での反応、韓国でも報じられました。日本政府やメディアが「5年ぶり」と伝えている点が報じられました。
確かに北は、5年前の2017年9月15日に
射程距離3,700km
頂点高度770km
最大速度マッハ17
という規格で「火星12号」の実験発射を行ったことがあります。
いっぽう今朝の発射は「火星12号IRBM」と評価するのが妥当です。第一段階のロケットモーターの燃焼直後は
射程距離4,500km
頂点速度970km
最大速度マッハ17
で、正常起動に乗った。それゆえIRBM=中距離弾道ミサイルと評価できるのです。
北が今回新たに見せた技術は「弾頭部分の重量を減少させることにより、上昇角度と飛距離の調整が可能になった」という点です。
おそらくこの5年間で液体エンジンの性能を最適化したことにより、飛距離の性能も一部改善したのでしょう。飛行時間は以前と近い22分~23分程度と予想され、日本列島通過時間は発射後6~7分かかっていると思われます。単一の白頭山エンジン(旧ソ連のRD-250双子エンジンに基づく液体燃料エンジン)が使用されたのでしょう。
北の狙い「合同軍事訓練への抗議」「10月10日の記念日」
韓・米・日の合同軍事訓練(9月30日に発表)などに対する北の不満が極度化した状況で、北としては危険水位を高め、果敢に日本列島を渡る実験を行ったものと判断できます。
通常、北は政治外交的な問題を考慮し、高角度での発射を通じミサイル発射実験を行ってきました。つまりは「高く射って」「遠くに飛ばないようにしてきた」ということ。
しかし今回は中距離ミサイルの正常起動発射を行った。つまりは「遠くに射った」。意図的に挑発の度合いを高めたいという意志の表現だと見られます。
正常起動で発射したということは、弾着の方角を考慮したということ。つまりは着弾の場所によってアメリカと日本それぞれが感じる危険性の違いがあることを考えたのです。
また北朝鮮は10月10日に労働党創建77周年の記念日を迎えます。しかし、これに関して大規模な軍事パレードや集会の準備動向が捉えられていません。今回はこのミサイルによる軍事挑発で金正恩のリーダシップを発揮し、体制の結束を高めようとしているとも見られます。
ここ20日以上、金正恩の動静が伝えられていません。静かに策を練っている、とも捉えられます。韓国の国家情報院は16日の中国共産党大会と来月頭からのアメリカの大統領選中間選挙機関中に北朝鮮が7度めの核実験を行う公算が高いと、韓国国会に報告もしています。
問題は「韓米日による圧力が北に通じていない」という点です。9月には3国が空母打撃群での武力を見せつけてまでプレッシャーをかけた。北にミサイルや核による挑発をやめさせる示威行動を見せたのです。しかし、北朝鮮はすぐにミサイルの挑発に出るという前例のない挑発の様相を呈しています。
状況は非常に複雑になっている、と言えます。4日に私自身が話を聞いた専門家、パク・ウォンゴン梨花女子大教授も核実験を危惧しており、「今回の北のミサイル発射により、韓米日の3国は『いかなる核実験を行っても、こちらはより強い対応に出る』という点を示さなくてはならなくなった」と話しています。
(了)
参考記事(筆者による) 日本の「遺憾砲」 朝鮮半島でのリアルな"効き目"はどれほど?