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BTS兵役問題 4月に決着つかず なんと韓国国会では「まったく話し合ってなかった」

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

理由は「大統領選挙で忙しかった」からだという。

韓国内で「4月じゅうに決着か」とされてきたBTSの兵役免除に関する話。実際にHYBE側も、"担当"の国会議員もきょう29日をひとつのデッドラインに定めていた。

しかしじつは韓国国会で5ヶ月もの長期間に渡り「国会で一度も話し合われてこなかった」ことが分かった。それも本会議に入る前の委員会での話し合いがなかったのだという。4月18日に韓国メディア「YTN」が18日に単独で報じた。そしてきょう29日の夕方を迎えたが、その後韓国国会で話し合いが行われたというニュースは伝わってきていない。29日15時44分に大手紙「朝鮮日報」が「BTS兵役法、結末はいつ?」という記事を掲載したほどだ。

なぜそういうことになったのか。

参考記事:「4月中に決着か」 BTSと兵役 いま韓国で何が起きているのか ①分岐点になるか「ラスベガス会見」(筆者による)

  • ニュースを報じるYTN

昨年11月に「保留」。その後「世論の情報収集」と宣言したが…

「BTSメンバーの徴兵免除」※が韓国国会で最後に話し合われたのは昨年の11月25日だった。

最終的な決定を下す「本会議」の前の段階である「委員会(国防委員会・法律案審査委員会)」で話し合いが持たれた。

そこで出された結論は「保留」。つまりもっと議論を続けるというものだった。議論、とは具体的には「世論がどうなのかもっと確かめていくこと」。

本件、いちばん重要なのは「世の男性の気持ち」だ。つまり「俺は軍隊に行く(行った)のに行かない人がいるのは不公平」という感情に対する配慮。これによって「若者の士気が下がる」「すでに行った人の不公平感が増す」という点を最も避けなければならない。

参考:「BTSの徴兵免除」”担当者”の次期韓国国防大臣が見解。必要条件とした「国民的共感」とは? (筆者による)

韓国はまた、世界で最も速いスピードで少子高齢化が進んでおり、「兵のなり手が減る」という心配がある。若い人の「兵役への不公平感」は国家の根幹に関わる重大事なのだ。実際に年々「免除」の対象は減っている。

※免除の対象として現状の伝統芸能・体育の一定以上の実績者のほか「大衆芸能」を加える法案通過。

国会議員は「やらなかった」。軍部は「動けず」。その理由は? 

しかし、その「世論を確かめる」「その情報をもって(国会の委員会で)話し合う」という国会議員の仕事すら行われていなかった。

「YTN」の報道により、昨年の11月25日の最後の話し合いの際に、委員会のトップが6度も繰り返して 「論議の場を設ける」としたが、その約束は守られていないことが分かった。18日の「YTN」は「公式的な世論収集の手続きすら一度も行われていないことがYTNの取材結果で明らかになった」としている。

国会で世論の情報を収集する方法のひとつに「公聴会」がある。これは韓国政府の国防部(国防省つまりは"軍部")も参加して行うものだ。

国防部側がこれが開けない理由は「国民の間でも賛否が真っ二つに割れていて、どちらの立場からも強い批判が集まることが予想されるから」(YTN)。

また韓国国会の国防委員会は、与野党に関係なく7人のメンバーがいるが、いずれも「3月9日の大統領選挙に忙しく、この点に気を払えなかった」とYTNの取材に答えている。

やる、と言っておきながらやってこなかった。この点をYTNは問題視しているのだ。

では「4月中旬以降に集中的にやればよかったのでは?とも思えるが、そういう話でもない。

18日の時点で法の改定の現場となる国防部(省)の立場は「十分な世論の情報収集なしに拙速な判断は行われるべきではない」。

しかしいっぽうで改定を議論する国会議員の立場は「4月中に議論を終わらせる」というものだった。韓国国会国防委員会のソン・イルジョン議員は4月11日のメディア出演時にこう話している。

「改正の妥当性については、委員会のすべての議員が同意している。国防省の官僚は躊躇しているところ。4月中に再び法案小委員会を開いて、結論を出すことに…」

拙速でやるな、と言われながらも国会では5か月間"放置"。4月にはメディア・政界も盛り上がりを見せたが、これはじつは"空砲"だったのだ。YTNのスクープはこの点も暴いたのだった。

必要なのは「圧倒的賛成」

現実的には「国民の圧倒的賛成」がないと、国会も軍部も具体的な動きを取れなかったというところか。

直近の徴兵免除対象の追加の事例としては「サッカー2002年W杯のベスト16進出メンバー」があるが、この際にはどの新聞の世論調査結果も「圧倒的賛成」だった。「賛否両論」では実際の話し合いすら持たれないのだ。

今日29日の段階で、HYBE内部はどんな判断を下すのだろうか。「兵役免除なし」として今後の予定を組む"決断"はあるだろうか。あるいは5月以降も「待つ」とするのか。

ちなみに韓国国会の5月上旬の日程は5月6日までの分が発表になっている。そこには国防委員会の予定は掲載されていない。その後、週が明けると10日には「尹錫悦次期大統領の就任式」がある。政局の変わり目。ここももう一つの節目となりうるだろう。

韓国国会の5月のスケジュール。同国会公式サイトより。
韓国国会の5月のスケジュール。同国会公式サイトより。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。フォローお願いします。https://follow.yahoo.co.jp/themes/08ed3ae29cae0d085319/

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