【コラム】E-1日韓戦敗北。韓国がやらずに、日本がやったこと。

18日に行われたE-1選手権日韓戦に勝利し、優勝を決めた韓国代表(写真:ロイター/アフロ)

日韓戦に負けて、「仕方がない」なんてことはひとつもない。試合後、森保一監督には日本のメディアからこんな質問が飛んだ。

――序盤に相手が強く出てくるなか、腰が引けたようなところがあったが。

「戦える選手、戦えない選手、そして強いプレッシャーのなかで自分の特性を発揮できる選手が分かりました。痛い思いをしながら、でしたが」

韓国が日本戦で強く出てくる、というのはもはや常。アジアチャンピオンズリーグでも、年代別代表でも同じこと。その時間帯と方法が少し変わるだけだ。

これに対し日本が何をするのかがゲームのポイントだが、そこにも至らなかった。後半に相手のペースが落ちてきた時にそこを突くこともできなかった。そういう試合だった。

では、昨日のE-1選手権での対戦で両国の何が違ったのか。

チームの「格」が違った。残念ながら。それゆえ完成度も違った。

韓国は現状で呼べる(Aマッチデーではない試合で呼べる)、ベストと言えるメンバーを呼んだ。守備ラインに関して言えば、右サイドバック以外は”A代表”のベストメンバー。言葉は悪いが、「1.5軍」くらいの数値で表現ができた。もちろん、ソン・フンミンがいるかいないかでチームは大きく変わってくるが。

いっぽうの日本はU-22世代とJ リーグで実績のある選手を織り交ぜた構成だった。試合後、韓国メディアからはこんな声が聞こえてきた。

「このチーム構成の日本に勝って、大喜びしていいのか。1点で終わったことが残念でもあります」

なぜ、そんなことになったのか。筆者が取り組んできた日韓比較、とくにW杯の4年間のサイクルの過ごし方を比較する観点から考察を。

韓国側の背景「10日間でチームを作ることはできない」

韓国の方に視点を移してみよう。なぜ、今大会では韓国のほうが現状で可能なベストに近いメンバーを揃えてきたのか。「開催国だからやらねばならない」という話以外では、こんな事情があった。

◆監督の意向

もちろんこれは絶対的な要素。監督には選手選抜の権限が与えられている。2018年W杯後に就任した、ポルトガル人監督パウロ・ベントについて日本から見るべきポイントは「欧州に戻る野心」。先のW杯後、大韓サッカー協会は代表監督の選定過程を徹底的に公開し、ファンとの共通理解を図ろうとした。しかしことごとく大物候補に振られた。外国人監督を望むものの、望む人選ができない。これは日本もぶつかってきたことだろうし、これからも起こりうることだ。

今回、韓国がたどり着いたのが「野心」。2012年欧州選手権で母国ポルトガルを4強に導いたものの、その後ギリシャや中国でキャリアに傷をつけた。この韓国の地で挽回し、また欧州でキャリアを積もうとしている。強いて言えばフィリップ・トルシエにのイメージも近いが、元々の欧州でのキャリアが違う。またヴァイッド・ハリルホジッチよりも17歳若い。

それゆえ、今大会も結果を求めた。昨日の日本戦後の記者会見にて、本人の言葉。

「(大会期間中の)10日間で別のチームを作るわけにはいかなかった。数人、新しい選手を加えて、結果を得ることを選んだ」

日本は、その「別のチームを作ることを」を選んだのだ。

ちなみにベントは、野心から結果にこだわりすぎるあまり、ここまで「特定の選手にこだわりすぎ」という批判も出ている。日本も今後「野心派」の監督を選ぶことがあれば、頭の片隅に入れておくべきポイントだ。

韓国監督の意気込みとはうらはらに、日韓戦以外では空席が目立った。15日の中韓戦から。筆者撮影
韓国監督の意気込みとはうらはらに、日韓戦以外では空席が目立った。15日の中韓戦から。筆者撮影

◆U-22代表とは、「棲み分け」を決断。

今大会の韓国のエントリー23人では、U-22世代が「ゼロ」だった。

大会を前にして、パウロ・ベント監督とU-22韓国代表のキム・ハクボム監督の話し合いが持たれたという。

「12月のスケジュールに関しては、U-22世代の選手をフル代表には呼ばない」

今年の韓国の基本方針は「基本的にはフル代表優先」だった。

10月の国際Aマッチデーでは、両チームが国内で試合を行ったが、2名がフル代表に「昇格」。また11月のUAE遠征(ブラジルと対戦)では、U-22代表もUAEで「ドバイカップ」を戦っており、この際にはメンバーがひとり現地で「昇格」した事例もあった。

