「両親の経歴が怪しい」韓国でプチブレイク中の”親日派墓暴き演説男”、内部から疑惑を暴露される

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

強気な態度でプチブレイク中。76歳の「”反日”キャラ」が、韓国内の対立勢力ではなく、身内から攻撃を受けている。

10月13日、親日派批判の急先鋒として知られるキム・ウォヌン光復会会長(元国会議員)が内部から告発されたのだ。

「両親の経歴を詐称し、現在の活動を行っているのではないか?」

  • キム・ウォヌン(金元雄)氏

韓国大統領府公式サイトで一般市民からの要請事項を募集する「民間請願」のページにこんな内容が掲載された。

「キム・ウォヌン光復会会長の父・母のニセ独立運動家疑惑の真相調査を願う」

依頼主は光復会会員と対日独立運動家の遺族100人で構成された「光復会改革の集まり」。いわば身内から「ウソかどうか調べてほしい」と政府に要請が出されるかたちで疑惑を暴露されたのだ。

大統領府公式サイト上では、10月20日時点で1万4000を超える賛同が集まっている。

近年の日韓関係を大きく揺るがせている韓国左派の活動で、今年4月の「元慰安婦の告発」に続き、再び身内からの告発が起きているのだ。

キム・ウォヌン氏とは? 8月15日の「親日派墓暴き演説」からプチブレイク

一体何が問題なのか。その前に、キム・ウォヌンという人物の簡単な紹介を。

過激発言で”プチブレイク”している、左派の「炎上屋」だ。

今年8月の日本の植民地支配からの解放記念日に文在寅大統領の前座として登壇し「今も国立墓地に親日派が眠っている」と発言。韓国内で「公的行事には不適切」との猛批判を受けた。

  • 8月15日の演説時の様子

味をしめたか、その後も過激発言で炎上。メディアに記事が掲載されるという流れが出来ている。

「韓国国歌の作詞者は民族反逆者。歌詞を変えるべき」

「”幼稚園(韓国語でユチウォン)”という言葉は日帝時代の残骸。名称を変えるべき」

自身は3期務めた国会議員の後半(2007年)に大統領選出馬を希望するも叶わず。その後2010年の国政選挙で落選。政界を引退し、地方で隠居していた。しかし2019年になり、55年の伝統を有する会の会長として当選。以降、炎上に「居場所」を見つけるかたちとなっている。今年6月には公式式典で文在寅大統領と挨拶を交わす姿もメディアに撮影された。

また光復会については「CBSラジオ」が「8200人あまりの会員がいる一種の国家機関」と評する。

抗日独立運動の功労者の権利を守る目的の会は、大規模な国家からの補助金、民間寄付金により運用される。また「功労者」と認められれば、本人及びその家族・遺族は交通費(本人のみ)、報償金、年金、葬儀手当て、生活保護、教育保護、就職保護、医療保護、長期低金利の貸付などの恩恵を受けられる。

  • 会の活動と問題点を報じる「大田MBC」。「体制が閉鎖的で会員に発言権がない」との批判も

”親の七光り”も、「証拠がない」と暴露され……

ではこの人物の両親の経歴詐称の何が問題なのか。

要は「あなたが強気に活動ができているのは、両親の経歴もあって会長に選ばれたから」「でも、その証拠がありませんよね?」という話だ。

大統領府のサイトに掲載された告発文では、日本統治下の時代(1910-45)に中国で繰り広げられた抗日独立運動への参加が疑われた。

「キム・ウォヌン会長の両親が日本統治下で義烈団(1919-26)と朝鮮義勇隊(1938-41)に参加したというのだが、関連の記録がまったくない」

「2006年に刊行された『大韓民国臨時政府資料』には光復軍(1940-45)関連の700名ほどの人物の独立運動活動事項が記録されている。しかし両親の具体的な記録を見つけることが出来ない」

「光復軍での活動でもやはり関係者の証言があるというだけで根拠を示せずにいる」

  • 光復軍を紹介する「KBS歴史ジャーナル」

キム会長の父(グンス氏1912-92)は1963年に大統領から表彰され、1977年に建国褒章、1990年に建国勲章を授与された。母(チョン・ウォルスン氏1923-2009)は1990年に建国勲章の愛族章(5等級)を授与されている。夫妻ともに情報関連の役割を担っていたとされている。

強気に出られるのは、この子孫(キム氏は長男/1944年中国重慶生まれ)だからと主張してきたからでもある。子孫であり、元国会議員だからこそ、自ら光復会の会長にふさわしい人物と名乗り出て、当選したのだから。

