2021年にNetflixで配信され、世界的人気を得た韓流ドラマ「イカゲーム」の”名脇役”が世界的な賞を受賞した。

「おじいさん」オ・イルナム役を演じた俳優オ・ヨンス(77)が2021年第79回ゴールデングローブ賞にて「テレビドラマ部門助演男優賞」に。韓国からのこの賞の受賞ははじめてのことだ。

これを韓国メディアは大々的に報じている。

翌10日の一般紙9紙朝刊のうち、5紙が「一面トップ扱い」だった。

5/9が「おじいさん」! 韓国メディア各紙一面の画像はこちらから

  • 受賞を伝える「中央日報」

オ・ヨンスは1944年10月19日、日本統治下の京畿道ケプン郡生まれ。同地は現在、北朝鮮の領域にある。

本格的な演技者生活に入って、今年で55年になる。

2021年の本作出演まで、ドラマや映画での大役には恵まれなかった。2009年にTVドラマ時代劇「善德女王」で印象的な演技を見せた程度。ただ出演作品数は多く、一時は「お坊さん役専門家」と言われたことも。

1967年に舞台俳優としてデビューして以降、主な活動は国立劇団(1987年~2010年まで在籍)などでのものだった。

77歳での今回の受賞に際し、こうコメントを残している。

「人生で初めて、自分に対して『まともな奴だ』と言ってあげたい」

  • YTNは受賞を速報で伝えた

イカゲームの演技のなかで、韓国内で評価されているのは第7話(全9話)で登場したセリフだ。

「ウリン カンブジャナ」

”俺たちは仲間じゃないか”という意味。このうち「カンブ」とは「仲間」を意味するスラングで、韓国メディアでは「カンブおじいさん」としても報じられている。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、壮絶なデスゲームの参加者同士は、序盤で「仲間となって戦う」と誓った。この点を忘れるな、と主人公のギフン(イ・ジョンジェ)に伝えるシーンだ。

韓国ではドラマの流行ともに「ウリン カンブジャナ」のフレーズがまるごと流行語にもなった。例えばサッカーの欧州チャンピオンズリーグでスペインのライバルチーム、レアル・マドリーとバルセロナが共に敗れた際。ネット掲示板で「ウリン カンブジャナ=俺たちは仲間じゃないか」とコメントされ、多くが反応するという一幕も。

韓国でこれがなぜ評価されているのかというと、デスゲームのなかでみせた純粋さがあり、余裕があり、悟りが感じられるから。

受賞を報じる10日の「国民日報」に対し、韓国の大衆文化評論家チョン・ドキョン氏はこうコメントしている。

「TVなどで年齢の高い俳優はステレオタイプとして消費されている。年配の俳優の価値を認め、新しい役割を付与しなければならない」

  • 昨年のMBC出演時の動画

2021年10月18の地上波MBCトーク番組「遊ぶなら何する?」の出演時には、本人の”カッコよさ”が伝わり、大きな反響があった。

「イカゲーム」出演のきっかけを「ファン・ドンヒョク監督が過去にも別の作品でオファーをくれていた」こととした。当時は自身に別の仕事があり、これを受けられなかったと言う。

作品が大ブレイクした印象についてはこう話していた。

「コーヒーを飲みに行くのも意識をしなくてはならない。有名になるのは大変なんだなと思いましたよ」

またこの番組出演時には、自身の深みのある言葉でインタビュアーのイ・ミジュ(K-POPグループのLOVELYZ元メンバー)を思わず涙ぐませている。

「大韓民国では一等賞以外はダメだという風潮があるでしょう。でも2位だって、3位には勝っているんです。みんなが勝者なんですよ。ただ自分が思う本当の勝者というのは、自分がやりたいことに最善を尽くし、ある境地にまでもたらす人ですけどね」

「77歳、もう人生の中に悩みも欲もありませんよ。ここまで自分がもらってきたものを、逆に残していきたいという思いだけ。例えば山の中に美しい花があったとします。若い頃はこれを摘んで帰っていました。でも今は、そのままにしておくんです。そしてもう一回見に行きますね」

これには思わず27歳のミジュも「かっこいいです」と言い、涙を拭った。

昨年12月6日、ロサンゼルスでのイベントの様子
昨年12月6日、ロサンゼルスでのイベントの様子写真:ロイター/アフロ

昨年のブーム後、海外で同ドラマ関連のイベントが開催されたが、「おじいさん」は招待されなかった。それほどの「脇役」が「主役」に。オ・ヨンスはデスゲームのなかの「清涼剤」として高齢者の新たな魅力を伝えた。韓国内ではそういった評価だ。

本人は自らが演じたオ・イルナムについて「やっぱり邪悪さはあると思うんですよね。程度の違いがあるだけで」としている。

(了)