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バド・山口茜に続け! 宮崎友花はロス五輪のホープ

楊順行スポーツライター
日本ランキングサーキット準優勝の宮崎友花は、柳井商工の2年生(撮影/筆者)

 バドミントンのシンガポール・オープンでは、男子ダブルスの保木卓朗/小林優吾が優勝したほか、女子シングルスの山口茜、混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗が準優勝、男子シングルスの奈良岡功大がベスト4。来年のパリ五輪に向け、各種目のエースが代表枠争いを優位に進めている。

 それにしても……コロナ前、東京五輪前年の(はずだった)2019年なら、「桃田賢斗、金メダル確実」「奥原希望も今度こそ金」などとはしゃいでいた大手メディアが、山口の「や」どころか、バドミントンの「バ」の字にもふれないのが寂しいですね。「今日の大谷」なんてやっている時間の何分の1かでも、ほかのスポーツに振り分けられないものか。

 それなら、というわけではないが、大手メディアが大騒ぎする前に先取りしておく。5月27〜31日、バドミントンの日本ランキングサーキット(RC)が開催された。国際大会のスケジュール優先などのため、日本トップ級のA代表はほぼ出場しない大会だが、過去にはここでの優勝からオリンピアンへ、という例が数多い。いわば、次世代オリンピック候補へのオーディションのような大会だ。女子シングルスで準優勝したのは、宮崎友花。リオ五輪銅メダルの奥原がかつて、高校3年でこの大会を制した例はあるが、まだ柳井商工高校(山口)2年生の宮崎も、それに匹敵する結果だといっていい。

気は早いが、ロス五輪への新星だ

 一般的には知られていなくても、バドミントン界では期待の新鋭である。21年、全日本中学生選手権の女子シングルスを制し、昨年はオリンピック金メダルへの登龍門・世界ジュニア選手権を制した。奥原も12年、山口も13、14年に優勝している大会だが、高校1年でのVは日本選手初。それだけでも、才能の埋蔵量がけた外れだとわかる。3月に行われた全国高校選抜では、団体とシングルスの二冠に輝いた。そして「大人」ばかりと対戦するRCでも、水井ひらり、仁平菜月といった国際舞台の経験豊富な先輩たちを次々と破り、決勝に進出。いかにも線は細いが、クレバーな試合運びはさすがジュニア世代の世界一だ。ロス五輪の星、宮崎はいう。

「5月の上旬、ジュニアナショナルチームの合宿に参加していろいろ教わるなか、技術的にも気持ち的にもうまくいかないことが多かった。だけど試合は待ってくれないし、とにかく気持ちだけでも出していこうとこの大会に臨んでいます」

 心がけたのは、自分らしいプレーだ。豊かなスピードを生かし、高い位置でシャトルをとらえること。そしてスピードを上げながらも、相手より先にミスをしないこと。出場大会が限られているため、世界ランキングでは280位台ながら、「自分らしいプレー」は格上のお姉さん選手をも上回った。決勝こそ、大学生に敗れて2位に終わったが、

「試合を重ねたことで疲れが出ちゃって、最後は動き切れていないと感じました。個人戦での準優勝はあまり経験がなく、負けたことは悔しいですけど、課題が見えたこと、また大会前から技術面で調子があまりよくなくても自分の力を出しきり、準優勝できたことは、自信にしていきたいと思います」

 と宮崎は前向き。そういえば、思い出した。いまや日本男子のエースである奈良岡は、21年のRC、決勝で敗れた。だがその悔しさをバネに一念発起し、1年後には優勝。そしてA代表に入ると、そこからわずか1年で世界ランキング4位まで急成長しているんだった。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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