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乗ってみたい!? 韓国のアシアナ航空が”日本行きの無着陸飛行”パッケージ発売 どんなルートを飛ぶ?

(写真:ロイター/アフロ)

どこにも行かない。韓国から離陸して、飛んで、日本上空を回って、出発地に戻ってくる。

そんなフライトパッケージが韓国で発売となった。

アシアナ航空が発売する「A380に乗って楽しむDutyからFreeになる旅行!」。

同社公式サイトにはサブタイトルとして「空飛ぶホテルA380で旅立つ当日海外旅行」と銘打たれている。

A380の機体を使用し、12月12日13時に仁川空港を出発。釜山上空を飛び、日本の宮崎上空を回った後、16時20分に再び仁川に戻る予定だ。

公式Twitterには「少し長くなった飛行時間、空の上の幸せをいっぱいに戻ってきたA380。長い飛行時間であるからこそ、A380で忘れられない思い出を差し上げます」と説明がある。

アシアナ公式サイトをもとに筆者が作成
アシアナ公式サイトをもとに筆者が作成

「ひたすらに飛行機に乗る」。その楽しみ方は?

”旅情を楽しむ”というのがこのプランの肝だ。

座席はビジネススイート、ビジネススマーティウム、エコノミーなど。料金はそれぞれ40万ウォン(3万8380円)、35万ウォン(3万3600)、25万ウォン(約2万4000円/すべて燃料サーチャージ含む)となっている。

この新型コロナ禍の日々、空からの風景を眺めて気分転換を。また「空飛ぶホテル」といわれるA380(機体写真は上記Twitterリンク)の豪華な機内でラグジュアリーな時間を、という趣旨だ。同社サイトでは機内エンターテインメントや、多様な座席オプションの楽しみを紹介している。

機内の様子。アシアナ公式サイトの同パッケージ購入ページより
機内の様子。アシアナ公式サイトの同パッケージ購入ページより

搭乗自体を楽しむに留まらない。第一報を報じたネット媒体「ブローター」が「差別化されたサービス」とするのが「免税店の利用」だ。

搭乗客は「海外行きの航空券」を手にするため、市内、オンライン、空港で買い物が可能。また機内免税店では事前予約したもののみ購入可能だ。購入限度額は600ドル以内プラス酒類1リットル(400ドル)以内、タバコ200本、香水60mlとなっている。

コロナ時代の”アイデア”韓国政府が認可

ニュースは7日夜から8日朝に韓国内で報じられた。国内最大の通信社「聯合ニュース」はこう見出しを打った。

「免税店ショピングを楽しむため飛行機に乗ります…無着陸国際観光飛行、開始へ」

国内版はすでに10月から始まっている。国内メディアの報道をまとめると、国内版の搭乗率は80%から95%というところだ

これは韓国政府のコロナ禍での規制緩和により実現したもの。経営に深刻な打撃を受けた国内航空業界に対し、1年限定で目的地に着陸しないフライトを許可した。今回は初の「国際版」ということで注目を浴びている。

  • 国内版開始を報じる韓国メディア

アシアナの営業不振についてはぜひこちら筆者の記事を/まるで「愛の不時着」……大韓航空、アシアナ買収「ナッツリターン姫」家族ゲンカの舞台裏(文春オンライン)

課題を指摘するメディアも

いっぽうで、通信社「ニュースピム」は「”期待半分、心配半分”無着陸国際飛行、早ければ12日に初運航」との記事を発信した。

「国際線に分類される無着陸海外飛行は、免税店の利用が可能なため好反応がありそうだ(中略)ただし、この先これが本格化してきた場合、(免税店ショッピング割引などの)イベント性が重要なポイントになると考えられる。10月から(免税店ショッピングなしの)国内便が飛行したなか、最初は話題になったもののこの先も需要が続くか未知数だ」

さらに韓国航空関係者のコメントとして、次の内容を紹介した。

「政府が航空機内の感染の危険性が少ない点を考慮し、(間隔をおかず)すべての座席に座ることを許可したが、はたして免税店を目当てにどれだけお客様が来てくださるか、満席になるかは確信するのが難しい」

「初期の成果をみて運航回数などが決まっていくと思われる」

またコロナの感染拡大の心配については、「ニュース1」がはっきりと「問題はないのか」と指摘を行った。大韓航空は11月に同様のプランを検討したが、国内の感染者数が増えるなか(12月7日は国内で600人増)見送ったと報じている。

アシアナのプランには、新型コロナ感染対策も万全なものが適用される。登場前からのマスク着用が必要で、体温が37.5度以上ある、搭乗日から14日以内の海外渡航歴があるなどの条件で搭乗が制限される。また空港内での免税店利用時にも混雑しないよう、導線が敷かれるという。

今後は韓国内の他社も同様のサービススタートか?

フライト後の”帰国時”の隔離・集団検査を免除し、免税の恩恵をプラスした今回のプラン。

第一報を報じた「ブローター」は、航空業界と合わせ、同じく業績不振に苦しむ免税店業界に目を向けてこう論じている。

「今回の”海外版”では、免税店業界は大きな収益よりも、いったん途切れた顧客に対し、ふたたびPRすることに意義を置いている。免税店側は航空会社と提携し、搭乗客クーポン、割引、ポイント、贈呈品などを計画している模様」

同媒体はまた、「(LCC)のチェジュ航空、ジンエアー、ティーウェイ、エアープサンなどが無着陸の観光飛行パッケージを販売する予定」としているが、新型コロナ感染が深刻化するなか、どうなっていくだろうか。

ちなみに今回のアシアナの”海外旅行版”、いったん韓国を出国し、外国の領空上に入るため公式サイトには太字で「搭乗時の注意」が書いてある。

「必ずパスポートのご持参を」

(了)

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。フォローお願いします。https://follow.yahoo.co.jp/themes/08ed3ae29cae0d085319/

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