しかし、12月に関しては「棲み分け」を決定した。ほかでもない、来年1月にタイで東京五輪予選を兼ねたAFCのU-23選手権が行われるからだ。U-22代表監督とすれば「チームを固めたい」という意向を持って当然だ。

合宿でチーム固めか、公式戦経験か

監督は野心満々で徹底的に数字にこだわる。U-22とは棲み分けた。もちろんホームだから、やらないといけない。そんな事情から昨日の韓国は「1.5軍」の構成になった。

いっぽうの日本の森保一監督は韓国がやらなかった「10日間でチームを作る」ことを選んだ。U-22世代とJリーグで実績のある選手を織り交ぜながら。

日本の取材仲間のなかでは日本の今大会のメンバー構成を見て、大会の取材をキャンセルしたり、日程を大きく縮小する傾向もあった。筆者自身も韓国に勝つ気満々で「せっかく、2年ぶりの日韓戦の機会に何をするんだ」という思いがあった。

相手の情報も探りながら、今大会を取材した。昨日の日韓戦は記者席で「NEWS 1」のイム・ソンイル記者と同じデスクに座り、あれこれと話をしながらゲームを観た。雑談のなかで、「A代表とオリンピック世代の関係性」という話になった。韓国は近くにある東京の地で行われる五輪、そしてメダル獲得により選手が徴兵免除となる文脈から、チームに関心が持たれている。

――ところでいま、韓国のU-22代表はどこで何をやってるの?

「江原道で合宿してます」

韓国のように合宿をするのだったら、今回の日本のように選手個々人として公式戦のシビアな経験を積むことも、選択肢としてはありうる、という考えも持った。さらにいうと、1月のU-23選手権は結局のところ日本は「五輪出場権はかかっていない」という戦いになる。もちろん必死に戦わないわけはないだろうが、厳密に言うと公式戦のシビアさからは一歩引いた位置にある。

要は今回会を通じ、選手が何を得たか、だが。日韓後の森保監督からは冒頭のような言葉が出てきた。

日本の今後の見極め方。「直前のチームのまとめ上げ」ができるのか、できないのか

日本と韓国のこれまでの「W杯までの4年間の歩み」では、多くの時間で日本のほうが「先にチームが仕上がる」という傾向があった。アジアカップで優勝し(2000年、2004年、2010年)、W杯予選も無難に勝ち抜く。

韓国のほうが監督交代、W杯予選での不振など揉めに揉めるのだが、結局W杯本大会での成績は大きく変わらない。

むしろ、両国は「よりドタバタしたほうが、結果がいい」という傾向もある。日本がW杯本大会で韓国の結果を上回ったのは過去に2回。2010年の南ア大会と、2018年のロシア大会。前者は岡田武史監督による「大会直前の守備的サッカーへの転換」、後者は「大会2ヶ月前のハリルホジッチ監督更迭」という大きな出来事があった。

これはジンクスではなく、ファクトになりつつある。「先にピークを迎え、チーム力を維持するよりも、直前まで変化があったほうがより結果がよい」。

日本には韓国と比べ、はっきりと「計画的に物事が進むことを望む」という性質がある。いっぽう日本が先に挙げた2大会は、「望まずして、ドタバタ劇に追い込まれた」という状況だった。

今の日本は、11月19日のA代表ベネズエラ戦の1-4の敗退で、森保一監督への風向きも変わりつつあるのではないか。A代表とU-22代表、両代表の候補でラージグループを組んで選手を見分けながら、直前でぐっとチームを固めていこうとしているように見える。これが少し漠然としていて、「何を目的にこのチームが戦うのか」が見えにくくなっている。しかし、森保一監督がフル代表とオリンピック世代の兼任監督となった時点で、ある程度分かっていたことだ。いっぽう森保監督は日韓戦後、「選手が監督の望むプレーをできていないのは、伝えるべき立場にある私の責任」と繰り返していた。自らの戦術を浸透させることへの強い思い、自信にも見える。

東京五輪とロシアW杯。「直前のまとめっぷり」に力を発揮できるのか、できないのか。そこが見どころになっていくのではないか。

事が起きないことを望むより、直前まで変化していく。日本はこの「覚悟」を決めながらチームを見ていく状況にある。

もちろん、日本代表は韓国と戦っているのではなく、世界と戦っているのだが、これこそが「韓国と比較してこそ出てくる観点」だ。本番直前までどんな変化・成長ができる? そう問うていかない限り、昨日韓国に負けた意味すらなくなる。