政府側は「認定」も疑惑は晴れず…

キム氏側も真摯に対応していれば、こういった事態にはならなかった。大統領府公式サイト上の告発では、キム会長による不誠実とも取れる態度が明らかにされた。

「キム会長に幾度か直接的・間接的にこの部分に対して本当のところを明らかにしてほしいと話をしてきた。『9月末までに答えてほしい』という内容証明まで送ったが、黙っていて返答がない」

「したがって結局は請願を出すことになった」

そもそもキム氏側が「炎上」を求めていたか。

ではその真偽は韓国でどう見られているのか。各方面からの反応だ。

■国家報薫処(政府側の勲章の担当組織)

告発側の主張が間違っている。過去に「当時の関係者と身分を確認し合った資料を通じ、身分は認められている」「(二人は)『韓国独立運動史5巻』『独立運動史6巻』に掲載されている」

■壇国大ハン・シジュン教授(独立運動史)

「キム会長の両親の名前が出ているという根拠の史料は、口伝によるものであり、不明確な点がある」「二人が光復軍で活動したという直接的な根拠になるものではない」

※「中央日報」10月14日の紙面に掲載。

■中道政党「国民の党」クォン・ウニ議員(10月15日、国会での疑惑追求の質問にて)

「光復軍の名簿は、(上記の)独立運動史を根拠に作成されているのだが、キム会長の両親は第6巻の脚注に出てくる。その脚注とは、「光復軍」という小説が出典元とされている

■国内メディア(「ニューデイリー」、「マネートゥデイ」、「クッキーニュース」、「ザ・ファクト」)

「小説が根拠だというのか?」

韓国語ではでっち上げの記事を「小説を書いた」と表現されるが、「まさに小説ですか?」と格好の餌食に。

本人は14日に韓国メディアのインタビューに答え、「親日派清算に反対する勢力の謀略」と発言。証拠として写真や資料など22点があると主張した。

また、「昨年の会長選挙の際に私を支持しないグループがいたのは確か」「告発の内容はあきれるもの」と、強気の言葉も発している。

キム氏の存在は2020年の日韓関係のひとつの象徴

日韓関係が12月の「破滅」つまり、徴用工判決による「日本製鉄の韓国での所有財産の現金化」が刻一刻と迫るなか、この話はもはや「末端」の話だ。

しかし筆者自身が韓国語を解し、昨夏の「NO JAPAN運動」が高まった時期から特に注意深く日韓関係をウォッチングしてきた立場からしてきて、この人物はある意味この時代の日韓関係の象徴的な存在だった。

8月15日の演説は完全に不適切。国際的にも注目を集める公的式典の場をわきまえない「親日家墓暴き」の内容に大いに失望した。文在寅大統領は美辞麗句を並べ、キム会長が過激な部分を代弁。それを黙認するというやり方にも本当にがっかりした。筆者自身、なんとか韓国側の主張にも耳を傾けようと考えてきたが、ここでブチっとその気が削がれてしまった、というか。

「慰安婦」に続き「親日派清算」も内部に亀裂

では、この現象から何が分かるのか。

2020年の日韓関係を揺るがしてきたテーマは3つある。「徴用工判決問題(それにともなう”日韓経済戦争”)」「慰安婦問題」という直接的な日韓の問題。そして「親日派清算」という韓国の国内色が強い問題。このうち、2つが「内部告発」されたという点だ。

これは日本に関する運動組織の脆さであり、過激化する韓国内左派の”反日”に反対する勢力が存在することの証だ。いっぽうで韓国の「内部の不正疑惑を指摘する」という姿勢は良い点でもある。

こちらからもキム会長に突っ込ませていただくが、会員からの問い合わせに答えず、「あきれた」などと発言するのは失礼ではないのですか? その態度。強大な社団法人を率いる人物が「期限までに会員からの質問に答えず」、結果「疑惑を暴露」という事態に至ったのです。こうやって日本でも記事が書かれる点を切り取るなら「炎上」の効果アリでしょうが…。そういう感じだと日本の側からも話に耳を傾ける気を削がれます。

日本での認知度は低いだろうが、韓国内での”反日”の急先鋒(炎上屋)は内部から疑惑を暴露される存在。疑惑を指摘する人もちゃんと存在する。この点は確かだ。

2020年の日韓関係、そのうちあまり報じられない「韓国での対日感情」を切り取るなかで、さらっと小耳に入れておきたい関連ニュースだ。